旅行が一瞬で台無しになる…海外紙が警告「アメリカの空港で続く"スマホ検査"の異様な実態」
ドイツ人のシーラフさんは、国境管理官が英語で行う質問を完璧に聞き取ることができなかった。係官が居住地について質問した際、不法にアメリカに住んでいるとも取れる回答になってしまったという。その後、彼は尋問室に連れて行かれた。 シーラフさんはドイツ語の通訳を要求したが拒否された。最終的に作成された尋問の報告書は、彼の発言を正確に反映しているとは言い難かったという。ニューヨーク・タイムズ紙の取材に、「私はここに住んでいない、90日以内にドイツに戻ると言ったのに、彼らは聞いてくれなかった」と語る。 尋問後、アメリカへの再入国を拒否され、他の検査対象者と一緒に鎖でつながれた。外では、パートナーのタイラー医師が係官と必死で掛け合っていた。しかし、彼女の車が捜索されることになり異議を申し立てると、彼女も職員に拘束され、屈辱的な身体検査を受けたという。 「生まれて初めて手錠をかけられました」とタイラー医師は語った。身体検査の後、彼女もしばらく鎖でつながれ、後に解放された。 一方、シーラフさんは国境検問所で2日間拘束された後、収容所に移送された。そこでは2週間、他の収容者8人と一緒の部屋に入れられた。最終的にはタイラー医師の尽力で、「自主的な国外退去」という穏便な扱いで解放された。だが、退去費用に2744ドル(約40万円)を要したという。 外国人旅行者はアメリカ入国時、脆弱な立場にある。政治的なメッセージをとがめられたり、通訳の同席を許されず言語の壁からあらぬ誤解が生まれたりと、長期の拘束につながる危険性が潜んでいる。 ■「顔認証」と「パスコード」は捜査権限がまったく違う 私たちが観光や出張など商用でアメリカに入国する場合、どのような準備ができるだろうか。正当な入国審査は受け入れるべきだが、根拠のない疑いをかけられて強権的にスマホを調べられ、プライバシーを侵害される事態は避けたい。 ガーディアン紙は、入国前の対策として最も重要なのは、生体認証(顔認証・指紋認証)をオフにし、パスコードのみに切り替えることだと説く。顔認証と異なりパスコードは、アメリカ憲法修正第5条の保護対象となる可能性が高い。 法的には、パスコードは入国者が「知っていること」であるため、証言と同等の扱いとなり、開示しない権利が認められる可能性がある。だが、顔や指紋は「所持しているもの」、すなわち物理的証拠とみなされ、強制的に提出を求められる(すなわち、顔や指紋認証でスマホを解錠させられる)場合がある。 ■2秒でスマホを最高のセキュリティレベルに 具体的な対策としてはiPhoneの場合、設定アプリの「Face ID とパスコード」から「Face ID によるロック解除」をオフにできる。 もし事前にこの処置を忘れていた場合でも、とっさの対応は可能だ。単純にiPhoneの電源を切るか、再起動したあとパスコードを入力しないでおく。電源ボタンとどちらかの音量ボタンを2秒ほど押し続ければ、どんな場合でもすぐに電源オフのスライダーを表示できる。