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財務省解体デモのインフルエンサーは過去に偽情報や誤解を招く投稿をしたことが多い

鳥海不二夫東京大学大学院工学系研究科教授
貝と鯛提供:イメージマート

結論

財務省解体デモに関する投稿をポストしたトップ100インフルエンサーの52%が,過去に偽情報や誤解を招く投稿を行ったことがあることが分かった.

財務省解体デモ

財務省の前で財務省の解体などを訴えるデモが開かれているようです.このデモのきっかけの一つとして,X上で「財務省解体」というキーワードが広まったことがあるようです.

実際「財務省解体」が含まれるX上の投稿数を分析すると以下のようになりました.2月くらいから徐々に拡散が広まっていたようです.

財務省解体を含むポスト数(筆者作成)
財務省解体を含むポスト数(筆者作成)

ところで,このようなポストの投稿者を見ていると妙に過去にコミュニティノートが付いたことのあるアカウントが多いことに気づきました.コミュニティノートは誤解を与えるような情報のポストに付与されるものですので,過去にコミュニティノートがついているアカウントは過去に誤解を与えるポストを投稿したことがあると考えられます.

そこで,財務省解体デモにおいて,X上で特に拡散されたインフルエンサートップ100について過去どのくらいコミュニティノートが付いたアカウントなのかを調べてみました.

コミュニティノート

コミュニティノートとはXでより正確な情報を入手できるようにすることを目的に作られた機能で,誤解を招く可能性があるツイートにXユーザが協力して背景情報を提供することができます.ただし,コミュニティノートは単に付加しただけでは表示されず,他のコミュニティノートユーザによって「役立つノートである」と評価されなければ表示されません.一定数のユーザに役立つと評価されると「役に立つノート」として,ポストの下に表示されるようになります.一方で,多くのユーザに「役に立たない」と判断されれば「役に立たないノート」として表示されません.どちらでもない場合は「評価待ち」としてやはり表示されないことになります.以上の機能によって,コミュニティノートがついていればその情報は偽情報や誤解を招く情報である可能性が高いと多くの人が認定したことを意味します.というわけで,「役立つ」コミュニティノートが付いたアカウントは,過去に偽情報や誤解を招く情報を投稿したことがあるアカウントということができます.

データ

まず,2025年3月10~15日までに投稿された「財務省解体,財務省,ザイム真理,ザイム」のいずれかを含む43,963アカウントによる98,303ポストを収集しました.

これらのポストを投稿したアカウントの内,被リポスト総数が多い上位100アカウントを取り出してみました.これらのアカウントの被拡散数は以下の通りです.最も多いアカウントで30個のポストが合計63,729回拡散されていました.

拡散数上位アカウントの合計拡散数(筆者作成)
拡散数上位アカウントの合計拡散数(筆者作成)

上位100インフルエンサーが起点となった拡散は892,550件で,拡散全体の75.6%でした.財務省解体に関する情報拡散の3/4がこの100アカウント発だと思ってよいでしょう.

インフルエンサーとコミュニティノート

これらの上位100アカウントがどのくらいコミュニティノートをつけられたのかを調べた結果がこちらです.それぞれについて,「Helpful(役立つノート)」「Needs more ratings(評価待ち)」「Not Helpful(役に立たないノート)」の三つの状態毎に分けてカウントしてみました.

拡散数上位アカウントのコミュニティノート付与数(筆者作成)
拡散数上位アカウントのコミュニティノート付与数(筆者作成)

この結果から,上位100アカウントについては,かなり多くのコミュニティノートが付与されていることが分かりました.平均すると1アカウントあたり83.7件のコミュニティノートが過去に付与されたことがあり,1アカウントあたり14.59件のコミュニティノートが役立つノートと評価されていたことが分かりました.付与が最も多いアカウントで1228件ものコミュニティノートが付与されて,表示件数が最も多いアカウントは180件のコミュニティノートが表示されています.

比較のために,「赤いきつねのCMの非実在型炎上」の件で集めたデータについても,同様に拡散数の多いトップ100アカウントについてコミュニティノートの件数を調べてみました.その結果がこちらです.

「赤いきつねのCMの非実在型炎上」に関する拡散数上位アカウントのコミュニティノート付与数(筆者作成)
「赤いきつねのCMの非実在型炎上」に関する拡散数上位アカウントのコミュニティノート付与数(筆者作成)

こちらでは,拡散数上位のアカウントにはほとんどコミュニティノートがついておらず,最も多くついていたアカウントでトータル377件,表示が47件でした.

また,上位100インフルエンサーのコミュニティノート付与率(1回でもコミュニティノートが付いた割合)を比較した結果が以下の通りです.

コミュニティノート付与率(筆者作成)
コミュニティノート付与率(筆者作成)

財務省解体デモに関しては上位100インフルエンサーの内70%がコミュニティノートを付与されたことがあり,52%が実際に表示されるコミュニティノートを付与されていたことが分かります.

一方赤いきつねの方はコミュニティノートが付与されたことがあるアカウントが36%,表示されたことがあるアカウントが14%と,大きな開きがあります.

この結果から,財務省解体デモに関するインフルエンサーは過去にコミュニティノートを付与されている確率が高く,かつ表示された,つまり「誤解を招くポストを行った」確率が高いといえそうです.

コミュニティノートが過去に付与されたからといって,そのアカウントが信用できないというわけではないですが,拡散の75%の起点となった上位100インフルエンサーの半数以上が過去に誤解を招くと認定された投稿をしたことがあることには,一定の意味がありそうです.

おまけ

ちなみに,2025年03月12日現在,過去にコミュニティノートが付いたことのあるアカウントは215,302存在し,そのうち「役立つノート」として表示されたことがあるアカウントは35,845あります.じつは,役立つノートが過去につけられたことのあるアカウントはこれくらいしかいないんですよね.Xの月間アクティブユーザ数は5億7000万人と言われていますので,役立つノートがつけられたアカウントはその0.00006%程度しかいないのです.

一方,財務省解体デモ関連のポストを行ったアカウントの内,コミュニティノートが役立つとして表示されたアカウントは622で関連ポスト投稿アカウントの1.4%でした.これは,役立つコミュニティノートをつけられた全アカウントの1.7%が財務省解体デモ関連ポストを行っている計算になります.Xには日本以外のアカウントも多く存在する(というかそっちの方が多い)ことを考慮するとなかなかな割合と言えそうです.

なお,今回は時間短縮のため,拡散したアカウントについては分析を行っていません.拡散データを収集するのには時間がかかるんですよね・・・

そのうちデータを収集出来たらまた分析をしてみたいと思います.

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ありがとうございます。
東京大学大学院工学系研究科教授

2004年東京工業大学大学院理工学研究科機械制御システム工学専攻博士課程修了(博士(工学)),2012年より東京大学大学院工学系研究科准教授,2021年より現職.計算社会科学,人工知能技術の社会応用などの研究に従事.計算社会科学会副会長,情報法制研究所理事,人工知能学会前編集委員長.人工知能学会,電子情報通信学会,情報処理学会,日本社会情報学会,AAAI各会員.「科学技術への顕著な貢献2018(ナイスステップな研究者)」

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