能登半島地震を受け整備された仮設住宅団地=1月、輪島市内

 ●復興公営住宅も高騰懸念 市町の重荷に

 能登半島地震の被災者向けに県が整備した仮設住宅6882戸で、1戸当たりの平均建設費が約1450万円だったことが県への取材で分かった。資材費や人件費の高騰を受け、2016年の熊本地震後に建てられた仮設住宅の平均約800万円の1・8倍となった。仮設の費用は国が全額を支援するが、現在、建設が進められる復興公営住宅(災害公営住宅)は一部の事業費を市町が負担しなければならず、被災市町の重荷となる可能性がある。

 県によると、仮設住宅を建設する場合、国の予算措置により自治体の負担は実質ゼロとなる。能登の被災地で建設した仮設はいずれも平屋建てで、▽プレハブを中心とした従来型▽1棟に4~5戸が入る木造長屋の「まちづくり型(熊本モデル)」▽2戸が連なる木造の「ふるさと回帰型(石川モデル)」―の三つのタイプに大別される。

 建物本体の価格に舗装や配管、浄化槽の整備費などを加えた金額は従来型(5279戸)が1380万円で最も低く、まちづくり型(1570戸)が1660万円、ふるさと回帰型(33戸)が1870万円だった。用地確保の難航に伴い、木造2階建てとした奥能登豪雨の仮設286戸は1戸平均約1700万円となった。

 一方、熊本県によると、熊本地震の仮設住宅は全4303戸で、内訳はプレハブ3605戸、木造683戸など。いずれも1戸当たりの平均は800万円程度だった。

 国が費用を負担する仮設に対し、復興公営住宅の事業費については国の交付金で4分の3をカバーし、残りは市町が負担しなければならない。必要戸数は羽咋以北8市町と内灘町で計約3千戸を見込む。1千~1500戸の輪島など戸数の多い市町では持ち出しが増える恐れがある。

 復興公営住宅は来年6月以降に順次完成する見通しだが、東日本大震災の被災地では、独り暮らしの高齢者が多く、将来的に空室が一気に増えて地域が「ゴーストタウン化」するとの指摘もある。

  ●建物の活用課題に

 仮設住宅については、被災者が退去した後の土地や建物の有効活用が課題となる。

 入居期間は完成から2年間が原則だが、熊本では実際に全ての仮設が閉鎖されたのは地震発生から約7年後の23年3月末だった。プレハブは解体されたり、別の場所に移設されたりし、木造は約8割が主に恒久的な住まいとして利活用された。改修して公民館や学童保育施設などに転用したケースもあるという。

 石川県内の仮設では、まちづくり型とふるさと回帰型は被災者が退去した後、市町営住宅に転用する計画。ただ、従来型を含む全6882戸の3・6%に当たる248戸が既に空室となっている。

 仮設は団地単位で閉鎖するため、県はそれまでの間、空室を復旧作業に携わる関係者の宿泊施設として有効活用できないか、国と検討する考えだ。

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