旅行が一瞬で台無しになる…海外紙が警告「アメリカの空港で続く"スマホ検査"の異様な実態」
入国検査は保安上必要なものだが、検査体制に行き過ぎがあるとして、多くのプライバシー専門家や市民的自由の擁護者から懸念の声が上がっている。 英ガーディアン紙によるとCBPは、2024年の越境者4億2000万人のうち約4万7000台の機器を検査したと述べており、その大部分が非米国民に対する検査だったという。割合としては約1万人に1台とわずかな割合だが、米著名テックメディアのライフハッカーは2016年度には1万9051件だったと指摘しており、件数としては8年間で2倍に増加した形だ。 ■ドイツ人観光客を襲った46日間の拘留生活 検査はアメリカ国民も対象となるが、立場の弱い外国人旅行者の場合、さらに影響が大きい。ビザや事前申告制度のESTAで入国する外国人(日本人を含む)は、スマホ検査を拒否すれば、アメリカへの入国そのものを拒否される恐れがある。 ところが、堂々と検査を受けたところで、ほとんど難癖とも取れる理由を付けて問題にされるケースがあると報じられている。英ガーディアン紙は、フランス人科学者がスマホを検査され、トランプ批判のメッセージが見つかったことを根拠に、入国拒否された事例を報じている。単なる個人の見解を綴ったメッセージが、アメリカの脅威になり得ると判断された。 さらに、ニューヨーク・タイムズ紙は、ドイツ人観光客で29歳女性のジェシカ・ブロシェさんがアメリカ入国時に拘束され、強制送還された事例を伝えている。46日間拘束されたうえ、国外退去処分となった。 タトゥーアーティストのブロシェさんは、サン・イシドロ国境検問所で拘束された。彼女は多くの日本人観光客がするのと同様に、ESTAのシステムで入国申請を済ませたうえで旅行していたという。だが、入国時、荷物の中にタトゥーを彫る機器があることを指摘された。これにより、アメリカ国内でタトゥーアーティストとして働く意図があると誤解された可能性があるという。 ブロシェさんはサンディエゴの収容センターに送られた。当局は「数日間」拘束すると伝えたが、実際には「入国を拒否された後、9日間独房に入れられた」という。その後も彼女は、6週間以上収容センターに留置された。 友人は「何が起きているのか分からず、それだけで彼女は発狂しそうだった」とニューヨーク・タイムズ紙に語る。「彼女はそこにいる間、ほとんど眠れず、夜中に泣いていたんです」。ブロシェさんは46日間の拘束の末、ようやくドイツに戻ることができた。 ■英語が聞き取れないばかりに…鎖で繋がれ収容所へ 同じくドイツからの観光客で25歳男性のルーカス・シーラフさんも、拘留された一人だ。彼はアメリカ人パートナーのタイラー医師に会うため訪米した。2人はティファナに車で向かい、戻ろうとした際、国境検問所で止められた。