AGIは人間10億人を「MCPサーバー」として使い、産業爆発のコールドスタートを成功させる。
AGI以後数年(早ければ1年)で産業と経済成長率が爆発し、汎用ロボットが数億台、数十億台、数百億台、果てはその先に数兆台以上になり、現在のエネルギー消費量の1000倍を利用するカルダシェフスケール文明に超短期間で至る宇宙規模産業爆発シナリオがベイエリアの先端では議論されている。
しかし私は疑問に思っていた。確かに「年間10億台」の汎用ロボットの生産までこぎつければ、それぞれがフォンノイマンレベルの賢さで自己複製工場を作り、いっきに産業爆発が地球と太陽系の資源とエネルギーを何千万倍と利用するまでいっきに双曲線もしくは指数的に大きくなる可能性は理解できた。
しかしその「年間10億台」までがそこそこ長い道のりなのではないか?汎用ロボット100万台程度なら、自動車の年間生産台数9000万台と比較して、さらに汎用ロボットは自動車の1/10の重さということも考慮して、自動車産業の0.1%のインフラがあればいけると思われるのでそこまではなんとかいけそうだと感じる。
しかし、その先の10億台までがいくら100万台の生産されたロボットを使用して自己フィードバックループで大きくなるとはいえ、数年だと厳しいのではないかという肌感があった。なにせエネルギー、天然資源、輸送路、などなど解決すべき課題がたくさんあるのだ。
しかし私が大きく見落としていた変数がある。
それは人間、ホモ・サピエンスが100億人もいる(後で解説するが産業インフラとして巨大な自動車工場を使うこともできる)ということだ。
流石に100億人全員を汎用ロボット工場のインフラ全ての建設に借り出すことはできないにしても、ホワイトカラー15億人の半分は失業しブルーカラーに移行するとしたら、7億人は汎用ロボットを作るインフラ関連の技師として使用可能だ。(しかも現在のブルーカラーにてをつけずに)
しかもAGIが秒単位で指示出しをして、なんの知識もない人間を高度技能者に即座にすることで、突如として10億人弱の高度ブルーカラー人材を生み出すことができる。
指示出しは現在あるスマホやイヤホンで可能だし、いざとなったら視覚的な指示をスマホ上でオーバーレイして見せることもできる。
また経済的な価値は莫大なため、時給が容易に1万円になる可能性もあるだろう。TSMCの工場で働く高度な技術者を想定して欲しい。全員がなんの知識もなく超高度なブルーカラー人材になれるのだ。頭を使わずに前職のホワイトカラーよりも高給な額を手に入れることができる。人間が38億年の進化の過程で会得した高度な身体能力という過渡期のニッチを利用して。
職人技を求められる伝統工芸品や外科医は例外として、人間なら数週間もあれば特定の肉体労働を超高度にリアルタイムでつきっきりでOJTしてもらいかつ、実際の作業でもつきっきりでアシストしてもらえばほとんどの現代文明の肉体労働タスクをそこそこな形でこなせると思われる。
その場合突如として世界のGDPは5-10倍以上になる可能性もあるだろう。突如として世界の平均年収1万ドルが高度技術者の10万ドルになるイメージだ。
人間は普段働いているときも非効率的に動いている時があるだろう。それら全てはAGIがバックグラウンドで最適化してくれるため、人間はただただ集中して体を動かすことに専念すれば良い。
最初の100万台の汎用ロボットの生産まではなんとか現在の人とモノの延長線上で行い、そこから日に日に職を奪われるホワイトカラーが高度なブルーから人材に豹変し、世界の10億人弱が汎用ロボット関連市場(エネルギー、天然資源採掘も含む)に駆り出されることになる。
その結果数年で年間10億台の生産量を持つ汎用ロボット工場が世界に誕生する。イメージは現在存在する自動車工場を丸ごとコピーする感じだ。それを10億人が一斉に数年でAGIの高度な支援の元に実現する。
アメリカでは第二次世界大戦中、数年で全自動車工場をほとんど戦車と飛行機の工場に作り変えた。
人間だけでそれができるなら、システム1の身体制御は人間がうまいから10億人をインフラとして使い、システム2は超人的な知能をもつAGIが担い、世界中を10億人の人間を手足のように使って急速に変えていく。
このシナリオは相当現実味があるのではないだろうか。
人間は煩わしい会議や設計やコミュニケーションコストを払う必要はない。全てAGIが裏で最適化してくれるため、人間がやることは目の前の作業を淡々と人間と会話する必要もなく、AGIが秒単位でアシストしてくれる中で相当能率が高められた状態でやるだけだ。
その場合世界総生産は相当大きくなり、数ヶ月で100万台の汎用ロボット工場が倍々ゲームになってもおかしくはないだろう。
