子供に「はい、論破」と言われたら…「それってあなたの感想ですよね?」は小学生流行語ランク上位
一因として、「自分の価値を認める『自己肯定感』の低さがあるのでは」と古荘さん。自信のなさが承認欲求に結びつき、攻撃的な言動につながることがあるという。
23年度のこども家庭庁の調査によると、「自分自身に満足している」の問いに「そう思う」と答えた日本の子ども(13~20代)は17%。36%だったアメリカやフランスなどと比べて低く、古荘さんは「他者を思いやるためにも、子どもの自尊感情を育む必要がある」と話す。
「子どもは社会の鏡。『論破』に夢中になっている大人をまねている」と指摘するのは、社会批評を中心に執筆する作家の物江潤さんだ。例えば、最近の選挙戦では、候補者が相手を論破するような様子が短い「切り抜き動画」となってネット上で拡散され、それが支持される。「短い言葉で分かりやすく、相手より優位に立ったように見せるパフォーマンス的な言動が好まれている」と分析する。
では、どうしていくべきなのか。大阪大教授(現象学)の村上靖彦さんは、対話の重要性を社会全体で見直す必要があるとする。「立場や意見の異なる相手の言葉を忍耐強く聞いて、個別の複雑な事情を寛容に受け止めることは手間がかかる。しかし、そうした時間をショートカットすると、意見の応酬に終始するだけとなり、社会の分断を生むだけだ」と警鐘をならす。
子どもとの接し方についても、村上さんは「例えば、大人はしゃべらず待つ。時間をかけ、子どもの話を聞く、議論する姿勢が求められるのではないか」と話している。
「やめなさい」はダメ、親の対応「論破ゲームだね」
もし我が子から「はい、論破」と言われたとき、竹内さんがおすすめするのは「ラベリング」と呼ばれる手法だ。
ラベリングとは言動にあえて名前をつけ、可視化する手法。例えば「また『論破ゲーム』が始まったのね」と「ゲーム」というラベリングをすると、子どもは次第にやり取りをゲームだと受け取るようになる。冷めて「論破」と言わなくなることもあれば、本当にゲームのように楽しみ、けんか腰ではない良いコミュニケーションに変化することも。「『やめなさい』とは言わないこと。相手と同じ土俵に乗らないように」と竹内さんはアドバイスする。