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【第40回】補助金不交付・差戻しと闘うための異議申立て完全ガイド

――「通らない」と言われても、まだできることがある。

最近、私のもとに届く相談の中でも特に多いのが、「不交付」「差戻し」のまま申請が前に進まないというケースです。

  • 「差戻しを繰り返され、事実上の打ち切りのような対応をされている」

  • 「いつまで経っても正式な決定が出ない」

  • 「不交付の通知は来たが、理由が曖昧すぎる」

こうした対応は、単なる“行政手続きの遅延”ではなく、明確に争いうる行政処分や不作為である可能性があります。

今回は、これらに対してどのように異議申立てや不服申立てを行えばよいのか、実務的な視点から解説します。


✅ はじめに:「補助金の交付決定や不交付も“行政処分”です」

まず知っておくべき大前提として、補助金の採択・不採択・交付決定・交付取消などは、
単なる「事務連絡」ではなく、行政処分=法的に争える行為です。

とくに、

  • 「交付決定の取消し」

  • 「交付決定をしない旨の通知(不交付)」

  • 「何度も差戻しにされ、実質的に却下されている」

こうしたケースはすべて、行政不服審査法または行政事件訴訟法の対象になります。


✅ ステップ①:「処分」か「不作為」かを見極める

まず最初に、自分が受けた行政対応が、以下のどちらに該当するかを確認します:

行政処分=不採択・不交付通知・差戻し後の却下など
対象となる手続法:審査請求 or 行政訴訟

不作為=「何も通知が来ない」「審査が止まっている」
対象となる手続法:不作為の違法確認訴訟(行政事件訴訟法第3条)

📌通知文が来ていない場合も、「審査が過度に遅延している」場合は不作為の対象となります。


✅ ステップ②:文書での異議申立て(教示請求・再審査請求)

● 教示請求とは?

行政庁に対して、「この対応に対してどんな不服申立て手段があるのか、文書で教えてください」と求める制度です(行手法第37条)。
中小機構などが教示を怠っている場合でも、この請求によって相手方に法的責任を発生させることができます。

📌教示請求文例は後述。


✅ ステップ③:審査請求 or 行政訴訟

補助金適正化法第25条は地方公共団体に限った不服申立て制度であり、一般事業者は以下の制度を使います:

行政不服審査法→審査請求(処分後60日以内)
書面での異議申立てが可能。争点整理に有用。

行政事件訴訟法抗告訴訟(6ヶ月以内)→裁判所に直接提訴。
教示なくても可能。前置不要。

📌審査請求と訴訟のどちらを選ぶかは、ケースバイケースで検討を。


✅ ステップ④:通知や差戻しが不適切な場合の指摘ポイント

次のようなケースでは、争点として有利になる可能性があります:

  • 差戻しの回数が過度で、内容も曖昧・一貫性がない

  • 不採択・不交付の通知に明確な理由記載がない(=第21条の2違反)

  • 通知元が「事務局」や「パソナ」である

  • 差戻し期間中に補助事業期間を過ぎてしまった


✅ 教示請求の文例(テンプレ)

独立行政法人中小企業基盤整備機構 御中

令和○年○月○日付の補助金不交付通知(または差戻し連絡)について、 
行政不服審査法に基づく不服申立ての対象か否か、
またその手続の内容・提出先・期限等についてご教示ください。 

(以下、連絡先・氏名など)

✅ 補助金の場合の「教示請求の提出先」は?

■ 事業再構築補助金のケースでは:

▶ 提出先は「中小企業基盤整備機構(中小機構)」になります。

なぜなら、補助金の「採択」「交付決定」「差戻し」「不交付」などの実施主体=行政権限を行使しているのは中小機構だからです。


✅ 注意点:事務局(パソナ等)は提出先ではない!

  • パソナなどの事務局は単なる委託先=“実施機関ではない”ため、教示請求をしても法的な義務を負いません

  • 中小機構本体に出すことが必要です。


✅ 提出方法

  • 内容証明郵便がベスト(証拠を残せる)

  • または簡易書留付きの普通郵便+メールでの重複送付も可(相手の受付記録が残るなら)

  • 担当部門が不明な場合は「総務部」や「法務担当」「補助金支援部宛」で出すのが通例


✅ 宛名・住所例(2025年4月時点)

独立行政法人 中小企業基盤整備機構(中小機構)
〒105-8453
東京都港区虎ノ門3-5-1 虎ノ門37森ビル
宛名:「〇〇補助金支援担当部 御中」または「総務部 法務担当 御中」など


✅ 補足:教示請求の根拠法

行政手続法第37条(教示の請求)

「処分その他の行政行為について、その不服申立ての方法、提出先、期間等について教示を受けていない者は、当該行政庁に対し、文書により教示を求めることができる。」

→ 中小機構は、あなたが「不服の申立て先が分からない」として教示請求を行った場合、原則として文書で教示を返す義務があります。

📌PDF・Wordフォーマットでのテンプレ希望があれば提供可能です。


✅ まとめ:「差戻し」でも戦える、あなたの権利

「差戻しばかりで前に進まない」
「通知は来たけど理由がふわっとしている」
「そもそも申請のまま放置されている」

それ、全て争えます。

補助金は“あげる・あげない”の恩恵的な制度ではありません。
法律に基づき、審査され、正当に決定されるべき行政行為です。
そこに不備があるなら、異議を申し立てるのは当然の権利なのです。

📣声を上げなければ変わりません。
でも、声を上げれば「制度側」が問われる時代です。

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コメント

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不当な事業再構築補助金の返還命令をめぐって中小機構と裁判をしています。補助金の支援機関でもある当社がこのような目にあわされた原因やこの裁判の結果次第で同様の問題にあっている人への先鞭をつけるケースとなり、支援の手が差し伸べられるようにしたいと思います。hajimari.co.jp
【第40回】補助金不交付・差戻しと闘うための異議申立て完全ガイド|白川淳一@はじまりビジネスパートナーズ|事業再構築補助金の問題点と制度改革
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