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【学内のアクセシビリティ問題】大学に意見書を出した話

こんにちは。くらげです。
今回の記事は、かなり学内の人向けです。
というのも、新年度早々なかなかな「事件」があり、2週間ほど経ってやっと日常を取り戻した(ということにしている)ので、なにがあってどうしたのか、ということをここにまとめておきたいと思います。
筑波大生ならきっとご存じでしょう、2学の入構制限の件です。

先に断っておきますが、このnoteはだれか(なにか)を批判するためのものではありません。「障害学生の存在を忘れないで」という主張を軸に、実際に起きた出来事を記述(記録)し、主にアクセシビリティの観点から問題点を論じるにとどめます。
なお、本記事の内容から筆者・くらげを特定できてしまう方がいらっしゃるかもしれませんが、SNS等で不用意に個人情報を晒されることのないよう、最大限のご配慮をお願いいたします。

なにがあったのか?

一言でいえば、「2B棟の警備強化に伴い、第二エリアの各棟に入構制限がかかった」です。
2025年4月3日、突然、2A棟ー2B棟間、2B棟ー2C棟間が防火扉により閉鎖され、緊急時以外の往来が不可能となりました。2A棟を利用する大半の学生が使っていたであろう噴水側の入り口、外階段を上った2階の入り口からは2A棟へ入れなくなり、2A棟の出入り口は2H棟側の2カ所(位置としてはほとんど同じ)のみとなりました。
また、4月5日からは、2B棟入構時に警備員への学生証の提示が必須となりました。学生証を忘れた人は、生物・農林学系A棟の第二警備員室へ行って身分確認および受付を行い、臨時入構証をもらわなければならない、という決まりです。

私の所属する人間学群は2学をメインで使用している学群ですが、人間系の先生方や支援室の職員のみなさんは上記の措置について何も知らされていなかったそうで、学生へ周知があったのも、入構制限が実施されて1日経った4月4日の午後でした。

ちなみに、全学向けの周知という観点では、4月7日にTWINS(全学的な掲示がされる)上で、「一部の建物において、入構時に学生証・職員証を提示することとなります」との周知がなされたのみで、具体的な情報はまるでありませんでした。4月17日に「学生証を常に携帯し、筑波大学の教職員やみなさんの安全を守る警備員から求められた場合は提示してください」とのリマインドがあったものの、現在に至るまで詳細な掲示はされていない状況です。

今回の措置の問題点

SNS上では「不便だ、困る」という声が噴出していましたし、私もまったく同感ですが、ここではそんな話がしたいわけではありません。
2B棟の警備強化が必要であることは十分に理解した上で、それでもなお、今回の大学側の措置はアクセシビリティの面であまりにも大きな問題があったので、状況の改善を求めて抗議することにしました。

私に気づけた範囲での問題点は以下のとおりです。7点あります。

(1)2B棟には身障者用のお手洗いがない。これまでは2A棟(各階に身障者用のお手洗いが完備されている)と直結していたため問題なかったが、今回2A棟との連結部が閉鎖されてしまったため、車椅子ユーザーの学生やストーマ装用の学生などが2B棟を使用する際のお手洗いへのアクセスが大変悪くなっている。
例えば、2B棟4階の教室は、教職の必修科目や障害科学類の授業、BHEの養成講座などでも多く利用するため、仮に生命環境学群の学生に車椅子ユーザーがいなかったとしても、他学群の車椅子ユーザーの学生がその教室を使う可能性は十分にある。しかしながら、現在(閉鎖当時)の状況では、2B棟4階から身障者用のお手洗いに行くためには、2B棟のエレベーターで1階まで下り、2B棟出口から2A棟の入り口(2H棟側)へかなり大回りをして、2A棟1階の奥まで行かなければならない。体調不良のためお手洗いを利用したい場合や、雨天時のことを考えると、非常に問題があるといえる。また、授業中に離席する場合等には特に、車椅子ユーザーであるがゆえに、通常のお手洗いを利用する学生と比べて「移動のために」相当な時間をかけなければならないというのは、さすがに理不尽なのではないか。

