公開日:
2025/2/21
社員の離職率を下げたい、離職を防止したいというのは多くの企業に共通する悩みかと思います。本記事では離職分析のポイントや分析ツール比較について解説します。
※人事データ活用の基本を知りたい方は人事データ活用にありがちな悩みを解決! 人事データの種類や分析のポイントも合わせてご覧ください。
※離職率以外(労働生産性、残業時間、エンゲージメントスコア、社員の健康状態)のデータ分析のポイントも合わせてご覧ください。
離職分析を行う第一の目的は、離職率上昇の原因を把握することです。例えばエンゲージメント低下が離職率の上昇に繋がっていることが分かれば、エンゲージメントの向上が離職率の改善になると考えられます。
第二の目的は離職リスクの高い個人や組織をフォローすることです。エンゲージメントと離職率の相関が強いなら、エンゲージメントが低下している社員や部署をフォローすることで離職防止ができると考えられます。
離職率に限らず、人事指標は色々な要素が重なって変化するものなので、「離職率上昇の原因」といった明確な因果関係を調べるのは困難です。そこで、
離職率上昇と他の人事指標の相関関係を調べる
相関を元に、離職率上昇の原因や影響の仮説を立てる
ことが重要です。
(例)
離職率上昇と人事データとの相関 | 離職率上昇の原因の仮説 |
|---|---|
離職率が高い部署ほどエンゲージメントスコアが低い | 社員が会社に在籍する意義を感じられていない |
離職率が高い部署ほど残業時間が多い | 長期残業により社員が疲弊している |
離職分析では「個人に対する分析」「組織に対する分析」の2種類があります。前者は離職リスクが高い社員を把握する方法であり、後者は離職リスクが高いセグメント(部門・役職・職種など)を把握する方法です。
どちらも離職リスクが高いものを特定してフォローや人事施策を行うのは同じですが、それぞれにメリット・デメリットがあるため、上手く使い分けましょう。
個人に対する分析 | 組織に対する分析 | |
|---|---|---|
分析対象 | 特定の社員 | 特定のセグメント(部門・役職・職種など) |
フォロー例 | 社員への個別対応(社員との面談、メンタルケア、人事異動など) | ・管理職や事業責任者への個別対応(研修、面談など) |
メリット | ・社員にパーソナライズした対応ができる | ・個別対応よりも工数が少ない |
デメリット | ・社員数が増えるほど工数が増える | ・社員一人ひとりにパーソナライズした対応は難しい |
離職率が高いか低いかの判断基準には、いくつかの考え方があります。
絶対評価
(例)事業部Aは10%であり、閾値の3%より低い
相対評価
(例)事業部Aは10%であり、社内の平均値(または中央値)5%より低い
時系列での変化
(例)事業部Aは6ヶ月前は4%だったが、今月は10%
離職分析を何度も実施し閾値を発見できている場合は絶対評価も有効ですが、そうでなければ相対評価や時系列での変化を中心に判断すると良いでしょう。
離職率の高いセグメントはどこかを分析します。離職率が他に比べて高いセグメントのほうが改善インパクトが大きいため、優先的に対策する必要があります。
セグメントとしては社員の基本情報(性別、部署、役職、等級、職種、入社年度など)が有効です。
離職率の高いセグメントを発見したら、離職率と人事データ(残業時間、労働生産性、等級滞留年数、エンゲージメントスコアなど)を紐付けて分析します。これにより、どの指標が離職率と影響するのか把握できます。
エンゲージメントスコアとの相関を分析する場合は、エンゲージメントスコアの分析のポイントもご覧ください。
離職者の平均勤続年数を確認することで、離職率が高い原因をより具体的に把握できます。
(例)
平均勤続年数が短い場合→新入社員が定着しておらず、入社後のフォローやオンボーディングに課題がある
平均勤続年数が長い場合→ベテラン社員が退職しており、社員のキャリア形成やライフスタイルの変化に課題がある
離職率の上昇原因がいつから発生しているのか把握できます。
ある時期から離職率が上昇した → その時期に原因が発生した(組織や人事制度の変更、残業時間の増加など)
高い離職率が長期間続いている → 慢性的に原因が存在している(昔からの残業体質、低賃金など)
上の分析プロセスを元に、離職がなぜ起きているかの仮説を立てます。
データだけを見ても仮説が立てづらい場合、360度評価・サーベイの回答内容などの定性情報を調べたり社員にヒアリングするのも有効です。
仮説を踏まえて、それを解決するためのアクションを考えます。例えば、以下のようなアクションが考えられます。
離職率が高い原因の仮説 | アクション |
|---|---|
非効率的な業務環境 | ・業務効率化のツール導入 |
職場の人間関係の不仲 | ・チームビルディング研修 |
