Photo: duncan1890 / Getty Images

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ル・モンド(フランス)

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Interview by Marc-Olivier Bherer

ドナルド・トランプ米大統領の復権により、2025年1月以降、巻き起こされている地政学的激変。その理由と行く末を、仏紙「ル・モンド」が米国の著名ジャーナリスト、ファリード・ザカリアに聞いた。

世界中の政治エリートたちと親しく付き合う米放送局「CNN」のジャーナリスト、ファリード・ザカリア。彼はハーバード大学で政治学者サミュエル・ハンチントンのもと博士論文を提出した後、ジャーナリストの道を進み、現在はCNNで世界情勢についての番組を持つと同時に、「フォーリン・ポリシー」、「ワシントン・ポスト」、「ニューズウィーク」などに寄稿している。

1997年、ザカリアは「フォーリン・アフェアーズ」に歴史的な「非自由主義的民主主義」という記事を発表。この概念は、投票によって選ばれながらも、自由と法の支配を激しく攻撃する指導者による体制を表すために用いられる。

ファリード・ザカリアは『民主主義の未来 : リベラリズムか独裁か拝金主義か』(CEメディアハウス)でも、このテーマの考察を続けている。最近では、米国の孤立主義の歴史についてのドキュメンタリー『アメリカ・ファースト』を制作。近著には『革命の時代:17世紀から現在までの進歩と反動』(未邦訳)がある。

トランプが再現を目指す19世紀の「現実的政治」とは


──米大統領ドナルド・トランプは、ロシアのプーチン大統領と直接対話し、ウクライナ抜きでウクライナの未来について議論しました。米国は第二次世界大戦終結後からヨーロッパにもたらしてきた軍事的支配を再考しようとしています。私たちは地政学的「新時代」に突入したのでしょうか。

はい。私たちは新たな世界に直面しています。二つのことが同時に起きました。一つは非常に短期間で影響を及ぼすものであり、もう一つは長期的なものです。

近いうちにウクライナは暗い未来に直面するでしょう。無情にもトランプはウクライナの成功の可能性を減らしました。彼はおかしな方法で交渉に臨み、モスクワの味方をしました。つまり、キーウは侵略者であり、ゼレンスキーは独裁者ということになっており、交渉はゼレンスキー、ヨーロッパ抜きで進められました。ウクライナのための安全保障はないがしろにされています。

交渉は、武力によって獲得された領土は返却されるべきだという認識のうえで着手されるべきです。現実的ではないかもしれませんが、それでもそこに立ち戻る必要があります。なぜなら、それが法と道徳の要請だからです。ヨーロッパはこの考えのもとで団結するべきです。

ウクライナは真の安全保障の恩恵を受けなければならないということを、トランプは理解していないようです。1994年に、ウクライナは全領土の承認と引き換えに、当時世界第3位の保有量であった核兵器をロシアに返却し、書面上の安全保障を獲得しました。2008年のブカレストサミットにおいて、NATOはウクライナの「将来の加盟」を宣言しました。いま、ウクライナはより具体的な何かを必要としています。今日ではそれには程遠い状況です。

──長期的なものとは何でしょうか?

ドナルド・トランプは80年間続いた国際社会のシステムとも決別しました。これまで米国は、ヨーロッパや、ヨーロッパを防衛するための手段について常に討議してきましたが、大陸を防衛するシステムそのものを疑問視することはありませんでした。また、米国は国際社会のシステムの一部でなければならないということを確信していましたが、もはやそうではありません。

米国が脆弱な防衛網しか提供してくれなくなったことで、ヨーロッパは自らを守るための軍備が大きくなるはずです。まだその状況ではありませんが、そのシナリオへと向かっています。


──トランプの行動が目指しているのは、どういった国際社会システムなのでしょうか?

