正しい型を学ぶことの重要性
ここ最近、会計事務所の採用担当としてちょこちょこ面接をやっています。
色々な人と面接で話すと、世の中いろんな人がいるな〜と感じると同時に、しっかりと職場で正しい型を学ぶ、正しい経験を積むことの重要性を痛感させられます。
かつ、これはその人のファーストキャリアでの経験に強く依存するなという感覚を持っています。22歳前後で最初に就職する会社で、何を学び、何を上司から指導され、どんな経験を積んだのか、がその後の仕事人生に大きな影響を与えるということになります。(今回はそんな話を書こうと思います。)
つまり、ファーストキャリアで正しい経験を積めたかどうか、がその後の人生を決める、と言っても過言では無い、ということかと思います。もちろんその人の気持ち次第で、何歳からでも変わることは可能でしょうが、多くの人にとっては難しい事でしょう。
この正しい経験、というのはもちろん職種によって異なりますが、ホワイトカラーの頭脳労働に絞った場合、概ねその時代にあったやり方で、正しく思考し、正当な指導を受けながら、一般的な社会常識(業界慣行含む)を学ぶ、ということなのかなと思っています。
その時代にあったやり方で
どんな職業・技術でも、時代の変遷があります。10年前、当時最先端だったやり方は、今の時代にはそぐわないやり方かもしれません。今の時代にあった、今の時代における最も最適化されたやり方を学ぶ必要があります。
地方の会社に就職された方によく観測されますが、古いやり方を教わってそれを数年かけて身に着けた、という人がいます。地方にいると、最先端のやり方を取り入れるのが遅くなる傾向にあります。都内と比較して、競争環境が緩やかであるからでしょうか。
資本主義における適切な競争環境にいれば自然と淘汰されるべき古いやり方を貫く会社というものが、地方では競争環境が機能せず生き残ってしまいます。その結果、その会社に入社した若者が時代に取り残された古い技術を学ぶことになります。そんな方が都内の企業に転職しようとすると、まだそんなことやってるの?(まだ紙でやってるの?みたいな)という状況になり、不採用になり、古いやり方を当たり前とする環境から抜け出せず、負の連鎖を生むことになります。
そして他の部分にも共通しますが、最も問題なのは、当人にとってその時代から取り残された古いやり方が、この時代における「当たり前」だと思ってしまうことです。ファーストキャリアの会社で学ぶことは、当人にとって「当たり前」を形成する重要な基準となります。この当たり前の基準が低いと、これを後々修正することは結構大変です。最初に入った環境が、生ぬるいと、少しでも厳しい環境に行ったときに拒絶反応を起こしてしまいます。
正しく思考し、正当な指導を受けながら
正しく思考する、これも非常に重要です、というか、まず思考することが重要だと思っています。
今の時代、思考せずに回ってしまう仕事がかなり多くなってしまいました。上司からの具体的な指示、きちんと整備されたマニュアル、これらは会社としては素晴らしい運営がなされている証です。なぜなら、誰が入ってきても(どんなポンコツでも)業務が回るように設計することは、属人性を排除し、優秀な人間に依存しなくなるために非常に重要であるからです。
ただし、裏を返すと、その環境に身を置いている人間は、優秀な人間になることは難しい、ポンコツでも回るように設計された業務だけをこなしていれば人はポンコツになる、ということです。
頭を使わなくてもマニュアルをなぞればできてしまう仕事、わからなくなっても聞けばすぐに回答が返ってくる上司、期限に間に合わなくても最終的には上司が巻き取ってくれる素敵な職場、これらは個々人のキャリアに焦点をあてるとむしろ悪です。
そして、業務にマニュアルが整備されておらず、自ら調べながら取り組む仕事、わからなくなってもそんな簡単には答えを教えてくれない上司、自分が期限までに終わらせなければ炎上してしまうプロジェクト、誰も助けてくれない職場、これらは個々人のキャリア・成長に焦点を当てた場合はむしろ最高の環境です。
そして、正しく指導を受ける、これも重要です。上にも書きましたが、答えをすぐ教えてくれる、間に合わなかったら簡単に巻き取ってくれる上司は、実質指導を放棄しています。業務が回るようにコミュニケーションを取ることは指導ではありません。業務連絡です。でも業務連絡に留めるのが一番楽です。人を指導するなんてメンドクサイことです。
指導とは、個人の成長を促進するコミュニケーションです。答えをすぐ教えるのではなく、対話をしながら自らに考えさせ、適切にコミュニケーションを取り、育てていくことが重要です。実際にやるのはとても難しいことは勿論承知しており、私も社内のメンバーを正しく指導できていると胸を張って言うことは出来かねます。ただ、それなりに正しい指導を受けた経験はあり、それを活かして指導にあたっているつもりです。
こちら、正しい指導を受けたことが無ければ、人に正しい指導をすることは難しいです。ファーストキャリアで選んだ会社で、上司と部下のあるべきコミュニケーションを学ぶ場として、どんな経験が出来るか、が後々重要になるでしょう。
最後に
ファーストキャリアの重要性についてつらつらと私見を述べました。
まだ若いのに、ファーストキャリアの選択を誤っているように見える人を見ると、とても勿体ない気持ちになってしまいます。(お節介なのかもしれません)
当たり前の基準値が低い世界線に一度入ってしまうと、なかなか抜け出すことは困難です。最初に基準が高い所に入社してしまうことが最も楽に自分を成長させる方法です。
それでも、今の生ぬるい環境を捨て、覚悟を決め、基準値の高い世界線にちゃんと行きたい、1からやり直したい、と強く願うのであれば、ちゃんと正しい世界に引き戻してあげたいなとも思う、そんな面接でした。精神的な負荷はかなり高いだろうけどね。
おしまい


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