(2)現在の2A棟の入り口(2H棟側)は、噴水側の入り口と比べ、ドアの幅が狭い。車椅子でも通れることになってはいるが、学生によっては不自由を感じる可能性が考えられる。

(3)中央図書館/第一エリア方向、あるいは一の矢学生宿舎方向から「点字ブロックを使って」2A棟へ移動する場合、誘導ブロックが続いている先は、現在封鎖されている噴水側の出入り口のみである。現在2A棟の出入り口となっている2H棟側の2カ所には、ドアの前の警告ブロックはあるが、誘導ブロックはない。

(4)2B棟への入構に学生証の提示が必要となったことや、2A棟の出入り口が2H棟側のみとなったことで、授業開始直前や終了直後の時間帯は例年以上の混雑が予想される。とりわけ、2A棟の2H棟側の入り口付近は、筑波大学中央のバス停があることや自転車置き場があることもあり、徒歩・自転車ともに往来のかなり激しいエリアである。車椅子や白杖を使っている学生など、移動に困難を抱える学生にとっては特に、今まで以上に危険を伴うのではないか。事故が起きてからでは遅く、障害学生が常に支援者や介助者をつけるということも合理的とは決して思えない。

(5)このたびの入構制限について、人間学群生や生命環境学群生には周知があったが、TWINS等による全学的な周知はされていない。そのため、他学群の学生については、2A棟・2B棟に来てはじめて閉鎖されていることを知る、というような状況が生まれている。
また、現場には墨字(日/英)による掲示・案内板はあるが、音声や点字による案内・誘導などはないため、文字へのアクセスが困難な学生は情報が得られないのではないかと懸念される。なお、これは移動面と情報取得の両面に問題があるといえるため、例えば「警備員が誘導するので問題がない」といったことだけでは解決にはならないと考える。

(6)2B棟入構時の学生証の提示について、以下のような、不安視する障害学生の声を複数耳にしている。
・車椅子を利用しており、雨の日などは車椅子全体を覆うようなレインコートを着ているため、学生証をすぐに出し入れするのが難しい。
・精神障害があり、(入り口が混んでいる場合など)自分の後ろにも人が並んでいる状況でなにかをしなければならないことに、心理的なハードルが非常に高い(学生証の提示が上手くできなかったらどうしようと不安)。

(7)学生証を忘れた場合には、第二警備員室(生物・農林学系A棟1階)において身分確認と受付をすることで、臨時入構証を貸与いただけるとのことだが、車椅子ユーザーの学生や白杖ユーザーの学生にとっては、第二警備員室へのアクセスも非常に困難なのではないか。生物・農林学系の学生でない限り慣れないエリアであることに加え、周辺が自転車置き場となっているために十分な通路が確保されておらず、第二警備員室の周りには点字ブロックもない(2B棟側から行く場合も2H棟側から行く場合も、途中までで終わっている)。

なにをどう訴えたか

だれに(どこに)抗議すればよいかわからなかったため、まずは普段からお世話になっている人間エリア支援室の職員の方へ、対面でご相談しました。そこで、今回の措置を決定した組織(部署)を教えてもらうことができました。
同じ日に、筑波大学の障害学生支援を担っている組織(BHEアクセシビリティチーム)の先生にも対面でご相談し、「BHEからも改善を求める意見を出すつもり」とのご回答をいただきました。

これらを踏まえて、すぐに先ほどの(1)~(7)の問題点をまとめた意見書を作成し、今回の措置を講じたお相手へ直接メールをして、意見書を提出しました。
また、同じタイミングで、人間系の教職員宛て・BHE職員宛て・全代会宛てに、「このような問題点があるので、先方へ意見書を提出した。学生1人でできることには限界があるので、みなさんからもぜひ意見をあげてほしい」という旨、ご相談・お願いのメールを送りました。

(あくまで個人として意見書を提出したので、正直かなりドキドキでした……。笑)

すぐにご対応いただけた話

意見書を出した1時間半後には、お相手から、意見書を受け取った&早急に対応を検討する旨のお返事をいただけました。
そして、意見書提出の翌日(4月11日)には、2A棟ー2B棟間の1階の封鎖が解除され、噴水側の入り口から2A棟へ入れるようになりました。これによって、往復の手間はかかりますが、建物の外に出ずとも身障者用のお手洗いを利用できるようになりました。
さらに、翌週には2階の封鎖も解除され、3階・4階で2A棟ー2B棟間を往来できないという多少の不便さは残ったものの、先の(1)~(4)の問題点については、概ね解消されました。

