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奇抜なヌードも「AIでしょ」で終わり──’90年代に「Yellows」でデジタルの可能性を示した写真家が生成AIを駆使する現実的な理由分かりにくいけれど面白いモノたち(4/5 ページ)

» 2025年04月30日 12時05分 公開
[納富廉邦ITmedia]

「写真やってたから、今、生成AIで作品が作れるけど、写真やってない人と、写真に熟知した人だと、全然違うものになりますよ。一番大きな違いは構図です。今やってる新しい『Yellows』は、浜辺の砂浜に白い壁を立てて、その前にモデルを立たせるというスタイルで作っているんですが、それを画角の中にどのくらいの大きさで入れるのか、足下の砂浜の具合はどうするか、ビキニならその形と色は? パジャマを着せるなら、その柄や皴の具合なんかを、全部、細かくコントロールしています。構図と色合いは、プロとアマチュアでは全然違いますよ。しかも、構図をプロンプトで指定するのは難しいんです。全身をとか、バストアップでというのはやってくれるけど、それをどのくらいの大きさでどこに配置するかというのは、本当に難しい。試行錯誤して、今はChat GPTと作った特別なプロンプトがあるので、それを使います。それでも、一発で決まるわけではないから、細かく調整し続けて、作品ができあがるんです」

五味彬「Yellows AI」より。浜辺の砂浜に壁を立てて、その前で撮影しているという設定で作られているので、自然光風の光と、足下の砂浜がポイントになる

 五味さんの方法は、ほとんど写真家がモデル相手に指示を出し、現場の光などを考慮して、ファインダーを覗いて構図を決めて、何カットも撮った上で、使える一枚を選ぶという工程と、ほとんど変わらない。それなら、写真家の作家性が作品に表れるのは当たり前ともいえる気がする。

AIで架空の広告写真も

 広告写真も多く手掛けた五味さんは、AIで架空の広告写真も作っている。今はもう撮れない、時代を感じさせる写真と、それが合う舞台、文字を組み合わせて作る架空のポスターは、十分にプロの写真家の仕事だ。生成AIがあれば誰でも作れるというものではない。そして、こうやって一度作られてしまえば、それはもう過去のものとして、真似されたところでもはや新しくはない。そういう意味でも、十分に作品になるし商品になる。

五味さんによる、かつてあったかもしれないスーパーの架空広告。ロゴ等もオリジナルだそうだ

「前に、まだAIも無い頃、その辺の公園で撮る『Yellows』やりたかったんですよ。遊具とか全部、真っ白な布で覆って、その前に裸のモデルを置いて。でも、AIが出てきちゃったら、そんなの簡単にできてしまうから、もうやらないんですけど。AIどころか、今ではフォトショップでもできちゃいますから。そういうのをやっても『AIでしょ』で終わっちゃうから面白くないんですよ。今やるにしても、アナログで、実際に公園に布を被せて撮らないと面白くないんです」

 そう言う五味さんが、今、手掛けているのは、架空のグラビアアイドルの写真集。プロフィールまで作り込んだ、架空のアイドルを使って、それをきちんと一冊の写真家が撮ったグラビアアイドルの写真集として編集し製作する。

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