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【差別】 女性専用車両は、男性差別より女性差別が深刻だ

■ 参照
WEBアーカイブ(もすみ氏):以下に全文転載 & 補足

日本では定着している女性専用車両だが、海外の多くの国ではフェミニストの反対によって却下されている。
男性差別よりも「女性差別の側面が深刻」だからだ。

 
女性専用車両は、痴漢を取り締まる代わりに女性を隔離するだけという本末転倒なものであり、また、女性を健常な大人として扱わず、障害者や傷病者や高齢者と同様の弱者とみなして保護を提供する。
これは慈悲的性差別であり、有害なパターナリズムである。

【目次】
1:痴漢対策ではなく女性対策
2:海外ではフェミニストが反対
3:優先席と同じ「任意の協力」で運用
4:女性「専用」という名称の欺瞞
5:データからは効果があるとはいえない
6:政治主導による大衆迎合主義の勝利
7:家父長制的な性差別を再生産する日本

 
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1:痴漢対策ではなく女性対策
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女性専用車両の問題は、痴漢対策ではなく「女性対策である」ことだ。
痴漢を取り締まるのではなく放置したままで、女性を専用の空間に隔離する。さらに、その隔離策には弱者保護という大義名分を持たせることで問題を隠す。女性専用車両の要点をまとめると、次のようになる。

【政府の判断】
・痴漢対策にはコストも時間もかかるから、別途ゆっくり進めよう。
・とりあえず手っ取り早い対策として、うるさい女には専用の箱を用意して、そこに入ってもらうことにしよう。
・女は自分のことを健常者と考えず、障害者や傷病者や高齢者と同じような弱者だと考えるから、弱者保護という名目で専用車を用意しても反対しないだろう。
・女は自分さえ良ければそれでいいから、痴漢が野放しのままでも自分さえ痴漢に遭わなければ満足するだろう。

 
どう見ても悪質な女性差別であり、女性への最悪の侮蔑だ。
現代におけるごく普通の人権感覚を持っていれば、とてもではないが受けいれることはできない。日本ではなぜか21世紀になってから普及した女性専用車両だが、

海外においては当然、フェミニストや有識者からの猛烈な反発にあう。

 
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2:海外ではフェミニストが反対
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イスラム圏のように男女混合を避ける文化を持つ国を例外とすると、女性専用車両が現存する国は少ない。
日本において女性専用車両が普及したことを受けて導入が検討された例もあるものの、そのほとんどは検討段階で頓挫した(イギリスや韓国や香港など)か、導入後すぐに廃止された(台湾)か、導入後すぐに有名無実化した(中国)。

イギリスや韓国や香港で頓挫し、台湾で廃止された理由は、フェミニスト団体や有識者の反対があったためだ。

各国のフェミニストや有識者の反対理由[1][2][3]は、

防犯効果への疑問や、女性や男性、そのほかの多様な性の人々に対する人権の侵害につながるため、というものだ。

 
まとめると、次のようになる。

・女性専用車両を導入すれば、女性は特殊で保護されるべきものという偏見を強化してしまう。女性は特殊な存在も弱者でもなく、一人前の大人である。
・保護の名のもとに女性の行動を制限するのは悪質なパターナリズムであり、家父長制的な慈悲的性差別に基づく偏見を再生産する有害なものである。
・女性専用車両を導入することは痴漢の防止が不可能だと認めるも同然であり、一般の車両において痴漢犯罪が常態化することにつながる。
・女性専用車両に乗らない女性は痴漢に遭っても自業自得だというような、一般の車両に乗車する女性客への心理的なプレッシャーを生むことになる。
・女性専用車両はすべての男性を潜在的な性犯罪者とみなすものであり、法律を守ってきちんと乗車している大多数の男性への差別になる。
・痴漢防止の観点では女性専用車両の実効性は低い。防犯カメラによる監視強化や厳罰化など、より痴漢防止に効果的な方法が他にある。

海外のフェミニストの主張は、加害者である痴漢そのものは放置する一方で、被害者である女性の行動を制限し自分自身を隔離させるのは犯罪対策になっておらず、女性に対する重大な人権侵害であるということだ。

