米政権VSハーバード大、法廷闘争は7月 大学は連携模索
【ニューヨーク=西邨紘子】米東部マサチューセッツ区連邦地方裁判所は28日、ハーバード大学が助成金差し止めを巡りトランプ政権を訴えた件について、審理の日程を7月21日と定めた。ハーバード大は少なくとも数カ月間、研究資金などの政府助成の差し止め措置が続く可能性がある。研究への影響が避けられない中、大学間で資金面などで連携を模索する動きも広がっている。
ハーバード大は4月21日、トランプ政権による助成金凍結の差し止めを求め、マサチューセッツ区連邦地方裁判所に提訴した。米政権が憲法が保障する大学の独立性を脅かし、人命を救う研究を危機にさらしていると主張する。
米政府は同月11日にハーバード大にDEI(多様性、公平性、包摂性)施策見直しや「反ユダヤ主義的活動」の取り締まり強化、教職員や学生の政治活動のチェックなどを求めていたが、同大は拒否。政府は報復として22億ドル(約3000億円)の助成金と6000万ドル相当の契約金の支払い凍結を決めた。さらに10億ドル相当の助成中止を検討しているとされる。
ハーバード大のガーバー学長は訴訟について、米政府による要求が「違憲かつ違法であり、政府の権限を越えている」と説明。補助金凍結も違法と政権を強く批判する。
大学の研究活動を支える連邦政府の助成金差し止めに対しては、既に複数の訴訟がある。14日にはマサチューセッツ工科大学(MIT)やプリンストン大学、ブラウン大学といった有名大学が共同でエネルギー省の助成金削減の差し止めを求めた。
大学が共同で政権に対抗しようとする動きも始まった。米紙ウォール・ストリート・ジャーナル(WSJ)は28日、ハーバード大など名門大約10校の指導者層などが、トランプ政権の要求に対する「譲れない一線」についてアイデアの共有や情報交換を活発に進めていると報じた。
米中西部のインディアナ大学やパーデュー大学、東海岸のラトガース大学などの教員組織もこれまでに、トランプ政権による財務的な圧力に共同で対抗する「相互防衛基金」設立を大学指導層に求める提言を可決した。
米政権が加盟大学をターゲットに「大学の自治、言論の自由や科学的研究など大学の価値の根幹を脅かす」措置をとった場合、弁護士や広報キャンペーンなどの共有を提案している。
22日には米大学の業界団体AAC&Uと100校以上の大学の学長が、米政権に抗議する署名入りの共同声明を発表。「キャンパスで学び、生活し、働く人々の生活への政府の不当な介入」が「米高等教育を危険にさらしている」と抗議している。
2025年1月20日(現地時間)にドナルド・トランプ氏が再びアメリカ大統領に就任。政権の行方など最新ニュースや解説を掲載します。