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業界常識を超えた「配送料無料」等で日本上陸 韓国発「ロケットナウ」でフードデリバリーはどうなるか?

千葉哲幸フードサービスジャーナリスト
韓国発、日本に上陸したフードデリバリーサービス「ロケットナウ」は、配送料0円、サービス料0円、デリバリーの商品の価格は、店舗と同じという日本の常識を超えたサービスを行う。果たしてこれが、日本の業界にどのような動向をもたらすものか、注目される。(ロケットナウ提供)

わが国のフードデリバリー市場に変化が見られている。

まず、市場規模の動向をみると、コロナ前の2019年が4183億円だったが、コロナ禍にあって市場は倍以上に増えて、2023年には8622億円となった。しかし、コロナが落ち着いた2024年には7.6%減の7967億円となっている(サカーナ・ジャパン調べ)。

このような中で、ドミノ・ピザエンタープライズ(オーストラリア)は、2025年2月7

日「ドミノ・ピザ」日本国内店舗のうち172店舗を2025年をめどに閉店すると発表。これは日本国内約940店舗の2割に相当する。閉店する理由は、「コロナ禍にあって宅配需要の高まりを受けて積極出店したが、需要増が一服して不採算店舗が増えていた。閉店で収益性を改善する」ということだった(日本経済新聞、2025年2月7日)。

そして、韓国発のフードデリバリーサービス「Rocket Now」(ロケットナウ)が今年の1月から港区内でデリバリーサービスを開始。渋谷区、新宿区とサービスエリアを拡大してきている。

「配送料無料」はお客様第一主義で考えた

「ロケットナウ」の最大の特徴は、①デリバリーの商品の価格が、店舗の価格と同一価格、②配送料0円、サービス料0円、ということ。わが国のフードデリバリーでは、デリバリー商品の価格は、店舗の価格より30%程度高く設定されている。これに、配送料とサービス料が加わる。「ロケットナウ」が作成した広報資料によると、「バーガーキング」の「ワッパー」は店舗での価格が1040円だが、これが、日本の一般的なフードデリバリーサービスでは1750円~1920円となっているという。

これについて、「ロケットナウ」の関係者は、「日本の人は、『フードデリバリーは高い』というイメージを抱いている。その点『ロケットナウ』は、お客様第一主義でデリバリーサービスに取り組んでいる」と語る。

「ロケットナウ」はグローバル企業であるクーパンINCが運営している日本のデリバリーサービスである。クーパンは2021年3月、ニューヨーク証券取引所に上場。「フォーチュン200」(アメリカの経済紙『フォーチュン』が発表する全米の売上規模上位200社のリスト)に登録されている企業の一つである。2024年には年間売上額303億ドルを記録、「クーパン」「クーパンイーツ」「クーパンプレイ」「ファーフェッチ」といったブランドを通じて、グローバルでリテール、フードデリバリー、動画配信のフィンテックサービスを運営している。

「ロケットナウ」のサービスの概要はホームページで公開されている。(ロケットナウのホームいページより)
「ロケットナウ」のサービスの概要はホームページで公開されている。(ロケットナウのホームいページより)

後発ながら「配送料無料」で一気に市場をつかむ

クーパンが、日本でフードデリバリーの展開をスタートしたのは、韓国での成功体験を背景にしている。

そもそも、韓国ではeコマースが市民生活に大きく浸透している。

韓国の人口や経済人口は、それぞれ日本の約2分の1に相当する。具体的に(カッコ内は日本の数字)、韓国の人口:5171万人/2023年(1億2409万人/2024年)、韓国の経済人口:2950万人/2025年(6911万人/2022年)であるが、2022年月間デリバリー使用人口は、推計で2200万人(640万人)となり、韓国の経済人口の74.58パーセントとなっている(日本は9.26パーセント)。

韓国でのフードデリバリーは、これまで「配達の民族」と「ヨギヨ」が二強で、それぞれフードデリバリー市場の80パーセント、20パーセントを占めていた。この市場の中に、クーパンが「クーパンイーツ」をもって2019年に参入。その後、この市場の中で急激に存在感を増していった。

クーパンの資料によると、配送料無料を開始してから1カ月で「クーパンイーツ」に加盟した飲食店の売上がソウル以外の地域で2倍以上に伸びた、ソウルを含めた韓国全国の加盟店の売上は35パーセント上昇した。このように配送料無料の導入によって「クーパンイーツ」は大きく成長し、「配達の民俗」もこのサービスを導入するようになった。

