地下鉄サリン事件「まるで地獄絵図だった」警視庁捜査幹部が初証言 20代の巡査時代に目にしたものと、今も抱く後悔とは─
■残り少ない警察人生で抱える「後悔」
当時20代の巡査は、現在は警視庁の捜査“幹部”となった。
「警察の大切な任務は未然防止であると思っています。その点で、地下鉄サリン事件で多くの方が被害にあってしまったことについては忸怩(じくじ)たる思いがある」
当時、若手の1人だったとはいえ、組織の一員として今も、事件を防げなかったことへの後悔は消えない。
ただ、今年で地下鉄サリン事件から30年となり、事件捜査にあたった警察官も退職する人が多くなっている。そうした中で“幹部”は、事件の風化防止に少しでも役に立てればとの思いが強くなり、今回、初めて語ろうと決意した。残りの“警察官”としての自らの使命をこう認識する。
ひとつは「災害等の有事のときは『警察官の矜持』を忘れることなく、都民・国民を守り抜く覚悟をもつ」ことを後輩に継承する。
これは、地下鉄サリン事件発生から約3か月、心身ともに限界の中での捜査ができたのは「自分は都民、国民のために働く“警察官”である」という誇りが心の支えになったからだ。後輩たちには、困難な時こそ、警察官としての“誇り”を忘れてほしくないという。
ふたつめは「地下鉄サリン事件を風化させない」こと。
■いまだに活動する“オウム”…テロから「守る」ためには
警視庁公安部などによると“オウム真理教”は現在、「アレフ」「山田らの集団」、そしてかつて松本元死刑囚の側近の1人だった上祐史浩氏が率いる「ひかりの輪」の3つにわかれて存続している。公安部は「アレフ」「山田らの集団」が麻原彰晃こと松本智津夫元死刑囚への絶対的帰依を強調し、「ひかりの輪」は松本の影響力がないかのように装っているとみている。
信者の数はあわせて約1600人にのぼるとみられ、上記の3団体ともに団体規制法に基づく観察処分の対象となっている。再発防止処分などにより活動は制限され、サリン事件を首謀した松本元死刑囚らは死刑執行されたはいえ、依然、「麻原」の影響力が残った団体が今現在も活動している。
こうした実態も受け、“幹部”は「地下鉄サリン事件の教訓を次の世代につなげるには我々、警察があらゆる機会を通じて情報発信を続けて、社会全体でテロへの意識を高めていき、『テロから社会を守る』機運を作ることが重要だ」と語る。
そして最後の言葉に力を込めた。
「地下鉄サリン事件は絶対に忘れてはならない事件だ」