14歳のとき、大手事務所のオーディションに応募すると、約2万人の応募者から合格して芸能界入り。男女5人組ユニット『AAA(トリプル・エー)』のメンバーとなり、2005年にデビュー。快進撃を続けて6大ドームツアーを達成し、ソロアーティストとしても活躍する。さらにブランドプロデュ―サーの顔も持つ――。
このような事実を羅列するだけで、「なんて眩しいスター街道なんだろう。本人は幸せいっぱいだろうな」と思う人は多いだろう。しかし当の與真司郎さんは、実は誰にも言えない苦しみを抱えながら生きていたという。
與真司郎さんの最新フォトエッセイ『 人生そんなもん 』は、2023年7月26日水曜日、與さんが約2000人のファンの前で、ゲイであることをカミングアウトしたときから始まっている。人気絶頂のアーティストが、大勢のファンの前でカミングアウトしたことは大きな話題を呼び、現在ハリウッドでドキュメンタリーが制作されている。
ダンスが大好きでオーディションの門をたたき、常に努力してきた與さんが、アーティスト活動に大きな喜びを抱きながら生きてきた。しかしこのエッセイを読むと、「自分本来の姿を言えないこと」がどれほど影響を与えるのかも感じるのだ。
発売を記念したインタビュー第1回では、LAに旅をしたときに見た風景から、苦しみから逃れるためにアメリカに住みたいと考え、中学1年生の英語から学びなおしたエピソードをお伝えした。また本書より、2023年7月23日、何か月もかけて與さんが書き直して完成させたという「手紙」も紹介した。
本書から紹介する第2回は、カミングアウトを明確に決意したときのことをお伝えする。
與さんインタビュー
第1回) 「ゲイを隠すのが辛かった」AAA與真司郎が「28歳のアメリカ留学」を実現させた方法
『人生そんなもん』抜粋紹介
第1回) 【全文公開】「翌日の飛行機チケットを取っていた」與真司郎がゲイだとカミングアウトした「手紙」
芸能界での居場所を失ってでも
カミングアウトを具体的に考え始めた頃、すでにAAAの活動休止が発表されていて(年内をもって活動休止と2020年1月に発表)、自分の中で決断しやすいタイミングだったと思う。僕にとってAAAはすごく大切で、かけがえのない宝物のような存在だったけど、人生は短いから決断と行動は早いほうがいい。世間へのカミングアウトをよりはっきりと考え始めた。
僕の中では、2020年に開催予定だったAAAの最後のドームツアーが無事に終わったらカミングアウトをしようと思っていた。それならグループにかける負担は少ないだろうと考えていたし、何より区切りがいい気がしていたから。 まずは付き合いも長く、最も信頼できる3名のマネージャーに自分の意向を伝えた。自分がゲイであることや「カミングアウトしたい」という希望を明かしたら、最初は全員が驚いていたけれど、想像していたよりもフラットな反応で、冷静に受け止めてもらえたように思う。もちろん緊張していたから、鮮明な記憶はない。ロサンゼルスに留学を決めた時と同じように、頑固な僕が自分から「やる」と言い出したことには、反対しても意味がないということを理解してくれていたのかもしれない。
「カミングアウトしたら、芸能界にはいられなくなる可能性も高い」という不安も打ち明けた。すると、「真司郎なら大丈夫だから応援するし、サポートもするよ!」という前向きな言葉が返ってきた。「與真司郎の活動を待っているファンのためにできることがあるはずだ」と励ましの言葉ももらった。一方で、公に言えない悩みを抱えたまま、本当に伝えたいメッセージを歌にできないもどかしさがあったから、まずはアーティスト活動を休止することだけを発表した。2020年11月のことだ。 しかしその頃、AAAの活動休止前最後のツアーがコロナの影響で延期になってしまっていた。たまたま日本にいた僕は緊急事態宣言やビザの関係でアメリカに戻れず、どうすることもできずに悶々とした日々を過ごすことになる。