世界的に注目される作品たちが、不思議なほど街の景色に溶け込んでいた。独特の存在感を漂わせながら――。
私は4月にロンドンに赴任した。まず確かめたかったことの一つが、正体不明の芸術家バンクシーのグラフィティ(落書き)がどんな場所に、どのように描かれているのかということである。
英西部ブリストル近郊出身の50歳前後の男性だといわれるバンクシーは、特にブリストルやロンドンに多くの作品を残してきた。自身のウェブサイトやインスタグラムに作品をアップするが、描いた場所は明かさない。そのためファンらが場所を特定し、分布図などをインターネット上に公開している。私はそうした地図を頼りに、地下鉄やバスを乗り継ぎ、これまでに8作品を見に行った。宝探しのようでわくわくした。
モノクロで繊細なタッチが特徴の彼の作品は、時に予想外の場所に現れる。専門学校の外壁の下部に小さく描かれたものもあれば、レストランのテラス席の壁に収まっているものもある。グラフィティが「ストリートアート」とも言われるゆえんだ。
バンクシーの壁画は、他のグラフィティライターに上書きされたり壁ごと盗まれたりして、消失しているものが少なくないが、残っている作品の多くはプラスチックのパネルで覆われている。建物の所有者や自治体による保護措置だ。もはや落書きではなく、一種の「アート」として認知されていることがうかがえる。ただ、写真を撮る私に、「こんな落書きがアートなのか、俺にはよくわからないな」と吐き捨てるように言う…
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