海外のフェミニストは女性の自己決定権や自立、自由、平等を求めるため、女性専用車両のような差別的な制度を許容しない。

 
ところが日本のフェミニストや有識者の多くは、女性を弱者や被害者とみなし、保護や優遇を求める。この考え方は女性専用車両ととても相性がよい。
日本が女性専用車両の普及に成功したのは、女性を傷病者や障害者や高齢者と同じように特別な配慮が必要な弱者と規定し、優先席と同じ建て付けで女性専用車両の制度を設計したことによる。

 
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3:優先席と同じ「任意の協力」で運用
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女性専用車両の設置は男性差別の側面もある。

痴漢を排除するのではなく「男性すべてを排除するシステムである」ためだ。

 
男性という生得的な属性に基づいて、男性すべてを犯罪者と同一視するとともに、男女で同一の運賃を支払っているにもかかわらず、男性にだけ一部車両の利用制限という不利益を強いている。

女性専用車両の制度を設計するにあたり、これを罰則などの強制力がある形で法制化することはできない。男性という性別を根拠に排除を行うことを法制化すれば、日本国憲法をはじめとする現行法に抵触してしまうからだ。
法制化しない方法で制度を設計する必要がある。

すべて国民は、法の下に平等であつて、人種、信条、性別、社会的身分又は門地により、政治的、経済的又は社会的関係において、差別されない。

日本国憲法 第十四条

そこで考えられたのが優先席と同様の「建て付け」だ。

優先席は、障害者や傷病者、高齢者や妊婦などの弱者が優先して利用できるように一部の座席を指定したものであり、義務や強制ではなく、その他の健常な乗客の任意の協力と配慮によって実施されている。
この弱者保護という目的と乗客の任意性があるために「優先席は健常者差別である」などという声は上がらない。

女性専用車両も同様に、目的を弱者保護とし、実施には法的な強制力を持たせず乗客の任意の協力によるものにすれば、男性差別であるとは認定しにくくなる。
総務省発表の報道資料[4]によれば、国土交通省は女性専用車両について、国土交通ホットラインステーションを通じて次のように説明している。

現在各鉄道会社で導入されている女性専用車両については、あくまでも利用者のご理解と任意のご協力のもとに行われているものであり、法的な根拠はなく、女性専用車両はあくまでも男性利用者の任意のご協力のもとに実施されているものである。

国土交通ホットラインステーションの回答より

また大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)は、公式サイト内の「よくあるご質問」コーナーにおいて「女性専用車両は性別による差別ではないのですか?」との質問に対して、次のように回答している[5]。

女性専用車両については、女性のお客さま及び男性のお客さまのどちらにも
旅客運送契約上の義務が発生するものではなく、任意のご協力のもとに行っているものであり、強制力を帯びないことや導入した目的の趣旨等から差別には当たらないと考えています。

大阪市高速電気軌道(大阪メトロ)公式サイトより

国交省も鉄道会社も同じように表明しているとおり「女性専用車両は乗客が任意で協力するものであって法的な強制力はない」という建て付けにしておくことで、明確に男性差別であるとは言えなくなる。
また、女性専用車両に侵入する男性を監視したり排除するための人員を配置する必要もなくなり、優先席と同様に、設置だけしてあとは放置していれば格好がつく。

 
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4:女性「専用」という名称の欺瞞
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国土交通省による女性専用車両の正式な呼称は「女性等に配慮した車両」である[6][7]。
対象は「女性」ではなく「女性等」であり、「専用」ではなく単に「配慮」するだけの車両に過ぎない。
その性質は優先席と同様であり、健常な男性を含めて誰の乗車も妨げない。
下の画像は、国土交通省の小委員会で配布された資料にあった女性専用車両についての記述部分である。

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しかし実際には「女性専用」や「Women Only」などの紛らわしい表示がされている。
この表示の正当性を争点とした裁判が東京地裁であり、その判決が平成23年7月12日に出ている[8]。
結果としては「健常な成人男性も乗車できることを意図的に隠蔽した掲示をするのも、鉄道会社の裁量権の範囲内である」という判決が下りた。
その判決文は次のようなものだ。

特定多数の利用者に対し、女性専用車両の存在を周知させるためには、その表示も相当程度簡明であることが必要であると考えられる。かかる状況に鑑みると、鉄道会社が女性専用車両について、健常な成人男性も乗車することができる旨をあえて掲示せず、これを「女性専用車」であり、女性および小学生以下または身体の不自由な人(その介助者を含む)が乗車するための専用車両であると掲示したことをもって、女性専用車両の表示に関する鉄道会社の裁量権を逸脱した違法なものと評価することは相当でない。