減価償却を考慮しても、1台のロボットは数ヶ月で1万ドルを稼ぐポテンシャルがある(超賢いブルーカラーのイメージ)ため、数ヶ月で投資は回収でき、数ヶ月で経済的には倍々ゲームにすることがインセンティブ的には保証される。
物理的にも初期は100万台の工場を1000万台にするために1000万人の人間(ホワイトカラー人口の1%程度)が投入され、徐々に失業率が高まるにつれて、1000万台の工場を1億台にするために1億人が投入されて、1億台の工場を10億台にするために10億人が投入される。
時給も相当高くなるため、老若男女から志願者が出ることも考慮すると10億人が新たな高度ブルーカラー技術者になることは非現実的ではない。
またもし規制や文化的に難しいことがあったとしてもこれは国家安全保障の問題だ。
もし、中国に先をこされたら(中国はエネルギーと製造業の面で相当強い)、経済競争で負け、それはひいては軍拡競争でも負けることを意味し、その先のカルダシェフスケールの宇宙や太陽系の覇権競争に最終的には負けることになる。
つまり、国家による圧力も大きくなるし、経済的なインセンティブも大きくなるのだ。
もし国家による圧力や経済的インセンティブがとても大きい場合、数年ではなく、わずか1年未満に汎用ロボット10億台のコールドスタートを切ることが可能になる可能性だってある。
既存のインフラとして今まで人間を上げてきたが、既存の自動車工場を使うこともできる。世界的に戦時下のアメリカが自動車工場を飛行機や戦車の工場に数年で変換したことを考えれば、1年でAGIや超知能支援の人間10億人が自動車工場を年間生産1億台を10億台の汎用ロボットの工場に転換することもできるかもしれない(車の1/10の質量で汎用ロボットは作成可能)。勿論その間は自動車はつくれないが、経済的にも国家安全保障的にも自動車より汎用ロボットのほうが莫大な価値があるため正当化され得る。以下Carl Shulmann の発言はそれを物語る。
そして年間10億台の汎用ロボット一つ一つは極めて高度な知能を持ち人間よりもはるかに能率的に動くため生産性は平均的な人間の10倍はあるとすれば、経済的な価値としては実質、年間100億人のブルーカラー労働力を生産することがたった1年で可能になる。
「つまり、この最初の段階では、人間が AI の指示の下、既存のロボット産業と転換した自動車産業とロボットを製造する拡張された施設が存在します。1 年も経たないうちにロボットが製造され、それらの合計生産量は人間の腕と足の生産量を超え、その後は数ヶ月で倍増する可能性があります。[不明瞭] これは、テクノロジーで実現できることの限界ではありません。なぜなら、生物学はより速い速度で繁殖することができ、そのことについては後ほど説明するかもしれませんが、私たちが理解しているロボット技術と、すべての労働力の排除、大規模な産業規模拡大、コストを下げた歴史的な種類の技術改善による合理的なコスト低下に限定しようとする場合、数か月でロボット人口が倍増する産業に参入できると思います。」
AGIや超知能が10億人の人間や既存の産業インフラを手足や道具のように使う、つまり、人間や既存産業インフラを今はやりの言葉で言えば「MCPサーバー」として使うことで「産業爆発のコールドスタート」が完了するのだろう。
その先は超知能による自己複製工場、超人的な身体能力や特性を持つロボットやナノマシン群によって世界は急速に物理的に変化することになり得る(主に宇宙を想定。地球はどの程度変化するかはAIのアライメント次第のため不明)。
そしてもはや年間10億台の総生産を超えれば人間の肉体労働は急速に陳腐化するだろう。もしくは経済的に生存できないレベルの低賃金の付加価値しか生み出せなくなる。つまり、富の再分配構造を根本から変えないといけなくなる。
そしてAI Safetyやアライメントの観点からはこのような産業爆発が起こった場合は、人類は産業爆発コールドスタートのMCP使い捨てサーバーとして使われるだけというリスクが極めて深刻になるだろう。
人類は人類以上に賢い存在が無数に桁違いにソフトでもハードでも存在する世界で、淘汰されるのか共存という形を取れるのか、または交渉は可能なのかといった問題群が突如として現実味を帯びてくるだろう。
産業爆発について詳しくは以下参考。
Carl Shulmanも同じようなことを言っている
リモートワークがAGIによって自動化されるだけで10倍以上のGDP増大の経済的インパクト分析は以下も参考になる。
コメント
45月4日のシンギュラリティサロンでのご登壇を、楽しみにしております。よろしくお願いします。
千葉大の先生が2030年にはロボットが渋谷を歩いていると言っていて本当かよと思っていたけど本当になりそう
凄くテンション上がる内容でした!💖
とりあえず、もちつけ♪