昔懐かしい木造校舎で郷土食をつくる、味わう 茨城・大子町「大子おやき学校」

「昭和」の足跡

昔懐かしい昭和の木造校舎のたたずまいがそのまま残る「大子おやき学校」の外観=茨城県大子町(三浦馨撮影)
昔懐かしい昭和の木造校舎のたたずまいがそのまま残る「大子おやき学校」の外観=茨城県大子町(三浦馨撮影)

〝奥久慈〟と呼ばれる茨城県北部の大子(だいご)町。中心部にあるJR水郡線常陸大子駅から車で約20分、緑豊かな山あいの道を進むと「大子おやき学校」の看板が見えてくる。駐車場から階段を上って校庭へ出れば、眼前には昔懐かしい木造校舎が広がり、まるで昭和の時代にタイムスリップした気分を味わえる。

小学校、約120年の歴史に幕

建物は旧槙野地(まぎのち)小学校の学び舎。同小は明治7(1874)年に分校として創立し、同12年に現在地へ移転した。昭和31年に単独の小学校となり、最初の卒業生となった元大子町職員の小泉久雄さん(80)によれば、同小は「地域唯一の文化施設で、住民の心のよりどころ」だった。

「運動会はお祭りのようににぎわい、住民は校舎周りの草刈りをするなど学校を大切にしていた」という。

現存する校舎は昭和25年に竣工(しゅんこう)し、36年に増築された。ピーク時に100人近くいた児童は、その後の過疎化で激減。同小は平成8年、統合により約120年の歴史に幕を閉じた。

「校舎は解体せず、何とか保存を」という住民の要望を受け、大子町が考え出したのが「おやき」の製造拠点への転換。小麦やそばなどの粉を使う生地に、野菜などの具材を包むおやきは長野県の郷土食だが、大子町にもあんこを具とする同様の食べ物があった。

町長をトップとする「大子おやき学校組合」が設立され、本場の長野で製造法を学んだスタッフらが平成10年から手作りでおやきの生産を開始。茨城県内の学校給食にも提供され、来訪者がおやきの作り方を学べる教室も開かれた。

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