- ホーム
- 特集・話題
- 地域生活を支える精神科医療
- (1)治して支えるこころの医療 慈圭病院院長 武田俊彦
(1)治して支えるこころの医療 慈圭病院院長 武田俊彦
こころの病を持ちながら社会で生活すること、そこには独特の問題点が潜んでいます。その中でも重要な問題が、疾病と障害の併存の問題です。両者の関係を火山活動に例えるなら、疾病は火山が活発に噴火している状態です。噴火で流れ出た溶岩で周囲の地形が変わってしまった状態、これが障害です。
火山活動が終わっても、その後遺症といえる負の影響が周辺地域に静かに長期間にわたって続きます。疾病と障害の併存の状態とは、噴火を繰り返す活火山に似ています。
こころの病では、疾病治療が一段落した後も、意欲低下や敏感さ、物忘れなどの症状が長らく障害として残り、生活に支障を来すことも少なくありません。さらに、ささいなストレスで症状が再び燃え上がる再燃脆弱(ぜいじゃく)性が残る場合も珍しくありません。そして、障害は生きづらさを引き起こしますから、再燃脆弱性を刺激します。そのために、疾病が一段落した後も、残った症状や病状再燃のコントロールのために継続した治療が必要な場合がとても多いのです。
さて、このようなこころの病に対しては、その時々の病状に応じて、保護要素と促進要素がバランスよく配合されることが重要です。
保護要素とは、病の当事者を守り、病の苦痛から救い出すことです。症状を抑え込む治療と再燃脆弱性対策、そして十分な休息が必要です。
促進要素は、当事者が希望する社会的生活ができる方向に支援することです。個人の希望は多種多様でそれに伴うストレスもさまざまです。保護要素と促進要素はしばしば対立しますから、こころの病の状態に合わせて両者を適切に配分することが重要です。
慈圭病院では、このようなこころの病の特性に合わせてさまざまな治療システムを用意してきました。
1980年には通所型のリハビリ施設である精神科デイケアを開設し、82年から単身の当事者の居住支援施設の設置を開始しました。これらは、促進要素だけでなく、保護要素も加味された施設です。93年には訪問看護部を設置しました。これは自宅と病院を直接つなぐ、保護要素主体のサービスです。2014年に24時間の訪問サービスを増設してからは促進要素も充実化させています。
保護要素の主体は、外来診療や入院診療です。社会生活を支えるためには、休日や夜間の対応も欠かせません。慈圭病院は16年から精神科救急医療にも取り組んでいます。このように医療サービスは多岐にわたり、しかも場合によっては病院外の施設や制度の利用も必要です。それらを円滑につなぎ合わせる役目が精神保健福祉士です。彼らには、それぞれのサービスや制度の理解だけでなく、個々の利用者の希望や、保護要素の必要性の理解も欠かせません。
今回のシリーズでは、慈圭病院の救急急性期治療システム、精神科デイケア、訪問医療体制、精神保健福祉士による医療生活支援についてご紹介します。
◇
慈圭病院(086―262―1191)
たけだ・としひこ 三重県出身。岡山大医学部を卒業後、同大大学院医学研究科に入学。1989年に大学院修了後、神戸西市民病院、公益財団法人慈圭会慈圭病院に勤務。2019年から現職。専門は、成人精神障害と精神科リハビリテーション。
※登場する人物・団体は掲載時の情報です。
火山活動が終わっても、その後遺症といえる負の影響が周辺地域に静かに長期間にわたって続きます。疾病と障害の併存の状態とは、噴火を繰り返す活火山に似ています。
こころの病では、疾病治療が一段落した後も、意欲低下や敏感さ、物忘れなどの症状が長らく障害として残り、生活に支障を来すことも少なくありません。さらに、ささいなストレスで症状が再び燃え上がる再燃脆弱(ぜいじゃく)性が残る場合も珍しくありません。そして、障害は生きづらさを引き起こしますから、再燃脆弱性を刺激します。そのために、疾病が一段落した後も、残った症状や病状再燃のコントロールのために継続した治療が必要な場合がとても多いのです。
さて、このようなこころの病に対しては、その時々の病状に応じて、保護要素と促進要素がバランスよく配合されることが重要です。
保護要素とは、病の当事者を守り、病の苦痛から救い出すことです。症状を抑え込む治療と再燃脆弱性対策、そして十分な休息が必要です。
促進要素は、当事者が希望する社会的生活ができる方向に支援することです。個人の希望は多種多様でそれに伴うストレスもさまざまです。保護要素と促進要素はしばしば対立しますから、こころの病の状態に合わせて両者を適切に配分することが重要です。
慈圭病院では、このようなこころの病の特性に合わせてさまざまな治療システムを用意してきました。
1980年には通所型のリハビリ施設である精神科デイケアを開設し、82年から単身の当事者の居住支援施設の設置を開始しました。これらは、促進要素だけでなく、保護要素も加味された施設です。93年には訪問看護部を設置しました。これは自宅と病院を直接つなぐ、保護要素主体のサービスです。2014年に24時間の訪問サービスを増設してからは促進要素も充実化させています。
保護要素の主体は、外来診療や入院診療です。社会生活を支えるためには、休日や夜間の対応も欠かせません。慈圭病院は16年から精神科救急医療にも取り組んでいます。このように医療サービスは多岐にわたり、しかも場合によっては病院外の施設や制度の利用も必要です。それらを円滑につなぎ合わせる役目が精神保健福祉士です。彼らには、それぞれのサービスや制度の理解だけでなく、個々の利用者の希望や、保護要素の必要性の理解も欠かせません。
今回のシリーズでは、慈圭病院の救急急性期治療システム、精神科デイケア、訪問医療体制、精神保健福祉士による医療生活支援についてご紹介します。
◇
慈圭病院(086―262―1191)
たけだ・としひこ 三重県出身。岡山大医学部を卒業後、同大大学院医学研究科に入学。1989年に大学院修了後、神戸西市民病院、公益財団法人慈圭会慈圭病院に勤務。2019年から現職。専門は、成人精神障害と精神科リハビリテーション。
(2024年08月20日 更新)