26日午後10時ごろ、那須塩原市の東北自動車道の上り線で、逆走した乗用車が走ってきた車と接触事故を起こしたあと、3キロ近く走行してから別の車と正面衝突し、逆走した車を運転していた宇都宮市峰町に住む前原勇太さん(42)と、衝突された車を運転していた岩手県北上市に住む平岡勝利さん(56)が死亡しました。
さらに、この事故による渋滞で大型トラックなど6台が関係する事故が起きて、追突された車に乗っていた埼玉県川越市に住む長嶋弓子さん(60)が死亡したほか、一連の事故で10人がけがをして、このうち2人が骨盤や腰の骨を折る大けがをしました。
警察は、追突事故を起こした岩手県陸前高田市に住むトラック運転手、炭釜秀一容疑者(54)を過失運転致死傷の疑いで逮捕しました。
警察による現場検証で、逆走した車は走行車線で乗用車と接触したあと、追い越し車線で正面衝突していたほか、ブレーキ痕が残されていなかったことも分かり、減速せず次々と事故を起こした可能性があるということです。
26日午後10時ごろには最初の接触事故から500メートルほど離れた黒磯板室インターチェンジ付近で車が逆走しているとの通報が相次いで寄せられていたということで、警察は、車はこのインターチェンジから高速道路に入り、3キロ余りにわたって逆走したのではないかとみています。
警察は高速道路やインターチェンジの監視カメラの映像を確認するなどして、逆走に至る経緯や事故の状況をさらに詳しく調べています。
東北道3人死亡 逆走車が減速せず衝突か ICの構造的危険指摘も
26日夜、栃木県那須塩原市の東北自動車道で起きた、3人が死亡、10人がけがをした車の逆走事故で、警察による現場検証の結果、逆走した車による目立ったブレーキ痕が残されていなかったことが分かりました。警察は、逆走した車が減速せず別の車に次々と衝突した可能性があるとみて、状況を詳しく調べています。
事故現場を通行した車から撮影した映像
事故が起きた栃木県那須塩原市の東北自動車道の上り線で27日午前1時半ごろに撮影された映像では、まず、大型トラックなどが関係した3件目の事故とみられる現場の様子がうつっていて、ワゴン車や乗用車など複数の車両が激しく壊れ、先頭にトラックが止まっている様子が確認できます。
そしてこの事故現場から1分半ほど走行したあと、2件目の逆走事故とみられる現場がうつっています。映像からは、原形をとどめないほどに激しく壊れた乗用車1台と、フロント部分が激しく壊れた乗用車2台が止まっている様子が確認できます。
この映像は車のダッシュボードに固定したカメラで走行中に撮影したということで、映像を提供してくれた視聴者は「白河インターチェンジの手前で『逆走車あり』の警告表示が出ていて、那須インターチェンジを過ぎたあたりから渋滞が起きていた。その後、3時間ほど停車したあとに動画を撮影した」としています。
そして「このような事故を見ると、いたたまれない気持ちになります。栃木県内では去年も逆走による死亡事故が発生しているので、いつ自分が巻き込まれるのかという怖さでいっぱいです。悲惨な交通事故の加害者にも被害者にもならないよう気をつけなければいけないと感じました」としています。
黒磯板室ICの構造は
栃木県那須塩原市にある東北自動車道の黒磯板室インターチェンジは、料金所を通過すると、まず福島方面に向かう「下り線」と東京方面に向かう「上り線」の分岐点があります。
東京方面に進むと、その先に信号機があるT字路の交差点があり、ここをさらに「右折」すると「上り線」の本線に合流できます。
付近の路面の舗装は赤く色分けされていて、矢印や標識で右折するよう案内しています。
しかし、誤って「左折」すると、「上り線」の本線に逆走する形で合流してしまいます。
このため交差点には「進入禁止」と書かれた看板が立てられていますが、バーなどは設置されていないため、構造的には「左折」が可能な状態になっています。
東北道の逆走事故 去年も相次ぐ
栃木県内の東北自動車道では、去年8月、2日連続で逆走事故が起きています。
去年8月15日、那須塩原市内を走る東北自動車道の下り線で、逆走してきた軽乗用車と乗用車が正面衝突し、双方の車の運転手が死亡したほか、乗用車に乗っていた当時9歳と7歳の子どもが大けがをしました。
現場は今回事故があった黒磯板室インターチェンジに近い片側2車線の道路で、追い越し車線で正面衝突したということです。
翌日の8月16日には、栃木市内を走る東北自動車道の上り線で、80代のドライバーが運転する乗用車が逆走してオートバイと衝突する事故が起き、オートバイを運転していた30代の男性が足に大けがをしました。
- 注目
専門家に聞く なぜ逆走事故は起きたのか
自動車事故に詳しい日本自動車ジャーナリスト協会の菰田潔会長に話を聞きました。
Q. 東北自動車道の上り線で3人が死亡する逆走事故が起きました。どんな原因が考えられますか。
A. もともと福島方面に向かう「下り線」に行きたかったのに、インターチェンジの最初の分岐点で間違えて「上り線」に向かう道に進んでしまった可能性が考えられる。このため、次のT字路を左折すれば「下り線」に合流できると思い込んでしまったのではないか。案内標識はあるが、焦って走っていると、こういう事態が起きてしまう。
Q. 逆走した車が進入した可能性があるインターチェンジは、本線に逆走する形で合流することが構造的に可能な状態になっていました。
A. 私は全国あちこちを車で走っているが、同じ構造のインターチェンジは結構多く、以前からとても危険だと思っていた。高速道路の中に車が交差する場所や信号機があること自体がおかしいと思っている。本来なら立体交差にすべきところを、コストダウンのために平面交差にしたと考えられる。
Q. 高速道路での逆走事故は各地で相次いでいます。事故を防ぐためにどんなことが必要ですか。
A. 高齢者の逆走事故が多く注目されているが、年齢に関係なく道を間違えてしまうとパニックになり、ふだんはやらないことをやってしまう。立体交差にするのは非常にお金がかかるが、道路の構造はなるべく単純にしたほうが、安全になると思っている。例えば「ラウンドアバウト」と呼ばれる信号機のない円形交差点にして逆走が発生しにくい仕組みを導入していくことも必要なのではないか。