「プロレスのリング上で問題を解決・昇華する行為」には限界があると感じた話
はじめに
色々な事を考えてしまったんです、私は。
2025年3月、プロレスの試合中に負傷した高梨将弘。
2025年4月、前田日明がこの件を用いて今のプロレスラーを批判したことに対して、現役のプロレスラーが反論したこと。
プロレスラーもどきしかいない?笑
— 鷹木 信悟(SHINGO TAKAGI) (@Takagi__Shingo) April 12, 2025
X開いたらオススメで目にしたよ🤨
プロレスを舐めるな‼︎という言葉は改めてレスラーもファンも認識すべき事だとは思う
しかし、競技に怪我は付きもの
我々は決して暴力や危険を売りにしてるわけでは無いが、感情があるしアクシデントも起こりうる仕事だ…
セミリタイアしてたり、引退してる奴が
— 田村 男児 (@tamura__dan) April 11, 2025
ご意見番気取りになってるのを見ると
ああなりたくないなと思うよね
それ見て気を引き締めれるから
ありがとうと言いたい
高梨将弘は素晴らしいプロレスラーです。
— 藤田ミノル(Minoru Fujita) (@Tgurentaifujit) April 11, 2025
知らない奴は黙ってろ。
あ、おはようございます。
見てもない事を見たように知ったかで話す老害にはなりたくないと思う、老害初心者です。
— 石川修司(Shuji Ishikawa) (@g0925union) April 12, 2025
おはようございます。
引退後にお世話になった業界の足を引っ張る人間は信頼に値しない。
— OZAWA (@noah_taishi) April 12, 2025
目先の小銭に囚われて、愚行に走ってしまったのかもしれない。
かつてのノアと同じように。
そんなプロレス界の最先端は間違いなく俺。
Rolling Stoneの取材に答えてやったから、よく読んでOZAWAへの理解を深めよう。#noah_ghc https://t.co/VO2lpIxIlc
そして、今回のウナギ・サヤカ自主興行両国国技館大会で前田が登場した際、前田の目の前で受け身を取り、その様子を見た前田が改めて現役レスラーに対して説教したこと。
この事を手放しで称賛してる人。
なお前田日明氏には以前からオファーしており、状況が変化するも「よくぞ炎上してくれた」と #ウナギ・サヤカ 。スキャンダル起こしたタレントを番組に出して禊がせる「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」を思わせる手法が素晴らしい。#ウナギ絶好調 https://t.co/z9yi1SqP4A
— 橋本宗洋 (@Hassy0924) April 26, 2025
#ウナギ・サヤカ は今のプロレスを守り前田日明氏を救った。突っ込まれることが禊になる。他の誰にこれができたか。#ウナギ絶好調
— 橋本宗洋 (@Hassy0924) April 26, 2025
この件に本気で怒っている人達。
他人の怪我を利用しているプロレス興行とは金輪際関わりたくない。関わらない。
— 佐藤光留 (@hikaru310paipan) April 26, 2025
プロレスラーの怪我をネタにするのは最悪
— Hideki Suzuki (@Hideki55Suzuki) April 26, 2025
ネタにしていい事と悪い事の区別も出来なくなったんですかね…知名度あって集客力あるからって何してもいいんですか?
— 定アキラ (@JoeAkira1124) April 26, 2025
クソすぎるわ
ネタにしたらダメだ。
— 296Skunx (@296punx) April 26, 2025
私個人の意見としては、ここ数年のプロレス関連の話題で、ここまで不愉快と無神経さだけが感じられた事案は正直記憶に無いです。
前田日明は本件の炎上前から既に両国大会登場が決まっていたということなので、この記事では、前田が来たことや、目の前の選手が前田に何かしら言えなかったこと、観客が前田の来場を楽しんでいたことを批判したり揶揄したりするつもりは今回の記事において全くありません。
(とはいえ、現役選手からオファーを受けた上で、ああいう現役批判をYouTube上で言ってるのはスゴいと思った…)
単純に、前田を呼んで、やりたかったことがそれですか…?