トランプはさしたる戦略もなく、自分の本能に従っています。しかし、彼は旧世界──19世紀の「現実的政治(レアルポリティーク)」を作り直そうをしている最中です。その世界では、国際社会のシステムは大国の野望と利益によって決定づけられます。

今日、大国とは米国、中国、ロシアを指しています。なかでもロシアの軍事力が特に目立っています。民主主義、国際法、自由は二次的なものになり、重要なのは力だけです。だからこそ、米国がおこなっているように、カナダ、メキシコ、グリーンランド、パナマなどが脅威にさらされているのです。国際関係は強制的なものになりました。

19世紀末に3人の皇帝が組んだ三帝同盟に似た状況に戻ることも想像もできます。ドイツ、オーストリア=ハンガリー、ロシアは、互いの勢力範囲を承認することに合意し、民主主義と政治的自由を排除しようとしました。

「歴史的に大きな戦争は、作戦開始時の計算間違いが原因」


──現実的政治への回帰は、戦争のリスクを高めますか?

その通りです。歯止めがないと、人は行けるところまで行こうとするからです。今日、ロシアは19世紀回帰のパイオニアとなっています。それは1990年代のチェチェン紛争から始まり、2008年のジョージア侵略、そして2014年のウクライナへと続きます。2014年、モスクワはヨーロッパを驚かすことに成功しました。当時のドイツ首相アンゲラ・メルケルは侵略者にあまりにも迎合的でした。

しかし、2022年にウラジーミル・プーチンがウクライナを侵攻したとき、残念ながら彼は事態を見誤りました。彼が予期した早期勝利は実現しなかったのです。ウクライナは自国を防衛し、西欧が団結しました。戦争は長期化し、60万人のロシア兵が死傷しました。

中国が台湾に同じことをすると、あるいはインドと中国の国境の緊張が衝突に至ることを想像してみてください。国際関係の歴史から私たちが学んだのは、長期的で被害の大きい戦争は、そのような作戦が開始されたときの計算間違いが原因であるということです。

それぞれの国の領土保全の原則を尊重することは、私たちの身を守ります。

──第二次世界大戦後に実現した国際規範から世界が引き出した教訓を、話していただけますか?

それ以前には、領土併合は一般的でした。1830年から1945年までには、およそ150件ありましたが、それ以降は3〜4件に減りました。

ロシアがウクライナに仕掛けた戦争はそれゆえ、真の逸脱を表しています。しかし、かつては一般的でした。フランスのアルザス・ロレーヌ地方が所有者を変えた回数を考えてください。今日、フランスとドイツが戦争していたとはとても信じられません。

私たちは、完全ではないにしても、とてつもない世界を構築することに成功したのです。

──1945年以降の国際社会のシステムが米国のせいで頓挫することに、驚きませんでしたか?

このシステムはロシアか中国の侵略によって頓挫するのではないかと長い間考えられていました。しかしいま、米国がそれを見捨てること、一人のエゴイズムのせいで、まさしくこのシステムは崩壊しようとしています。

「エゴイズム」と言ったのは、トランプは米国でもコンセンサスを得ていないからです。トランプがもたらす最大の危険は国際的な場面にあると、私はずっと考えていました。というのも、外交についての大統領特権に対して、米国の憲法は何の歯止めもかけていないからです。それゆえ、彼はNATOも好きなようにできます。NATOの小国が攻撃されたら、米国はどうするのでしょうか。誰にもわかりません。

それ以外にも米国の孤立主義はよく知られています。1930年代に遡る「アメリカ・ファースト」のスローガンは、飛行士チャールズ・リンドバーグやその周辺の反ユダヤ主義者、しばしば親ナチス派たちによって広められたものです。

アメリカ・ファーストを支える大部分の人々は、単に米国が国際舞台から身を引くことを望んでいました。トランプがこの思想を復活させることは意外ではありません。驚くべきは、この思想が彼の中で、反ウクライナ、反ヨーロッパ、親ロシアとして解釈されていることです。

米国の同盟関係を解消しようとするトランプの力は驚くべきものです。こうした気まぐれは理解できません。悲しみが驚きに入り混じってきます。構築するよりも破壊するほうがずっと簡単ですから。戦後、私たちが構築した世界は、私にとって誇りの源泉の一つです。

──私たちは西欧世界の終焉に立ち会っているということでしょうか?