東京地裁平成23年7月12日判決より

制度の内容を正確に表せば、掲示は「女性優先車両」のようなものになるだろう。しかし、実際に「女性優先車両」と掲示した中国では、男性の乗車が後を絶たず有名無実化してしまっている[9]。
結果だけ見れば、実際の内容とは異なり誤解を招く「女性専用」掲示だが、その誤解(成人男性は排除される)のおかげで一定の実効性を確保しているというのが実態だ。

さてこのように女性専用車両は、制度の意図も、建て付けも、その掲示も疑問だらけだが、何と言っても最大の疑問は痴漢の減少効果だ。

痴漢防止に効果がないのであれば、痴漢対策ではなく女性対策であることが明らかになってしまう。しかしデータによれば、痴漢を減少させる効果は確認できない。
 

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5:データからは効果があるとはいえない
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女性専用車両は痴漢防止を目的とした安全対策として導入されている[10][11]。
しかしその割には、痴漢被害を減少させる効果について明確な結果はデータからは出ていない。女性専用車両は痴漢加害者を別の車両に移動させるだけの制度であり、痴漢を取り締まるものではないので当然だ。

女性専用車両の導入の前後を比較して痴漢防止効果を見られるデータのうち、公表されているものは少ない[12]。
検証可能な形で公表されているデータによれば、女性専用車両の導入前後の比較として次のような結果が出ており、これらをどう読み取っても明確な痴漢防止効果は確認できない。

・名古屋市営地下鉄東山線 – 痴漢申し出件数(駅から警察への通報件数)の推移は、女性専用車両試行導入前の2001年度は24件、試行導入後の2002年度は23件、試行導入および継続決定の2003年度18件、2004年度23件と、被害減少は確認できていない[13]。
・阪急京都線と京阪本線 – 試験導入前の2002年10月から2003年3月までの6ヶ月間と、試験導入後の2003年10月から2004年3月までの6ヶ月間の比較で、痴漢被害届出件数は73件から54件へと26%減少した[14]。
・JR埼京線 – 女性専用車両が深夜帯のみの運行だった2004年の痴漢摘発件数は217件[15]、通勤通学時間帯にも導入された2005年の痴漢摘発件数は164件[16]と、24%減少した。
・JR中央線 – 2004年の痴漢摘発件数は188件[17]、朝の通勤通学時間帯の女性専用車両導入後の2005年は217件[18]と、15%増加した。
・京王線 – 深夜帯のみ女性専用車両が導入されていた2004年の痴漢摘発件数は121件[19]、朝夕の通勤通学時間帯にも導入された2005年は146件[20]と、21%増加した。

データを見る限り、痴漢防止効果という観点では女性専用車両の効果は不透明だ。もう少しはっきり言えば「効果がない」

 
ではなぜ、日本では女性専用車両が導入され、その運用範囲が広がり続けているのだろうか?
その答えを簡単に表現すると、政治主導の大衆迎合主義である。

 
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6:政治主導による大衆迎合主義の勝利
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首都圏で女性専用車両の本格導入が始まる前の2002年、女性利用者の視点での交通サービスの質の向上を図ることを目的とし、国土交通省が鉄道利用者を対象にアンケートを実施した。その結果、男性の65.2%、女性の77.3%が、女性専用車両の設置に賛成した[21]。女性専用車両は市民に受けがよい。

女性客にとっては、女性専用車両に乗車することで、痴漢被害に遭う恐怖におびえたり、痴漢を警戒する緊張を強いられたりすることがなくなる。
男性客にとっては、一般の車両から少しでも女性が減ることによって、痴漢冤罪の恐怖がいくらか減少する。
こうした安心感を求めて市民の多くは女性専用車両の導入を支持した。

これを見逃さなかったのが公明党だ。
女性専用車両の導入を求め、公明党青年局による19万票におよぶ署名活動や、参議院予算委員会における公明党所属議員による要請などを展開し[22]、当時の北側一雄国土交通大臣(公明党)が警視庁からの要請[23]を取り付けるなどし、一気に導入が進んだ。