本件に関する不愉快とか無神経だとかの感情には、私個人の好き・嫌いも幾分か含まれていることは否定できないでしょう。
事あるごとに私は「現地で起こってる情報が全て」と自説をnoteとかで主張してきたのですけれど、今回の記事は【見てもいない状態でニュースに不快感を示している行為】への矛盾も感じながら書いています。
でも、あの両国の件に関して、俺は流石に笑えなかったし、肯定的に捉えることも出来ない。
泣きながら高梨の無事を待ち続ける人が今もいることを考えれば、尚更その念は強くなりますし、笑いのツボ以前の問題として、形容しがたいモヤモヤしたものを抱いてしまうのです。
https://x.com/ddtpro/status/1903734407682474414
【プロレスのリング上で解決できる問題】には限度がある
「前田の言っていることは正しいんだ」
「あの発言は、前田だから何の問題もない」
「前田本人に向かって直接言った選手(ウナギ)が正しい」
前田が今のプロレスを批判したことに対して起きている支持の声に、私自身どこか違和感を拭いされないでいるのは、いずれも【負傷した高梨に対する見舞いや配慮の思い】がゴッソリ抜け落ちているように見えてしまうからです。
(この件に関しては、選手関係者も言及してるところですね)
高梨の試合を見てきた方なら御存知だと思いますが、酒をこよなく愛する選手でありながら、腹筋は陰影が出来るほど常に鍛えられた状態で、私がプロレスを見始めた2015年以降も、相手に攻撃を仕掛ける以上に相手の技を受けてきたことの方が多かった選手です。
また、過去に靭帯損傷や骨折で長期欠場したことはありますが、公表されている範囲でもケガにより欠場頻度が多いという印象は個人的に無いです。
ましてや、丸め込みと関節技を活かした高梨の試合スタイルは、危険技と呼ばれる類いの激しい攻防が介在しない訳です。
今回の高梨の事故で私が感じたのは、「現役バリバリで受け身も多く取っているような名手であっても、重いケガをする」というプロレスの怖さです。
それらの事実が無視された状態で、さも高梨が「受け身も取れていないからケガをした」という偏見と論調で語られてしまう風潮が、私はホントに悔しくてならないんですよ。
そんな時にウナギ・サヤカ自主興行で、前田日明の目の前で現役選手が受け身を取り、現役選手が反駁して大団円みたいな感じで終わらせてる雰囲気をニュースやTLで見た時に私は思ったんです。
結局のところ、【プロレスのリング上で解決・昇華できる問題】には限界や限度があるって。
例えば、予期せぬケガでタイトルマッチが終わった時に再戦を組むことも、選手の傷に敢えて触れることも、ある意味では「プロレスの事象をリング上で解決しようとしている」ことなんだと私は考えます。
直近だと、サイン会でファンから「お前を泣かせに来た」と罵倒された上谷沙弥が、味方選手を裏切ってヒールターンした際に「お前を泣かせに来た」というフレーズを使ったことも、『サイバーファイトフェスティバル2022』で中嶋勝彦にKO負けを喫した遠藤哲哉が、プロレスリング・ノア参戦時に「人生かけてノアを潰す」と宣言したこともそうでしょう。
でも、上谷のケースも遠藤のケースも、悔しさを一番抱えた当事者本人だからこそ出来たことであって、今回のウナギのように、団体とか関係ない第3者が面白おかしく弄って解決に向かわせることは出来ないと思うんですよね。
そもそも、当事者が受けた屈辱を、当事者が無理にプロレスのリング上に落とし込む必要なんて無いし、落とし込むことが出来ない人をダサいだなんて全く思わない。
だって、当事者でも扱うのがセンシティブな話題だと私は思うからです。
高梨の事故があった際も、リング上の試合を通じて本件に触れることがありました。
高梨の事故直後に行われた2025.3.23DDT大阪大会のメインイベントで、クリス・ブルックスとHARASHIMAがタッグマッチで対峙した時の事です。
3月23日、大阪・大阪市都島区民センターで「なにわ闘⼠2025」が開催。メインイベントではKO-D無差別級王者のクリス・ブルックスと、4・6後楽園大会で挑戦する高鹿佑也がタッグマッチで前哨戦を行った。
前哨戦ではあるが、クリスにとっては3・20後楽園大会での高梨将弘戦以降、最初の試合。どこか元気がない様子のクリスだったが、パートナーの正田壮史とセコンドのアントーニオ本多、そして対戦相手の高鹿とHARASHIMAの熱さに触れて徐々にいつものクリスの闘い方に。
しかし正田が高鹿を場外に連れ出し、クリスが絶好のチャンスでプレイングマンティスボムの体勢に入った瞬間、苦悶の表情を浮かべたクリスはHARASHIMAを持ち上げることなくガックリとうなだれてしまう。
するとHARASHIMAは怒りの形相で強烈な張り手の連打、ガクッとヒザをついたクリスを見下ろし「どうしたクリス! DDTのチャンピオンなんだろ!」と叱咤。立ち上がったクリスは強烈な張り手を返すと、高梨の得意技である鼻つまみチョップから意を決してプレイングマンティスボムを決めて勝利した。
