法華狼の日記

他名義は“ほっけ”等。主な話題は、アニメやネットや歴史認識の感想。ときどき著名人は敬称略。

フェミニストが日本製アニメの排除を求めているフェイクニュースが流れている時、共和党はアニメや漫画を射程に入れた猥褻規制法案を提出していた

フェミニストが一部の日本製アニメの排除をネットフリックスなどに求めてるのはフェイクニュースだよ - 電脳塵芥

「海外脱出ネオニート」は記事に賛同の意を示しているが、この投稿に対する批判も多い。しかしながら、そもそもでいえばこの記事はフェイクニュースであり、現状は偽情報をもとに賛否を語っているようなものだ。

 いずれにしても冒頭にあげた「フェミニスト団体」による抗議は存在しない。ただ冒頭のアカウントの様にフェイクニュースに乗せられて賛意を示すアカウントも少なからずいたし、それへの反発も存在したしでこのフェイクニュースは拡散したのだろう。

 上記のフェイクニュースは予言の自己成就のようなかたちで同調する人物も出てきたようだが、デマに扇動されて規制や弾圧に直結するような状況にはなっていない。
 そもそも元となったフェイク自体が、必ずしも権力をもたない団体が意見書を送ったという内容だ。仮に実在したとしてもそれ自体は言論の自由の範囲内であろうし、不当な意見書であれば反論することも黙殺することもできる。


 一方で同時期、米国テキサス州共和党による法案が、アニメや漫画の犯罪化につながる懸念があり、現地のファンのあいだで論争になったという話もあった。

bsky.app
テキサス州共和党の上院法案によって性的描写のあるアニメや漫画が犯罪になる可能性が浮上し、アニメ/漫画のファンの間で論争に。未成年キャラの性行為描写があれば処罰対象と解釈され、それらアニメや漫画の所持・視聴が事実上禁止され、最長1年の郡刑務所収監もありえるとのこと。何をもって「わいせつ」とみなすのかはよくわからず、法案の曖昧な文言が都合よく利用される懸念が指摘されています。
https://www.themarysue.com/is-texas-banning-anime-explained/

 紹介されている記事内にリンクされている法案を読むと、たしかに未成年のわいせつ描写の所有や視聴を犯罪化するにあたって、漫画やアニメをふくめているようだ。
Bill Text: TX SB20 | 2025-2026 | 89th Legislature | Introduced | LegiScan

A person commits an offense if the person knowingly
possesses, accesses with intent to view, or promotes obscene visual
material containing a depiction that appears to be of a child
younger than 18 years of age engaging in activities described by
Section 43.21(a)(1)(B), regardless of whether the depiction is an
image of an actual child, a cartoon or animation, or an image
created using an artificial intelligence application or other
computer software.

 さらに紹介されている記事によると、別の条文と組みあわせて考えると、ここでの未成年は年齢を明示しなくても立法者の解釈にゆだねられ、日本でも基本的に一般的に流通する『バカボンド』や『ベルセルク*1も犯罪化されかねないという。
 犯罪化される描写は一方的な性暴力もふくむ懸念があるらしく、合意のない性的行為は一貫して敵のおこなう加害として描写されている『ダンダダン』等もふくまれうると記事の筆者は考えている。


 しかし、あくまで一団体が媒体に意見書を出すという表現の制約としては穏健な動きが話題になっているのに、二大政党制で現在の権力を握っている政党が犯罪化にのりだすという喫緊の表現の制約が注目されていないことは不思議だ。
 冒頭のid:nou_yunyun氏のエントリには百以上のはてなブックマークが集まり、さまざまな立場からの意見がぶつけられているが、ちょうど同時期の共和党法案への言及は見あたらない。
[B! オタク] フェミニストが一部の日本製アニメの排除をネットフリックスなどに求めてるのはフェイクニュースだよ - 電脳塵芥
 人が犬を噛んだらニュースになるが犬が人を噛んでもニュースにならないように、共和党が表現の規制を強めても注目するに値しないと思われているのだろうか。それとも別の理由があるのだろうか。

*1:一応、アニメ映画の3作目は日本国内でも年齢制限があったが。