※意見書に対する回答として、先方からとても丁寧なご説明をいただきましたが、ここには載せません。要約すると、「それぞれの問題点についてこのように対応した(対応しようと思っている)。アクセシビリティ面とセキュリティ面の双方を注視したい」というような内容でした。
ちなみに、(5)~(7)に対する回答は正直あまり嚙み合っていない印象を受けましたが、最大の問題が解消されたことに免じて、一旦妥協することにしました。

現在の2学

最初にご対応いただいて以降、特に大きな変化はなく、「2A棟ー2B棟間は1・2階のみ往来でき、3・4・5階は閉鎖、2B棟入構時には学生証の提示が必要」という状況が続いています。また、あらゆる出入口や防火扉の前に常に警備員の方がいます。(2B棟の各階には私服警備員と思しき方も複数名いらっしゃいます。)
変化といえば、2学食堂のお弁当が食堂の外でも販売されるようになったことでしょうか……。お弁当のみであれば、学生証を持っていなくても買うことができます。

障害学生の存在を忘れないで

ここまで、アクセシビリティ的な観点から2学入構制限の問題点を論じ、抗議行動の一連の流れをまとめました。
今回の主張に対しては、リアルでもTwitter等でも共鳴してくださる方が多く、大変心強かったです。
一方で、これについては個人的に少し注意が必要だ(手放しには喜べない)と思っている部分もあるので、最後に少し触れたいと思います。

それは、今回の件が「障害のない学生も不便に感じている措置だった」ために、「障害学生にとって不自由極まりないので改善してください」という要望へ賛同が集まりやすかったという点です。
「アクセシビリティを理由とした環境改善要望」が正当なものであるとの認識が多くの学生の中にあった、ともいえます。

なぜ、あえてこのような取り上げ方をするのかというと、これまでさまざまな場面で、何度も、「少数の学生のために時間的・経済的コストをかけられない」「アクセシビリティが不十分なことに不満があるなら参加しなければいい」「運営しているわけでもないのに批判ばかりするな」などなど、障害学生の人権をまるで無視するかのような、かなり強い反発を受けてきたからです。
例えば、昨年度のやどかり祭では、「屋台がすべて石段の上にあり、周辺にスロープなどが1つもないため、車椅子の学生が参加できない」という趣旨の私のつぶやきが大炎上し、何人もの筑波大生から、障害学生の存在自体を否定するかのような批判、対話の拒否、誹謗中傷のメッセージが届きました。(味方になってくれる人ももちろんいましたが。)

こうした事実を踏まえると、「結局のところ大半の学生にとって障害学生のことなどどうでもよく、自分に都合のいいときだけ味方をし、上手く利用している」だけなのではないか、と思えてしまってなりません。
もう少し言えば、「自分に影響がない限りにおいて」、アクセシビリティ対応や合理的配慮の提供は必要だと思っているが、いざ自分が対応する側となると面倒くさい・迷惑だと感じる、という人がまだまだ多いのではないかと懸念しています。
最近はかなり改善されましたが、点字ブロック上に平気で自転車を置いてしまう人がいるのも、「自分は困らないから関係ない」「1人や2人の障害学生のためにわざわざ配慮しなければならないなんて面倒くさい」という思考が根底にあるためではないかな、などと思うわけです。

私は、障害学生のためになにかとても大変なことをしてほしい、と言っているわけではありません。
ただ、「障害学生の存在」を「自分とは関係のないもの」として切り捨てないでいただきたいのです。
同じ大学で学ぶ仲間に障害のある学生もいるのだということを、頭の片隅にでも入れておいていただければ、そして、普段の生活の中でほんの少しのお気遣いをいただければ、とても嬉しく思います。

最後まで読んでくださりありがとうございました!

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筑波大学 人間学群 障害科学類 2022年度入学生(B4) コミュニケーションに関する研究をしています。
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