時代の変遷とともに、部活動やその指導者、子どもたちを取り巻く環境は大きく変化した。昭和流指導からの脱却、部活動の地域移行や、教員の働き方改革……いまや問題は山積みだ。だが、そんな時代だからこそ、古くから変わらぬ普遍的な教えを大事にしつつ、新たな変化も取り入れる、「不易流行」の取り組みが求められているのではないだろうか。
帝京を9度の全国制覇に導き、日本一の強豪校に引き上げた元帝京高校サッカー部監督の古沼貞雄氏。そして、公立校でありながら全国常連として名を連ね、数多のJリーガーを輩出してきた熊本県・大津高校サッカー部テクニカルアドバイザーの平岡和徳氏。師弟関係にある2人の“名将”の根底に流れているものこそ、まさに「不易流行」の教えだった。『不易流行 古沼貞雄×平岡和徳』(内外出版社)から一部抜粋してお届けする。
日本中に衝撃を与えた「いじめ問題」
「サッカー強豪校として知られる大津高校で2022年1月、当時1年生だったサッカー部員の男子生徒が全裸で土下座をさせられ、その様子を撮影されるいじめを受けていた」
熊本県教育委員会が2023年10月3日、この事案を『いじめ防止対策推進法に基づく重大事態』に認定したという一報は、日本中に驚きを与えた。大津と言えば、ご存じの通り、60人以上の J リーガーを輩出してきた強豪校。土肥洋一(GKコーチ)、巻誠一郎(元ジェフユナイテッド千葉)、谷口彰悟、植田直通の4人が日本代表としてワールドカップ(W杯)に参戦するなど、日本サッカー界への貢献度も非常に高い。
「凡事徹底」や「年中夢求」「24時間をデザインする」など、1人の生徒として、サッカー部員としてやるべき基本を徹底しているチームだ。人間教育も重んじており、選手同士で協調性を持って切磋琢磨する環境ができあがっていると思われた。
現に、同校出身者は文武両道、人間性に優れ、社会的に成功しているOBも少なくない。そんな学校でいじめ問題が起きるとは、誰もが想像だにしていなかったはずだ。