荒俣宏は「0点主義」

そんな勉強法をわたしは「0点主義の勉強法」と名づけることにした。材木ではなく散木になるための勉強法というわけだ。単なる手段や道具としての「冷たい勉強法」とは違った、なにかゆったりした大河の流れのような可能性を求める方法といえるかもしれない。

ただし、「0点主義の勉強法」では、成功をめざす材木的生き方を排除するわけではない。結果的には、むしろ「冷たい勉強」に集中するよりも大きな成功が得られる可能性もあると思う。

なぜだろう?

まず、「冷たい勉強」は非常に多くの人が参加しているものなので、必然的に競争が激しく、よほど抜きんでないと成功をつかみ取る勝者にはなれない。しかし、「0点主義の勉強法」では、自分がやりたい勉強をしていくので競争相手も少なく、いわば独擅場の世界を築ける。

そして、その独自の視点が定まったら、その視点から世の中を見ればいい。ここに変化の兆しが見つかるかもしれないからだ。

光り輝くゼロに引き寄せられる群衆
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あなたに「決め球」はあるか

実力は0点でも、「決め球」があれば、自分の人生はかならず開ける。

この「決め球」を見つけ、磨きあげるには、ストライクを投げるだけの練習では意味がない。球を投げることのおもしろさに気づいて、さまざまな変化球を覚えるという別の選択肢が見つかれば、野球、いや、思考や情報を読み解く力は強化されるはずなのだ。

ついでに書いておこう。「好きなことを仕事にできるのは、特別な才能がある人だけだ」という人もいるだろうが、それは違う。好きなことを仕事にして失敗するという、一見するとネガティブな面もあるけれど、ただ1つの覚悟があればよいのだ。

それは、失敗することに時間も経費もおしまないで楽しみにしてしまう、という覚悟だ。

もっとはっきり、失敗は金で買ってでもしろ、といいたい。なぜなら、失敗こそは「成功」の別側面だから。

とくに若いころは、どんな失敗も安く買いたたける(重大な責任を負わされる可能性が少ない)からだ。おそれることはない、若い時期こそは失敗体験のバーゲンセールで買い物ができる。