社員のメンタルヘルス不調 | ・産業医との面談 |
人員の不足 | ・人員の異動 |
アクションを実施した後、離職率や相関の強いデータの変化を定点観測します。アクションから数値に反映されるまでタイムラグがあることが多いので、しばらく様子見が必要です。
もし時間が経過しても数値が変化しない、またはわずかな変化しか見られない場合、原因の仮説やアクションを見直しましょう。
離職率をセグメントごとに調べた結果、以下の結果を確認できた
開発部門の社員が離職率が高い
上のセグメントについて人事データとの相関分析を行った結果、以下の結果を確認できた
・離職率と残業時間の相関が強い
・離職者の平均勤続年数が3年と短い
・開発部門の新入社員が増えた2年前から離職率が上昇している
上記の結果から、以下の仮説を立てた
・開発部門の若手社員が残業過多で疲弊している
以下のアクションプランを立てて実行した
・開発部門の若手向けのスキル研修
・残業削減のための制度設定(ノー残業デーなど)
離職率の変化を定期的(3ヶ月後、6ヶ月後など)に調べる
離職率と人事データの相関を調べるためには様々なデータが必要ですが、これらは複数のシステムに分散していることがほとんどです(社員情報はタレントマネジメントシステム、残業時間は勤怠管理システム、有給取得率はワークフローシステムなど)。そのため、
各人事システムからデータをダウンロードする
Excelで各データを突合する
Excel上で集計やグラフ化を行う
という工程を踏むことが多くなります。この1・2の作業を「前処理」などと呼びますが、データの種類や件数が増えるほど前処理の手間も大きくなります(一般的に、データ分析では8割の時間が前処理に費やされるとも言われています)。
3の集計・グラフ化についても、色々と切り口を変えてデータを見る度に作業をやり直す必要があります。例えば、
全社の残業時間データを見たい→次に部署別のデータを見たい→次に年代別のデータを見たい
離職率と勤続年数の相関を見たい→次に残業時間とエンゲージメントスコアの相関を見たい
のように色々な分析を行うと、集計やグラフ化だけでも大きな時間がかかります。
相関分析を行う流れは以下の通りです。
「ある指標と離職率の相関が強い」と仮説を立てる
その指標と離職率の相関係数を調べる
相関が強い指標が見つかるまで1〜2を繰り返す
離職率と相関の強い指標がなかなか見つからない場合、相関分析を何度も行う必要があり大変です。
上記を踏まえて、離職率を分析する際にはBIツールを導入することがおすすめです。
BIツールには色々な種類がありますが、人事データを分析する上では「汎用型」「人事特化型」の違いが重要です。汎用型とは人事データ以外(営業、マーケティングなど)の分析用途にも使えるBIツールであり、人事特化型とは人事データの分析に特化したBIツールです。
汎用型と人事特化型の違いを以下にまとめました。
汎用型 | 人事特化型 | |
|---|---|---|
設計コスト | 大 | 小 |
データの前処理コスト | 大 | 小 |
学習コスト | 大 | 小 |
柔軟な権限管理 | 難 | 易 |
様々なコストが小さく済むことから、離職率の分析を行うためには人事特化型のBIツールを使うことをおすすめします。
※汎用型・人事特化型について詳しく知りたい方は、人事データ分析におすすめのBIツールをご覧ください。
ここからはクラウドワークスで開発している人事特化型BIツールのHuman & Humanをご紹介させていただきます。
人事でよく使う色々なデータベースや計算式がデフォルトで用意されているため、設計コストやデータのコストを小さく抑えることができます。
また、他の多くの人事システムとAPI連携している他、データクレンジングのサポートもしてくれるため、データ分析の8割とも言われる前処理コストを大きく削減できます。
1クリックで色々な軸でデータを分析でき、複数軸のかけあわせもできます。
(例)部署別×男女別の離職率

散布図を使って複数の人事データの相関を調べることもできます。
(例)残業時間と離職率の相関

また、取り込んだ人事データを元に、人的資本開示の項目を自動集計してくれます。

特に離職率については
離職率の時系列での把握
様々なセグメント(部署、役職、等級など)での分析
他の人事データとの相関分析
などのレポート、グラフが標準で用意されており、簡単に分析できます。
相関ヒートマップという機能を使えば人事指標の相関係数を一覧で確認できるので、離職率と相関の強い指標を簡単に発見できます。
Human & Humanについて詳しく知りたい方は、機能や導入事例をご覧いただくか、以下より資料請求お願いいたします。製品を実際に触りたい方はトライアルにお申し込みください。
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