福島県外での除染土再利用事業、環境省が終了 反対で運び込めず
東京電力福島第一原発事故後の除染で出た土(除染土)を首都圏3カ所の花壇などで再利用する実証事業について、環境省が昨年3月に終了させたことが分かった。国は2045年までに除染土を福島県外で処分すると約束しており、その足がかりになる事業だったが、地元の反対で土を運び込めなかった。
福島県内の中間貯蔵施設にある東京ドーム11個分の除染土について、国は4分の3を全国の公共事業で再生利用する方針。環境省は22年末、そのための実証事業を埼玉県所沢市、東京都の新宿御苑、茨城県つくば市の国立環境研究所で行うと発表した。大手建設会社などで作る組合が約5億4千万円で受注し、トラック数台分の土で芝生広場や花壇などを作る予定だった。
だが、反対運動にあい、同省は組合との契約を2度延長し、昨年3月末で終えた。担当者は「県外3カ所の実証事業を工期内に進めることが困難になったため」とする一方、「契約は終わったが計画自体を断念したわけではない」と説明している。
トラックから土が飛散しないかどうかや、事故で散乱した場合に安全に土を回収できるかなどを確認する試験を中間貯蔵施設内で行ったといい、同省は組合に約2億1千万円は支払ったという。
福島県内では事故後、家や学校などの放射線量を下げるため、表土をはぎ取るなどする除染が行われた。発生した土の行き場をめぐっては、地元が中間貯蔵を受け入れ、同原発を囲む中間貯蔵施設(同県大熊町、双葉町)に7年かけて運び込まれた。