旅行が一瞬で台無しになる…海外紙が警告「アメリカの空港で続く"スマホ検査"の異様な実態」
電源オフまたは再起動の後、まだパスコードを一度も入力していないiPhoneは、最もセキュリティの高い状態にある。このモードはBFU(Before First Unlock)と呼ばれ、一時的に顔認証・指紋認証を受け付けなくなり、パスコードでのみ解錠できる。 さらに、ほぼすべての内部データがファイル単位で暗号化されており、専門の機器を使った場合でもデータの抽出が困難となる。なお、一度でもパスコードを入力すると、AFU(After First Unlock)と呼ばれる通常のセキュリティレベルに戻る。 Androidも設定アプリから指紋認証や顔認証を無効にできる。Androidは近日、3日間ロック状態が続くと自動的に再起動を行い、高いセキュリティレベルの状態へ移行する機能の実装を予定している。 ■入国目的と一致しない情報がねらわれる このように入念な対策が推奨されている理由は、特にやましいことがなかろうと、一方的な嫌疑を掛けられるケースが多発しているためだ。 移民弁護士のマイケル・ワイルズ氏はニューヨーク・タイムズ紙に、「(仕事用ソーシャルメディアの)LinkedInを『求職中』のステータスにしていて、それだけで拘束された人もいます。ディズニーランドや結婚式に行くだけではない(就労目的である)という証拠になるのです」と説明している。 同紙によると、入国審査官は主に、申告された入国目的と実際の行動が一致するかを確認している。観光ビザで入国しようとする人の端末からアメリカでの職探しを示唆する情報が見つかれば、入国拒否の理由となる可能性がある。 さらに入国審査官は、ソーシャルメディアのアカウントや削除操作をしたメールの復元を要求することもあるという。休会したソーシャルメディアのアカウントが見つかれば再度アクティブ化するよう求め、内容を入念に検査することもある。 ■日本人旅行者も無縁ではない このような厳格な入国審査とスマホの検査は、日本人を含むすべての外国人旅行者が対象に選ばれる可能性がある。観光目的で訪米する場合でも、プライバシーの塊であるスマホの内容を徹底的に検査され、内容次第では曲解されて入国拒否に至るリスクが存在する。 特に、政治的な意見や批判的なコメントがソーシャルメディアやメッセージアプリに残っている場合、入国審査で問題視される可能性があることは意識した方が良いだろう。審査の不正な回避を推奨する意図はないが、あらぬ誤解を招かないための自衛策として、不要なデータの削除やクラウドへの一時退避、生体認証の無効化などは検討に値する。 アメリカは人気の旅行先であり、今年もゴールデンウィーク前後には大勢が渡航するとみられる。それだけに、楽しいはずの渡航が台無しにならないよう、事前の護身が有効となるだろう。入国時のトラブルを最小限に抑え、有意義な時間を過ごしたい。 ---------- 青葉 やまと(あおば・やまと) フリーライター・翻訳者 1982年生まれ。関西学院大学を卒業後、都内IT企業でエンジニアとして活動。6年間の業界経験ののち、2010年から文筆業に転身。技術知識を生かした技術翻訳ほか、IT・国際情勢などニュース記事の執筆を手がける。ウェブサイト『ニューズウィーク日本版』などで執筆中。 ----------
フリーライター・翻訳者 青葉 やまと