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— WRESTLE UNIVERSE (@W_UNIVERSE2020) March 26, 2025
📢3.23 DDT 大阪大会、VOD配信スタート‼️
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『なにわ闘⼠2025』
【登録・視聴はこちら👇】
▶️ https://t.co/DSXYw3npZK
🔥メインイベント・スペシャルタッグマッチ🔥
クリス・ブルックス & 正田壮史 🆚 高鹿佑也 & HARASHIMA#ddtpro #wrestleUNIVERSE
試合終盤、HARASHIMAに必殺技のプレイングマンティスボムをかけようとするも、高梨が負傷するキッカケになった技という事から、極めるのを逡巡してHARASHIMAにエルボーをぶつけるクリス。
そのクリスの顔面を複数発平手で張り倒して、クリスを叱咤したHARASHIMA。
「おい!チャンピオンどうした! チャンピオンだろ? 今のチャンピオンそんなか? どうした? 自信持てよ! 来いよ、来いよクリス!」
この一言で迷いを振り切ったクリスは、プレイングマンティスボムでHARASHIMAを下し、試合に勝利したのでした。
HARASHIMAの𠮟咤と、今回のウナギの件で決定的に異なるのは、高梨の件に対する思いやりだけでなく、本件を美談にしてるかどうかも大きいと思います。
前者の場合、HARASHIMAの行動とクリスの必殺技に、セコンドのアントーニオ本多や観客、クリス本人が涙したものの、それはクリスに前を向かせたHARASHIMAの"救済"に対するものであり、決して美談ありきで実行されたことではない。
後者は、事前にオファーしてた前田に向けて、受け身の流れをやって、「前田の目の前でやってのけたウナギすごい」と言われたいだけじゃん。「美談にしたいんだ」みたいな。
リング上で話題を回収できるケースは、当事者やその関係者が因縁や事象を回収するから受容できるのであって、第3者がやっても(後述するような)"ヒーローごっこ"の域を出ないんですよね、どこまで行っても。
その差は今回の件で感じました。ネタにしてることへの不快感は、そこにあります。
まとめ
結局、今回の件で何が一番酷いと私は感じたのか?
それは、今回の【選手の怪我】のように、苦しい思いをしている人がいる非常にセンシティブな話題を、試合の当事者でない人が「本人の目の前で言ってやった」という気持ち良さを得るための"オカズ"として消費され、本件がウナギの"ヒーローごっこ"として利用・支持されてしまう点です。
前田の来場は今回の炎上案件の前から既にオファー済だったということですが、「よくぞ炎上してくれた」とバックステージで語ってしまうウナギのコメントと、それをエンタメとして持て囃す一部関係者の感覚に、私は得体の知れない気持ち悪さを感じてしまいました。
そこに果たして、人としての心はあるのかなと。
禊って前田日明さんって何か悪いことをやったんですか?「ビートたけしのお笑いウルトラクイズ」(ある意味で権威)を例えに出してくるセンスが「アキラ兄さん」呼び問題につながってくる。キャラ化による矮小 pic.twitter.com/YpwPrTbXHK
— ジャン斉藤 (@majan_saitou) April 26, 2025
危機感を持って主張していたはずの持論「体ができているレスラーがいない」を自らセクハラ発言で無効化する行為と、それを伝える側が普段の論調と全く違って全然触れないという事実は、どちらも見ていて虚しさしかない。どちらもその程度だったのか。
— 高崎計三 (@solitario_k) April 26, 2025
翌日に行われるスターダムの引退マッチを引き合いに「あっちは中野たむと上谷沙弥の敗者引退マッチなんて、全員が不幸になる試合やるみたいだからさ。私はその前日に、プロレスファン全員を幸せにして『26日の方が幸せだったね』って言わせる、そんな歴史的な日にする。」と言った手前、このやり取りで不快にさせてる矛盾は一体何なのかな。
「よくぞ炎上してくれた」というウナギの発言も、それをライター側から大絶賛してる橋本宗洋みたいな人の言動も、負傷した高梨を思う気持ちが少しでもあるならば、とても出てくるような言葉には思えないんですよね。
どうして、そんな言葉が出てくるのですか?
それは、人の事故を炎上商法とかコンテンツとかの弾程度にしか捉えていないからじゃないですか?
自己顕示欲を充足させる話題なら何でも良いんですか?
そういう一部の貴方達による、人心を失った行動が一番危険だと、俺は警鐘を鳴らしたいです。
コメント
1今回の件について、初めて共感できる文章を読んだ気がします。
書いてくださって、ありがとうございます。
私は、クリスやDDTの選手達を応援し続けながら、高梨選手の復帰を待ち続けようと思います。