ある日のこと、高天原に現れたイザナギの神とイザナミの神の兄妹神は、別天神(ことあまつかみ)5柱から「このふわふわと漂っている国土を整え、つくり固めなさい」と命じられ、天沼矛(あめのぬぼこ)を授かった。2柱は高天原と下界を繋ぐ天浮橋に立ち、天沼矛をおろして、脂のようにどろどろと漂っている地上をかきまわした。海水をこおろこおろとかき鳴らし、矛を引きあげた。そのとき、矛の先から滴り落ちた塩が積み重なって島が出来た。これが最初の国土であり、オノゴロ島という。このオノゴロ島を拠点に、イザナギ・イザナミの二人は国づくりを開始する。2柱はこの島に天御柱(あめのみはしら)を立て、八尋殿(やひろどの)をつくり、「まぐわい」の儀式を行った。
2柱は天御柱を左右から回ってから出会うと、イザナミが先に「ああ、なんていい男なんでしょう」といい、イザナギが「ああ、なんていい女なんだ」と応じた。それから兄妹神は交わるが、生まれたのは骨がなく身体が未完のヒルコと淡島だった。2柱は不吉だと感じ、葦舟に乗せて流したあと、別天神に伺いをたてるため高天原へ昇る。別天神は太占(ふとまに)によって吉兆を占い、「女から先に声をかけたのがよくない。戻ってやり直しなさい」との言葉を授けた。2柱は元の場所に戻り儀式をやり直した。今度はイザナギから声をかけ、改めて交わった。こうして2柱の間に、淡路島、四国、隠岐島、九州、壱岐島、対馬、佐渡、本州が生まれた。数えて八つ。このため日本の国を大八島と呼ぶようになった。
古事記を読んでいると、所々に性的な表現が見られる。最初に目にするのはイザナギとイザナミの国生みの場面で、2柱は国を生むにあたり「まぐわい」をしようという。つまり性行為のことである。当時、性行為は儀式的な意味合いが強かったのだ。婚礼の儀であると同時に、子を授かるための儀式だったのです。昔は生命の誕生は神からの授かりものとして、有り難く受け止められていました。
また、生まれたと同時に、その体が不完全だったために葦の船に乗せて流され、捨てられてしまったヒルコは、流された後、摂津国の西宮にたどり着く、古来、このように漂流して流れ着いたものを、福をもたらす「客人神」として祀る風習があった。そこでヒルコも恵比寿様としてその地で神として祀られるようになりました。ちなみにヒルコと同様に流された淡島だが、こちらも現在は淡島神として祀られています。