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バンクシーの「落書き」はなぜ特別なのか

福永方人・ロンドン支局長
公園の壁に描かれたバンクシーのグラフィティ=ロンドンで2025年4月13日、福永方人撮影
公園の壁に描かれたバンクシーのグラフィティ=ロンドンで2025年4月13日、福永方人撮影

  世界的に注目される作品たちが、不思議なほど街の景色に溶け込んでいた。独特の存在感を漂わせながら――。

 私は4月にロンドンに赴任した。まず確かめたかったことの一つが、正体不明の芸術家バンクシーのグラフィティ(落書き)がどんな場所に、どのように描かれているのかということである。

 英西部ブリストル近郊出身の50歳前後の男性だといわれるバンクシーは、特にブリストルやロンドンに多くの作品を残してきた。自身のウェブサイトやインスタグラムに作品をアップするが、描いた場所は明かさない。そのためファンらが場所を特定し、分布図などをインターネット上に公開している。私はそうした地図を頼りに、地下鉄やバスを乗り継ぎ、これまでに8作品を見に行った。宝探しのようでわくわくした。

 モノクロで繊細なタッチが特徴の彼の作品は、時に予想外の場所に現れる。専門学校の外壁の下部に小さく描かれたものもあれば、レストランのテラス席の壁に収まっているものもある。グラフィティが「ストリートアート」とも言われるゆえんだ。

 バンクシーの壁画は、他のグラフィティライターに上書きされたり壁ごと盗まれたりして、消失しているものが少なくないが、残っている作品の多くはプラスチックのパネルで覆われている。建物の所有者や自治体による保護措置だ。もはや落書きではなく、一種の「アート」として認知されていることがうかがえる。ただ、写真を撮る私に、「こんな落書きがアートなのか、俺にはよくわからないな」と吐き捨てるように言う…

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ロンドン支局長

秋田支局、社会部、福岡本部、ロサンゼルス支局長などを経て2025年4月から現職。福岡時代は沖縄取材も担当した。ポッドキャスト「今夜、BluePostで」の木曜日パーソナリティー。元球児で、映画とヒップホップが好物。