定員割れ続く短大 新たな生き残り策

保育士や介護士など、地域で働くエッセンシャルワーカーを育成する、重要な役割を担ってきた短期大学が、急速に進む少子化などの影響で、存続の危機に直面しています。
長野県内でも学生の募集停止を発表する短大もあるなか、それぞれの短大は共学化したり、ほかの短大と連携したりするなど、生き残りに向けた模索が続いています。


2年間で専門人材を育成し、卒業生のほとんどが地元で就職するため、短期大学は地域にとって重要な教育機関の1つです。

文部科学省の外郭団体、「日本私立学校振興・共済事業団」の調査によりますと、人口減少などを背景に2024年度、学生数が定員に達しない定員割れとなった、全国の短大は全体の9割以上にあたる249校でした。
また、NHKが県内の私立の短大に取材したところ、すべての短大で2025年度、定員割れとなったことがわかり、佐久市にある佐久大学信州短期大学部は2026年度からの学生の募集停止を決めています。

一方、「幼児教育学科」など2つの学科を設置している上田市にある上田短期大学は、入学者数の確保につなげようと、2025年度から共学化しました。
ここ数年は入学者数が定員を下回る状況が続き、ことしは男子学生15人を含む114人が入学しましたが、定員の充足率は6割余りにとどまりました。
急速に進む少子化にともなって、4年制大学に入学しやすくなっていることなどが背景にあるということで、今後、学生のニーズに沿った短大づくりを進めて学生確保につなげたいとしています。

上田短期大学事務局の豊岡秀夫次長は「18歳人口が減少するなか、首都圏などの大学への進学が加速しています。今後は新しい科を立ち上げるなど、短大も変わっていかなければなりません」と話しています。

上田短大の卒業生の多くが就職している上田市内の認定こども園は、採用面などから短大は不可欠な存在だと考えています。

この園では、0歳から6歳までの子どもを受け入れていて、24人の保育士のうち約6割が上田短大の卒業生だということです。
在学中に、この園で実習を行った学生が、そのまま就職するケースもあるということです。

ただ、短大の卒業生が減少するなか、保育士の確保は難しくなっていて、園によりますと、この2年間で新規の保育士の採用はゼロ。
2023年には人手不足のため、子どもたちの受け入れ定員を150人から135人に減らしたということです。
上田短大を卒業したあと、この園に就職した20代の保育士は、「保育士は楽しいことが、たくさんある仕事なので、目指す学生が減っているのは、もったいないし、さみしいです」と話していました。

認定こども園「芙蓉園」の飯島俊哲副園長は、「短大に入る学生が減るということは、その地域の保育現場の人手不足に直結します。上田短大の先生方とは、顔の見える関係ができていて、採用についてもお願いしやすいので、短大は地域になくてはならない存在です」と話していました。

全国では生き残りをかけて、新たな取り組みを始める短大もあります。

佐賀市にあり、保育士や介護士の資格が取得できるコースを設置している西九州大学短期大学部は、10年ほど前から外国人留学生の受け入れを強化して学生の確保を図ってきました。
しかし、定員割れが続き2025年度は、募集定員の削減に踏み切りました。
こうしたなか、2025年2月、ライバル関係にあった長崎県の2つの短大と連携して、経営の効率化などに取り組んでいくことを明らかにしました。

計画によりますと、3つの短大はデジタル分野やキャリア開発など特色のある科目を共有し、それぞれの短大の学生が、相互に授業を受けられるようにします。
また、1人の教員が別の短大で教えられるように、人材の共有もするということです。
さらに、学内のシステムの統合などによって、運営の効率化を図ることにしています。
カリキュラムの充実や大学の強みを明確にすることで、学生の確保につなげる狙いです。

先進的な取り組みとして、文部科学省から年間約3500万円の補助金を受けられることになっています。

西九州大学短期大学部の福元裕二学長は「1つの短大でやっていては、だめだという思いで取り組んでいます。学生が集まらなければ、教員を減らさざるを得なくなります。そうなると学生の選択肢が狭まったり、教員の質が下がったりしかねません。3つの短大が連携して取り組みを進めることで、厳しい状況にある現在の風向きを変えられるのではないかと期待しています」と話していました。

(取材後記・長野局記者 篠田祐樹)
西九州大学短大の福元学長などによりますと、一般的に建学の精神の違いなどから、ほかの短大と統合するのは難しいということです。
ただ、全国のほかの短大も、リモートによる授業の共有やシステムの共通化などでの連携はできるのではないかと話していました。

4年制大学志向が高まり、「短大の役割が終わった」という厳しい声も聞かれますが、地方の短大の衰退は、担い手不足だけではなく、若者の流出や人口減少にも直結します。

地域で重要な役割を担う短大の運営が、持続可能なものとなる仕組みを考えていくことが重要だと、取材を通じて感じました。

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