はじめに
今回は、この「フラクタル」という概念及びそれが自然界等でどのように観測され、またそれが社会でどのように利用されているのかについて、紹介する。
まずは、今回の研究員の眼では、「フラクタル」という概念及び代表的な「フラクタル図形」について紹介する。
フラクタルとは
自然は一見すると無秩序なカオス状態のようにみえるが、よく観察すると同じ構造が繰り返されている「フラクタル構造」になっている(ものが多く観察される)と言われている。
1 因みに、「フラクタル(fractal)」は、ラテン語の「フラクタス(fractus)」から作られたマンデルプロの造語であり、英語の「一部・断片・破片」等の意味を有する「フラクション(fraction)」と同じ語源となっている。
コッホ曲線
シェルピンスキーの三角形
これは、以下の手順を繰り返すことで作図される。
(1) 正三角形を用意する。
(2) 正三角形の各辺の中点を互いに結んでできた中央の正三角形を切り取る。
(3) 残った正三角形に対して、(2)の手順を無限に繰り返す。
具体的に、例えば4段階までの過程を示すと、以下の通りとなる。
フラクタル次元
具体的に、あるフラクタル図形の「フラクタル次元がnである」とは、「相似比が1:aである時に、いわゆる『長さ』の比が1:b となる時の an=b となるnのこと」を言う。
別の定義では、「あるフラクタル図形を1/a に縮小したときに、元の図形を埋めるために必要となる図形の個数がbとなる時のan=b となるnのこと」を言う。
これがいわゆる通常の次元の拡張概念になっていることは、2次元平面では「相似比が1:2になるときに、長さが1:4になっていく」ということから、ご理解いただけるのではないかと思う。
いずれにしても、フラクタル次元は「n=log b/log a 」で定義されることになる。
線の図形は、平面を覆い尽くすように複雑になればなるほど、平面に近くなるので、フラクタル次元は「2」に近くなることになる。このことから、線の図形が平面を覆っている割合を、フラクタル次元を用いて表すことができることになる。
さて、先ほどの「コッホ曲線」を例にとると、図を見ていただければわかるように、a=3、b=4 となるので、 log 4/log 3 ≒1.2618 となる。即ち、「コッホ曲線」は、1.26次元の図形ということになる。
これに対して、「シェルピンスキーの三角形」の場合には、a=2、b=3 となるので、log 3/log 2 ≒1.5849 となる。即ち、「シェルピンスキーの三角形」は、1.58次元の図形ということになる。
従って、「シェルピンスキーの三角形」は「コッホ曲線」や「コッホ雪片」と比べて密である、といえることになる。
カントール集合
「カントール集合(Cantor set)」というのは、「閉区間 [0, 1] に属する実数のうち、その三進展開のどの桁にも 1 が含まれないような表示ができるもの全体からなる集合」のことをいう。これだと何だかよくわからないということになると思われるので、幾何学的に示すと、次ページの図のようになる。
以下のように、線分を3等分し、得られた3つの線分の真ん中のものを取り除くという操作を繰り返す。即ち、単位区間I = [0, 1] から、1回目の操作で (1/3, 2/3) を取り除き、2回目の操作で (1/9, 2/9) と (7/9, 8/9) を取り除き……といった具合に操作を無限に繰り返していって残った部分が「カントール集合」となる。
メンガーのスポンジ
「メンガーのスポンジ(Menger sponge)」というのは、以下のプロセスで作成される図形2である。
(1) 立方体を、3×3×3の27個の区画に分け、中央(面心・体心)の7個を取り除く。
(2) 残った小さな20個の立方体に対して同じ事を繰り返していく。
「メンガーのスポンジ」のフラクタル次元は、log20/log3=2.7268 となり、2.72次元の図形ということになる。
「メンガーのスポンジ」は、1回のプロセスでその表面積が1/3ずつ増加することになるため、その(2次元的な大きさを示す)表面積は無限となる。一方で、1回のプロセスでその体積は7/27ずつ減少することになるため、その(3次元的な大きさを示す)体積は0となる。
まとめ
今回紹介したもの以外にも、「ドラゴン曲線(Dragon curve)」と呼ばれる図形、「バーンズリーのシダ(Barnsley fern)」と呼ばれるシダを模した図形、「シェルピンスキーのカーペット(Sierpiński carpet)」等が有名なフラクタル図形である。さらには、コッホ曲線やシェルピンスキーの三角形の立体版である「コッホの双正三角錐」や「シェルピンスキーの四面体」等も存在する。
ここまでに紹介したこれらのフラクタル図形は、出発点となる図形をコピーして、主として「相似変換(辺の長さの比や角度を変えずに大きさを変更)」を繰り返すことによって作成される「反復関数系(IFS:Iterated function system)フラクタル」と呼ばれるものである。
さらには、別の作成方法によるフラクタル図形もある。出発点となる図形をコピーして、「反転」と呼ばれる変換による縮小を繰り返して作成する「円反転フラクタル」と呼ばれるものとして「アポロニウスのギャスケット(Apollonian gasket)」や、複素数を使った漸化式を使用して作成する「複素力学系フラクタル」と呼ばれるものとして「マンデルブロ集合(Mandelbrot set)」や「ジュリア集合(Julia set)」といったものもある。興味を感じられた方は、是非こうした図形もご覧になられると面白く感じられるのではないかと思う。
なお、「フラクタル」というのは、ここまで説明してきたように抽象的な数学の概念であるが、一方で実は、このフラクタルが自然界に広くみられることがわかっている。
このシリーズの次回の研究員の眼では、自然界でみられるフラクタルについて紹介することとしたい。