米国の離脱にもかかわらず、米国とヨーロッパが1945年以降に作り上げたシステムは生き残っていることが、はっきりと見てとれます。その力は、私たちが思っているよりも強力です。それによって、世界は平和と繁栄へと発展することができます。

だからこそ、それについて語ることにある種の倦怠感があるとしても、これだけの賛同を集めるのです。しかし、危機に直面して、自由を失うリスクに直面して、この国際社会のシステムを作り出した西欧の価値は、やはり有効なのです。

ウクライナを見てください。この国の望みはただ一つ、西欧に加わることです。ジョージア、モルドバ、バルト三国、カザフスタンなど、ロシアに脅かされている国はすべて同様の望みを持っています。しかし、彼らは慎重である必要があります。ロシアが見張っているからです。誰も19世紀を夢見てはいません。

たしかに西欧世界は主要なモーターを失いつつあります。しかし、少なくとも米国が正気を取り戻すまでは、別の国々で物事を進めてゆくことは可能です。

トランプは決して、彼が望んでいたような大勝利を収めたわけではありません。米国人は、どれだけトランプの計画がおかしなものか、すぐにわかるでしょう。民主党には希望が残されています。

米国は非自由主義的民主主義国家になろうとしているのか?


──トランプがロシアとの融和を求めるのは、ロシアと中国を引き離して、中国というライバルに有利に対峙するためであるという分析もあります。このような賭けがうまくいくとお考えですか?

トランプがそれを達成するチャンスはわずかしかなく、そしてその代償はとても高くつくと思います。中国とロシアという同盟国を引き離そうと試みることは、良い発想だと思いますが。

しかし、国際貿易を経済基盤とし、国家主権の尊重を重視し、国際社会のシステムの規則を尊重する中国との接近を試みるほうがいいでしょう。ロシアはこのような発想を台無しにします。この発想は帝国主義と相反するからです。中国にそのような野望はありません。中国が望むのはただ一つ、台湾だけです。

もっとも、ロシアを中国から引き離すために、トランプがロシアに迎合しようとしているなら、その戦略は失敗しているように思えます。2月24日のビデオ会議で、ウラジーミル・プーチンと習近平は良好な関係を明らかにしましたから。

──米国は、非自由主義的民主主義国家になろうとしているのですか?

すでに非自由主義的民主主義国家です。トランプは、完全に非合法的なやり方で政府を破壊し、大統領の権限が制限されることを、連邦職員がホワイトハウスから独立していることを、認めようとしません。彼は裁判所の通告・決定に従うことを拒否しています。

いまのところトランプ政権は、法廷の命令を迂回する手段を見出して満足しています。たとえば、国際支援を担当する連邦国際開発局については、ホワイトハウスは評決を受け入れているかのようにしていますが、実際にはそれが機能しないような手段をとっています。

裁判所の評決の精神は尊重されていません。すでにそれが問題ですが、トランプがこのようなイタチごっこを続けたら、どうなるでしょうか? トランプが、裁判所が出した決定を公然と無視するようになるなら、私たちは、150年にわたって経験したことのないような、憲法の危機に直面することになります。トランプは自らの目的のために、すでに裁判所を道具にしています。検事が大統領の利益のために働くことになれば、まさしくスキャンダラスなことになります。

特に心配なのは、大きな政党の、大多数ではなくてもかなりの部分が、トランプを支持する見解を示し続けていることです。反権力の立場の人々も常に存在していますが──彼らによって均衡が回復することを私は望みます。

──非自由主義的民主主義の飛躍についての記事をあなたが書いたとき、米国がいつかこのような体制に揺れ動くと思っていましたか?

米国には非リベラルな傾向があり、私はそれを不安視していました。その危険は、とりわけ、個人崇拝を煽るような候補者の飛躍に表れています。

しかし、正直に言って、このようなことになるとはまったく思っていませんでした。実際には、ドナルド・トランプは議会を従わせ、個人崇拝を打ち立て、共和党を完全に破壊することに成功したのです。



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