人民解放軍の「習近平の側近」が突然失脚…!?中国で現実味を増す「台湾急襲」という悪夢

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台湾・頼総統の対中強硬姿勢に激怒する中国が、連日のように大規模な軍事演習を行っている。暴発へのカウントダウンが始まった台湾有事のいまとこれからを読み解く。

「台湾のゼレンスキー」という隠語

「対中17戦略」のなかには、「台湾併合への反対運動推進」や「国際社会に向けたアピールの強化」といったこれまでと変わらぬものもあれば、「台湾人の中国への旅行・居留のリスク管理」「中国人の入国リスク管理」「芸能人の中国進出の管理強化」といった、民間レベルの交流にブレーキをかけるものもある。

さらには台湾国内のスパイ活動に対抗するための「軍事裁判の復活」や「軍事法廷改革」なども謳ってもいる。

頼清徳総統はもともと内科医だったが、台湾で戦後38年も続いた戒厳令に反対して'86年に発足した民進党に共鳴、政治の道に入った。ところがいまや皮肉なことに、かつての国民党の戒厳令のような政策を、自分がやろうとしているのである。換言すれば、そこまで台湾が追い詰められているということだ。

「3月11日、台湾当局は台湾在住の中国人女性の居住権を剥奪したと発表しました。彼女はSNS上で『台湾は中国の省の一つに過ぎない。中国が武力行使をして台湾を奪取するのは当然だ』という主張を繰り返してきたインフルエンサーで、当局は彼女の発言を『到底容認できない』と判断したのです。

彼女は今後、強制退去処分となる見込みですが、言論の自由のある台湾では極めて珍しい判断。現在、このような親中発言が蔓延し、急速に社会に浸透してきている。頼総統はこうした変化を深刻にとらえており、強権的な判断をせざるを得なかったのでしょう」(現地紙記者)

こうした頼総統の対中強硬施策を聞いた中国の高官らは怒髪天を衝いたという。北京の関係者が語る。

「最も我々を怒らせたのは、台湾の独立を狙っている頼清徳が中国のことを初めて『敵対勢力』と指定したことだ。今回の軍事演習は、この発言に対する報復措置だ。国際社会に対しては、危機をあおっているのは台湾の側であることを訴えていく。

現在、頼は中南海(北京の最高幹部の職住地)で『台沢』の隠語で呼ばれている。『台湾の沢連斯基』という意味だ。つまり、ヤツは遠からずウクライナのゼレンスキー大統領のような目に遭うだろう」

表舞台から突然姿を消した解放軍幹部

頼総統の会見の翌日(3月14日)、北京では「反国家分裂法施行20周年座談会」が開かれた。反国家分裂法は、20年前のこの日に中国で施行された、台湾武力統一を合法化する法律だ。

座談会には、注目すべき軍人が参加していた。台湾侵攻の際に現場責任者となる林向陽東部戦区司令官(上将)だ。

林司令官は力説した。

「『台湾独立』分裂分子が勝手に危険な道を進むなら、かつ外部勢力(アメリカ)が故意に両岸関係の緊張と動乱をもたらすなら、人民軍隊は台湾人民を含む全国人民と一体になって、強力な阻止のための征伐を与える。

常に戦争待機の状態を保持し、いつでも戦争できるよう高度の警戒をし、軍事的な一手を準備しておく!」

このように、いまにも台湾侵攻を始めるかのような発言を繰り出したのだ。

威勢がいいのは発言だけではない。実は、軍部の態勢にも台湾有事に関連して、大きな変化が起こっている。200万人民解放軍を統括する習近平中央軍事委員会主席に次ぐ二人の中央軍事委員会副主席の一人、何衛東副主席が突然表舞台から姿を消してしまったのだ。

何副主席は、習近平主席が福建省で勤務していた当時、陸軍第31集団軍の幹部を務め、気心が知れた仲だった。そのため、習近平時代になって異例の昇進を重ね、'22年まで台湾侵攻を担当する東部戦区司令官を務めた。

そのキーパーソンが、先月11日に閉幕した全国人民代表大会以降、忽然と消えたのだ。台湾海峡の緊張感が高まる中、人民解放軍に、一体何が起こっているのか?

台湾統一をめぐって起こった権力闘争

「中南海では、台湾を統一するという方向性では一致しているが、その手段を巡って権力闘争が起こっている。

ごく単純化して言えば、習近平主席や王毅外相を中心とする政治主導者らは、いまは低迷する中国経済の回復に専念し、米トランプ政権が無謀な関税政策などによって自壊するのを待つべきだという慎重な意見を持っている。何衛東副主席は習氏の腹心だけに、台湾への姿勢も習氏と歩調を合わせてきた。

それに対し、人民解放軍の強硬派は、『関税問題でアメリカが混乱しているいまこそ、台湾侵攻のチャンス到来だ!』と主張している。ウクライナ戦争の停戦協議で、トランプ政権がロシア寄りになっていることも、強硬派を後押ししている。

何副主席の「失脚」の理由はまだ不明だが、もう一人の副主席で対台湾政策の超強硬派である張又俠氏が、台湾侵攻に消極的である何副主席を「刺した」のではないかとみられている。以前から二人の仲は険悪で有名で、特に台湾侵攻を巡って意見の食い違いがよく起こっていた。何副主席が失脚したなら、軍の内部で台湾強硬派がさらに勢いづくことは間違いない」(前出の関係者)

頼政権が警戒する3つのケース

台湾側は、強硬派が勢いづく中国政府の動向に、これまで以上に危機感を強めている。総統府の関係者が語る。

「頼政権では、(中国)大陸による台湾侵攻が起こる可能性について、3つのケースを警戒しています。

第一に、短期決戦で台湾の武力統一が可能だという楽観的シナリオを、習近平が信じ込んでしまう場合。第二に、中国経済が救いようもなく悪化して、国民の不満を外にそらそうと習近平が決断する場合。第三に、人民解放軍の暴走を、習近平が止められなくなった場合です。

なかでも、いま最も恐れているのは第三のケース。人民解放軍や海警局の強硬派が台頭し、国際環境が混乱するなか、軍部が『いまこそ台湾統一の好機だ!』と暴走する恐れを無視できなくなっている。

特に、米トランプ政権が何を考えているのかわからないことも、中国側の判断を誤らせる可能性があります。頼総統はルビオ国務長官とのパイプを強調しているが、ルビオ長官のワシントンでの影響力は低下していてあまり頼りにはならないのです」

窮地に立つ頼総統は今月初旬、極秘で呉訢燮国家安全会議秘書長(前外相)をアメリカに派遣。現地で親台派の面々と善後策を協議したが、台湾に格別興味を持たないホワイトハウスから想定以上の反応や言葉を引き出すことはできなかったという。

米国防総省は3月に作成した「暫定国家防衛戦略」のなかで、台湾有事を「差し迫った脅威」と断じている。中国の「抗日戦争勝利80周年」である'25年、脅威は現実へと着実に向かっている。

「週刊現代」2025年4月28日号より

中国の台湾侵攻はそこまで迫っている…?!突如開始された大規模軍事演習のヤバすぎる意図