【第44回】「補助金交付候補者」という幽霊制度──誰が“採択者”の申請権を奪ったのか?
事業再構築補助金制度の深層に潜む“設計の欠陥”について、私たちは一つひとつ現場から検証してきました。
今回は、採択後の事業者に突き付けられるもうひとつの「壁」――
それが「補助金交付候補者」という不思議な存在です。
公募採択=処分。これは今弁護士と議論しています…
補助金行政について、本件訴訟を契機に諸手続きの違法性を弁護士と議論しながら確認しています。
私は以前から「公募申請」は交付申請の申込に他ならないのではないか?と考えておりましたが、どうもその予想は色々な判例を見るごとに正しそうですが、まだ決定的な証拠と結論はこれからですので!議論が深まりましたらご報告します。
法律を読み込むと完全に問題がある申請過程はその後の「交付申請」に至る過程に潜んでいます。
消えた審査結果の“ABCD評価”──透明性の後退
かつてこの制度では、公募申請者には採否を問わず「ABCD」評価という形式で審査結果が通知されていました(第10回公募まで)。
これにより申請者は、たとえ不採択であっても「どこに問題があったのか」を知ることができ、次回以降の改善に役立てることができたのです。
ところが、第11回以降、突然このフィードバック制度は廃止されました。
理由の説明もなく、なぜ制度が変わったのかも一切公開されていません。
ちなみに、同じ経産省所管の「ものづくり補助金」では今も中央会に照会すれば、審査官のコメントを得ることができます。
「事業再構築補助金だけが特異に不透明」
この構造こそが、次に述べる「交付候補者」問題の温床となっています。
“補助金交付候補者”とは何か?──法の空白に生まれた概念
事業再構築補助金では、採択通知の後に「あなたは補助金交付候補者に選定されました」という通知が届きます。
この言葉、どの法律にも出てきません。
補助金適正化法にも、行政手続法にも、予算執行法にも。
出典は、公募要領29頁のただの「文言」に過ぎないのです。
https://jigyou-saikouchiku.go.jp/pdf/koubo.pdf
にもかかわらず、この「交付候補者」に対して中小機構と事務局(パソナ)は、以下のような理由で交付申請を“通さない”判断をしています:
補助対象経費でないと判断された
事業実施期間に間に合わなそうだと“推定”された
既存事業に転用できると“思われた”
事業計画書に書いていなかったから
これらは形式上「申請却下」ではなく、“交付申請をさせない”という運用。
つまり、「申請権の奪取」なのです。
補助金適正化法・行政手続法に照らして問題は?
本来、補助金交付の審査は適正化法6条1項により、
書類審査と必要な現地調査を行い
適正と認めたときに交付を決定し
不適正であれば理由を示して却下する
と明記されています。
さらに、行政手続法では
第8条:補正の機会を与える
第13条:不利益処分には理由の提示が必要
と規定されています。
にもかかわらず、交付候補者制度では、
「補正」が許されず
「理由説明」もなく
実質的な“門前払い”
事業計画書の補正も許されない
ということが横行しているのです。
これは明らかに、手続きの保障を欠いた運用ではないでしょうか。
パソナと中小機構の“都合のいい設計”?
この「交付候補者」制度、なぜ必要なのでしょうか?
一つの仮説はこうです:
公募採択=約束したように見えてしまう
しかし予算の都合で全員には出せない
だから「交付申請前に脱落させる仕組み」が必要だった
また「いちいち事業者の長い説法を聞いていたくない」
ここに、「補助金交付候補者」という中間的地位を創造し、
審査の瑕疵や予算圧縮の責任を制度外に押しつける仕組みが誕生したのではないでしょうか。
「補正の機会を与えない」ことにより、
「当初の審査が甘かった」ことを隠すためでもあります。
要するに、これは中小機構と事務局パソナの自分たちを守るための制度運用であり、
採択者の保護とは真逆の思想が流れていると言わざるを得ません。
「採択されたのに交付されない」制度は是正されるべき
採択された事業者が、通知一枚で実質排除され、補正の余地も与えられず、事実上の「辞退」に追い込まれる。
これは行政実務としてあまりに粗雑であり、
何よりも中小企業の「挑戦」を支援するという補助金制度の本旨に反します。
私たちはこの問題を公にし、制度の歪みによって声を失った事業者のために発信を続けます。
「補助金交付候補者」という幽霊のような制度に、法の光を。
そして、誠実に事業を進めた中小企業が「約束を反故にされることのない制度」へと、改革を進めていきましょう。


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