痴漢防止の効果はなく、女性差別の性質の強い女性専用車両だが、市民はその導入を歓迎しており、それが公明党の実績作りと選挙対策にうまく利用された形だ。

 
なお、市民が女性専用車両の導入を歓迎するのは日本だけではなく海外も同様だ。

しかし、海外ではフェミニストや有識者の反対によって女性専用車両は却下される。そのような良識派の声は日本でも、数は少ないが存在する。
 

男女を隔離する女性専用車両の導入については、アンケートによる多くの乗客の支持という「多数決民主主義」で正当化する、あるいは、ある時点で社会の多数者に受け入れられたから問題ないと考えるだけでは、男女共同参画社会の推進という観点からは不十分である。

男女平等参画苦情処理委員による報告書(10)女性専用車両に関する件

名古屋市に設置されている男女平等参画推進室の苦情処理委員は上記のように述べ、大衆迎合主義[24]を批判している。
また2005年5月9日付けの朝日新聞の取材に答える形で、著名なフェミニスト理論家であり東大名誉教授の上野千鶴子[25]は「やむを得ないが、後ろ向きの解決策だ」と述べた[26]。
しかし大衆迎合主義の前にこれらの良識的な声は無視され、多くの市民の望みどおりに女性専用車両は今日も運行している。

 
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7:家父長制的な性差別を再生産する日本
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女性専用車両の問題は、典型的な「慈悲的性差別」の問題だ。
女性は子供と同じような未成熟な弱者であり、保護されるべきであるという社会的な通念に基づき、女性を弱者保護の対象にする。
これは結果として、女性の自尊心、自己効力感、自信の低下につながり、また、女性の個人的、職業的、政治的、社会的機会を制限することにもつながる。つまり女性の自立と能力を奪う。

慈悲的性差別は、差別する側にとっても差別される側にとっても善行の形をとる。
重い荷物を持ってあげる、デート代を出してあげる、責任ある仕事を免除してあげる、多くを稼得する義務から解放してあげる、犯罪者と対峙する機会を減らしてあげる、といったことを、良いことだと判断してしまうのが人間だ。

こうして女性の成長の機会は奪われ、伝統的な性役割が押しつけられる。

女性専用車両が一般の市民に人気の施策であることは各国共通だ。
しかし海外では女性への差別性を理由にフェミニストの反対で却下される一方で、日本では差別性は見逃され、大衆迎合主義で採用されてしまう。
日本人は男性も女性も家父長制的な価値観による慈悲的性差別に親しみすぎており、また、一見すると優遇に見える差別を求める女性が多すぎるように筆者は思う。

どうでもいいときには男が女を立てて一等席を譲るべきなのはおきまりのことだ。原始社会のように女に重い荷物を背負わせる代わりに、つらい仕事や心配事の一切を急いで女から取り除く。それは同時に、女を一切の責任から解放することである。こうして女は自分の立場の安易さにだまされ、心をそそられて、男が女を閉じ込めたがっている母や主婦の役割を受け入れるよう期待されるのだ。

シモーヌ・ド・ボーヴォワール「第二の性〈1〉事実と神話」P240

上記の引用箇所では、慈悲的性差別が鮮やかに描き出されている。
これは、哲学者でありフェミニスト理論家のシモーヌ・ド・ボーヴォワール[27]が第二次大戦直後の1949年に著し、第二波フェミニズムの源流となった名著「第二の性」からの引用だ。
いわゆる女性らしさは社会的につくられた約束事にすぎないことを看破した「人は女に生まれるのではない、女になるのだ」という有名な言葉はこの本に記された。

70年以上も前に著されたフェミニズムの古典に書かれているとおりに、今もなお日本では、慈悲的性差別によって伝統的な性役割が再生産されている。
これは決して良いこととは思われないが、しかし、私たち市民は無批判に慈悲的性差別を肯定しがちだ。今度は痴漢冤罪を恐れる男性たちが男性専用車両の導入を求める声もあるという。
それは痴漢対策ではなく男性対策であり、意味がない。

私たちは女性専用車両のような人権を無視したその場しのぎの対策に易々と騙されるのではなく、きちんとした痴漢対策、たとえば混雑の緩和や、防犯カメラや警備の増強による取り締まり強化や、厳罰化や、被害申し出の簡便化や、教育と啓発の強化などを求める正常な社会に近づけていきたい。

そのためには、一見すると女性優遇に見えてその実は女性差別であるものを見抜ける目を持つことが重要だと筆者は考える。
 

[脚注]
脚注1-27のリソース(国土交通省や国民生活センターなどの公開データ)は、元リンクに掲載されています。

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