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2022年10月11日朝6時ごろ、横浜市立みなと赤十字病院(横浜市、2003年竣工)の警備員が地下1階からエレベーターに乗り込んだところ、異常な揺れを感じた。警備員はエレベーターを2階で降りて通報した。負傷者はなかったが、かごと重りがつられているワイヤを巻き上げる綱車の軸が折損していた。

 実はこのエレベーターでは、2014年10月にも綱車軸の折損事故が起きていた。その原因は減速機据え付け時の芯出し不良とされ、事故後は綱車軸を取り換え、あらためて芯出しを実施(支持部の1つを0.2mmかさ上げ)した上で使用を再開していた。

 2度目の事故を受けて社会資本整備審議会昇降機等事故調査部会(以下、調査部会)と国土交通省、横浜市は現地での見分やシミュレーション計算を含む原因調査を実施。設計・製造工程・組み立ての各要因が複合して綱車軸の疲労強度が十分ではなかったことを明らかにした。

金属疲労の亀裂が進行

 巻上機は、モーターと減速機、綱車で構成される(図1、2)。綱車には、エレベーターのかごをつるワイヤが巻き付けられていて、モーターの回転が減速機を通して綱車に伝わることにより、ワイヤの巻き上げ(下げ)でかごを上昇(下降)させる。エレベーターのメーカーは横浜エレベータ(横浜市)で、減速機(綱車軸含む)は住友重機械ギヤボックス(大阪府貝塚市、当時は住友重機械工業)が製作し、これに横浜エレベータが製作した綱車とモーターを組み込んでいる。

図1 事故後の巻上機
図1 事故後の巻上機
綱車が傾いている。(写真:社会資本整備審議会昇降機等事故調査部会)
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図2 巻上機の構成
図2 巻上機の構成
モーターの回転が減速機を介して綱車に伝わる。(出所:社会資本整備審議会昇降機等事故調査部会の資料を基に日経ものづくりが一部編集)
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