「もしかしたら、1リーグ制に移行するための合併?」
阪神の野崎球団社長が〝疑問〟を持ったのは7月2日の12球団実行委員会のときだ。パ・リーグからオリックスと近鉄の合併構想が説明され、議論が終わった後、まるで〝追加〟の報告のように議長から「1リーグ制」の話が出てきた。雰囲気はあたかも1リーグ制が決まっているかのようだった―という。
「とんでもない。球界にとってどう考えても2リーグ制の方がいい。それをオリックスと近鉄が合併するからといって、なぜ、1リーグにしなければならないのか。じっくり話し合うべきだ。拙速過ぎる」
7日のオーナー会議では西武の堤オーナーが〝第2の合併〟を暴露。1リーグ移行へ拍車がかかる。この流れを止めなければ―と野崎社長は星野SD(シニアディレクター)に相談した。星野も同意見だった。
「堤さんがなぜ、第2の合併―と発言したのか。あれを言うことによってオリックスと近鉄の合併がもう過去の話、既成事実になってしまった。言い方は悪いが〝新しい餌〟をまき、それを食わせておいてその間に事実をつくる狙いがあったと思う」
巨人の狙いは「1リーグ制」。それを実現させるために巨人―オリックス―西武が水面下で手を結んでいる。2人はそう結論づけた。反対の波を起こさなければ…。13日、星野SDは電鉄本社上層部や球団役員を前に「1リーグ制が本当にプロ野球界のため、阪神タイガースのためになるのか、もっとじっくり考える必要がある。簡単に巨人の思惑に乗ってはいけない!」と力説した。
「1リーグになれば各球団とも10億円以上の減収になります」。とたんに重役たちの顔色が変わる。そして「今のウチのチーム状態なら10球団で7位」と予想。会議室の空気は「1リーグ制反対」に変わっていたという。
「星野さんでなければ重役たちの気持ちをまとめることはできなかったでしょう」と後年、野崎社長は当時を振り返った。あとはセ・リーグの4球団をどう「反対」に導くか。
「私が言い出しっぺですから。まとめ役になります」と野崎は誓った。(敬称略)