「ロケットナウ」はスマホからオーダーする、そのイメージ。(ロケットナウのホームページより)
「ロケットナウ」はスマホからオーダーする、そのイメージ。(ロケットナウのホームページより)

個人事業主とフリーランサーで事業を成立させる

さて、韓国と同じように日本のフードデリバリー市場で「配送料無料」を行う「ロケットナウ」では、配送業者と、このデリバリーサービスを行う加盟店の獲得に余念がない。

まず、フードデリバリーのサービスは午前8時から翌午前3時の間で行う。その配達員の募集と採用は、誰でも空いた時間に副業として行うことができるオープンプラットフォームとして、SNSマーケティングや友人紹介など、さまざまな方法で行っている。このアプリに登録して初配送を行うと、2000円のボーナスを付与する。

日本においてデリバリーの文化が定着することによって、「本業配送業者」の個人事業主が増えてきているという。これによって、配送時間は守られて、悪天候の中でもデリバリーサービスが滞ることなく行われるようになっているという。

加盟店の募集については、次のようなメリットを提示している。

・配送料無料であることから、新規顧客を創出する効果がある

・早く加盟店になると、注目を集めることができる

・問い合わせについては「専任マネージャー」を配していて、電話で即時対応を行う

・ストアコールセンターに多くの人員を配置し、忙しい店長の不満事項や問題事項に迅速に対応できる

・天候が悪化した場合でも、配達プラットフォームを一貫して露出し、配達売上を確保する

そして、加盟店を開拓する「営業スタッフ」をフリーランサーで募集している。この募集の告知では「加盟店が確保できると1件当たり3万円を支給する」とうたっている。これらをLINEアカウントで告知を開始してから、わずか1週間で1000人を超える申し込みがあったという。

成功するためのポイントは「ローカライズ戦略」

さて、『FASTGROW』というweb媒体に、わが国のデリバリーサービスの草分けである 出前館の代表、矢野哲氏と同社執行役員の森山海太氏に取材した記事が掲載されていた(2024年11月8日)。ここで、わが国のデリバリー市場のこれからについて、6項目が挙げられている。

① 日本のデリバリー浸透率は5%未満。高い成長ポテンシャルを秘めている

② 日本では江戸時代に起源があり、いまライフラインの一つになっている

③ デリバリー領域は日本企業がグローバルジャイアントに勝つことができる

④ ローカライズ戦略が鍵

⑤ 「配達時間の最適化」から「他業種の連携」まで

⑥ 未来の社会インフラを構築できる領域

これらの中で、筆者は④の「ローカライズ戦略が鍵」に注目した。ここの解説文を要約して紹介しよう。

――国や地域によって主要プレイヤーが大きく異なる。この特性は、各国の文化、法規制、消費者の嗜好の違いを如実に反映している。

 例えば、アメリカでは「Door Dash」が65パーセントという圧倒的なシェアを持っていて、23パーセントの「Uber Eats」を大きく引き離している。しかし、この強さは必ずしも他国に通用するわけではない。実際、「Door Dash」は2021年に日本市場に参入したものの、わずか1年で撤退を余儀なくされた。

次に、中国市場、ここは規模が桁違いだ。2023年の市場規模は30兆円を超えて「ビダン」と「ウーラマ」の二強が市場を牽引している。特徴的なのは、これらのサービスが大手テック企業のスーパーアプリの一部として提供されていることだ。――

日本の飲食店オペレーションの深い理解が必要

日本市場では前述したとおり、「出前館」「Uber Eats」「Wolt」「menu」が主要プレイヤーとして競争が展開されている。

この状況下、代表の矢野氏は「われわれは日本が抱えている課題を現場で聞いて、それをテクノロジーで解決する組織体制が出来ている」と語り、同社はテクノロジー活用や地域に根差した戦略で強みを発揮している。

この点について、執行役員の森山氏は、テクノロジーへの投資の主な狙いを「AI活用による配達員アサインや最適経路算出」と述べて、「日本の飲食店オペレーションの深い理解と、テクノロジーの融合が重要」と強調している。

「ロケットナウ」が日本のフードデリバリーサービスの市場に持ち込んだ「商品の価格が店と同じ、配送料0円、サービス料0円」のサービスは、果たして日本のフードデリバリーに変化をもたらすのか、大いに注目される。

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ありがとうございます。
フードサービスジャーナリスト

柴田書店『月刊食堂』、商業界『飲食店経営』とライバル誌それぞれの編集長を歴任。外食記者歴三十数年。フードサービス業の取材・執筆、講演、書籍編集などを行う。

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