◇ 粗品 (up時、web拍手に置いていたものです)

~desperate act 1.5~
  

気を抜くと震えそうになる身体を叱咤し、ルックは気負いもあらわに率先して寝室へ向かった。
その足取りが、言葉にすればずんずん、といった色気もへったくれもない様子であるのがおかしくて、ナギは笑いそうになるのを何とかこらえながら後に続く。
ベッドの前まで来て少女は唐突にぴた、と立ち止まる。
とりあえずここまで来てみたものの、この後どうしたらいいのかが分からないらしい。

(犯罪…だよなあ…何か)

困惑しながらもまさか「どうすればいいの」とナギに尋ねるわけにもいかず、所在無さげにしているルックの頭をナギは後ろからぽんとはたく。思わずいつものようにムッとして振り返るルックににこりと笑って、
「座れば?」
「…うん」
いつだったか屋上の床を勧めたのと同じくらいの無造作さでナギはルックに、ベッドに腰掛けることを勧めた。
少しほっとするような、同時にひどく緊張するような、複雑な気分で、ナギのその言葉にルックは従う。
だって、本当に一体どうなるのだろう。
売り言葉に買い言葉でこんなことになってしまったが、既にルックの頭の中は後悔でいっぱいだった。

(ほんとにバカじゃない、わたし!?)

自分みたいな子供がナギにとって魅力ある相手であるはずもない。
ルックはひそかに最近ナギの恋人と噂されている美しい踊り子の姿を脳裏に描いて、今更ながらにため息をつかずにはいられなかった。
彼女の持つ匂いたつような色気も、女らしい曲線豊かな体も、自分にはまるで無いものだ。
…とりあえず、あきれられて追い払われなかっただけまだ救いがある。
そう自分をなぐさめたところで、ふと髪に触れられる感触に気づいて少女はびくりと身を震わせた。
「あ…」
見れば長く形良い指が、自分の亜麻色の髪に絡められていて。
ようやくルックは状況を認識した。
いつの間にか(と言ってもルックが思考の海に沈んでいたから気づかなかっただけで、別段ナギが気配をひそめて近づいたわけではないのだが)、すぐ隣にナギが腰掛けていて、肩の後ろから腕を回されている。その手がさらさらと髪を撫でているのだ。
手を見つめたまま固まってしまった視線を無理矢理ひきはがして、ルックはナギの座る反対側を振り返る。
こちらへ見つめる穏やかな黒い瞳の中に、頬を高潮させた自分の姿が映っていた。
(うわ…)

どうしよう。
今この人の目に映っているのはわたしだけなんだ。

――背中がぞくりとした。

    
「…ってやめろーーーーッ!!!
「うわ、ちょっとルック、今いいところなのに!」
「いいところ、じゃないだろ!何が1.5だ、バカッ!!!大体何でレティがそんなもの読んでるのさ!」
「いや、管理人が一応、1と2の間があまりに唐突だからもう少し何か書こうと思いつつも結局尻切れとんぼにしかならないのでお蔵入りにした文章があったみたいだから、ちょっと引っ張り出してみたわけなんだけど」
「引っ張り出さなくていいよそんなもん!!目が汚れる!!」
「あー、まだあと2行くらいあるのに…」
「切り裂いてくれるわァッ!!」
「うわあっ、待てルック、僕ごとはやめてくれっ!!」
「やかましい!!!」
「ぎゃーっ、ソ、ソウルイーターが暴走するーッ!!」

暗 転

  
…in 談話室。

  
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これがチキンな私の限界でした。エヘ。(死)

  

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