ニュースイッチ

競争が激しいフードデリバリー事業会社にスタートアップ社長が切り込む

北川烈のモーレツ!会社訪問記
競争が激しいフードデリバリー事業会社にスタートアップ社長が切り込む

ナタリア氏(左)とウォルト配達員スタイルの北川氏

2013年に自ら起業し、22年には東証上場を果たしたスマートドライブ社長の北川烈が気になる企業に突撃する「北川烈のモーレツ!会社訪問記」の第3弾。今回は、フィンランド発でグローバルにフードデリバリー事業を展開するウォルトの日本法人「ウォルトジャパン」を訪れた。フードデリバリー業界はコロナ禍での宅配需要の高まりもあり、急成長したが、事業者間の競争が激化し、すでに撤退している企業もある。そのような状況の中、同社のナタリア・ヒザ二シヴィリ代表に今後の展望などを聞いた。

北川 まずは、ウォルトの創業の経緯を聞かせてください。

ナタリア ウォルトは14年にフィンランドのヘルシンキで設立し、今年で10周年を迎えました。創業者で最高経営責任者(CEO)のミキ・クーシは、人の一日の行動で頻度の高い「食」に対し、いかにデジタル化を溶け込ませるかを考え、フードデリバリー事業を始めました。22年には、米国を中心にフードデリバリー事業を展開する米ドアダッシュ(カリフォルニア州)の子会社となり、現在は32カ国で展開し、うち28カ国はウォルトのブランドで事業を行っています。日本では20年にフードデリバリー事業を開始し、今では24都道府県、44エリアまで広がっています。

北川 今のフードデリバリーに限らず、食のDXみたいなところから始まっているんですね。

ナタリア そうなんです。食のDXが最初の参入ポイントでした。現在の事業としては、コアはフードデリバリー事業で、ほかの関連した事業も行っています。

インタビューをする北川氏

北川 いきなり答えにくい質問かもしれないのですが、フードデリバリー業界には、知り合いが多くいて、よく話をします。一般的に日本って(海外と比較しても)おいしい食事を提供する割に価格が安い。しかし、安い割に人件費が高い。のような構造かと思います。そういうこともあり、フードデリバリー業界で利益を出すことが難しいような印象を受けます。日本で事業を続けていくことが、グローバルの中でどういう位置づけなのかなというのが、すごく気になったんですけど、ちょっとお答えできる範囲で伺えたらと思います。

ナタリア 鋭い質問ですね。おっしゃるような日本の市場構造を踏まえた上で、当社は明確な意図を持って日本に進出、投資をし、成長しています。アプリで注文を受けてお届けする、いわゆるフードデリバリーのサービスから派生した事業も行っています。後ほど説明しますが、様々な新しい試みをすでに始めていて、ロードマップに沿って進み、成長しているところです。

北川 ご回答ありがとうございます。ナタリアさんは24年3月から日本法人の代表に就任されたとのことですが、半年経過して日本市場の特異性のようなものはありますか。

ナタリア そうですね。日本市場は規模が大きく複雑性を伴っているため、パートナーとの良好な関係構築など忍耐強く事業を行っていくことが重要だと認識しています。当社もまだ創業10年で、業界自体まだ黎明期です。長い視野で見ていくことが重要です。長期的な視点で持続可能なビジネスをどう構築していくかに注力しています。

ナタリア・ヒザニシヴィリ氏

北川 ありがとうございます。そうなると、フードデリバリーの次も考えているということですね。どういう事業戦略を描いているのですか。

ナタリア フードデリバリーを超えた価値をパートナー企業、店舗、配達パートナー、ユーザーに提供したいと考えています。日本国内にプロダクトエンジニアがいることも当社の特徴の一つで、グローバルでは展開していない国内独自のサービス提供も行っています。例えばモバイルオーダー対応のウェブサイトを手軽に作成できる事業者向けのサービス「ストアフロント」は日本で開発したサービスです。ユーザー向けには、注文するごとにポイントを獲得し、貯めたポイントが割引に使える「ウォルトリワード」も日本で初めて導入されたサービスです。こういった日本に合ったサービスを提供することで、当社のあらゆるステークホルダーのニーズを満たしていきたいと思っています。

また、BtoB(企業間)ビジネスで特に成功している事業としては、小売店の依頼を受け、その小売店の配達員の代わりにウォルトの配達員が最終消費者に商品を届けるサービス「ウォルトドライブ」があります。このサービスでは、企業や店舗が自身で配達員を配備する必要がありません。企業がただでさえ人員の確保に苦労している状況ですので、大変好評を得ています。

日本独自で作ったサービスや、グローバルで成功しているサービスなどを展開して事業を拡大しています。

北川 なるほど。店舗側のDXや配達員不足を課題に持っている企業は多そうなので攻略できるポイントは色々とありそうですね。そういった意味では「食」以外の業種でも同じような課題はありそうですが、他業種への参入もありうるのですか。

ナタリア もちろんです。今では飲食店からの料理だけでなく、スーパーやドラッグストアから食料品や日用品もお届けしています。また、こうした業態の中で、ウォルトドライブのサービスを利用している企業もあります。このほか、調剤薬局から処方薬のデリバリーも行っています。

北川 色々と横展開もできそうですね。最後に緩い質問になるのですが、ナタリアさんが日本に来た経緯を教えてもらえますか。

ナタリア まず、私の経歴を少し説明しますと、私は(アジアと欧州の間に位置する)ジョージア出身で、18年にジョージアでウォルト社に入社しました。当時、ウォルトは欧州・中央アジアでビジネスを急拡大している時期で、ジョージアでの事業立ち上げに携わった後に、ジョージア・アゼルバイジャン・カザフスタンの3カ国での事業構築を統括しました。昨年、日本のチームを率いる機会について打診があり、話を聞くと日本市場は非常に魅力的で、また大きな市場でもあるため、日本でチャレンジすることを決めました。日本の印象は、人々の人柄も良く、美しく素晴らしい国だと感じています。これからも、”おもてなしデリバリー「Wolt」”を日本に広めていきたいと思っています。

ウォルトは8月の「青森ねぶた祭り」にオリジナルねぶたを作成して参加した

次回は、北川が特に興味をもった企業や店舗の依頼を受け、自社配達員の代わりに自転車やバイクで最終消費者に商品を届けるサービス「ウォルトドライブ」について、責任者である営業統括本部長の安 承俊氏に聞く。

北川烈(きたがわ・れつ)スマートドライブ 代表取締役(CEO)。慶応大学在籍時から国内ベンチャーでインターンを経験し、複数の新規事業立ち上げを経験。その後、1年間米国に留学しエンジニアリングを学んだ後、東京大学大学院に進学し移動体のデータ分析を研究。在学中にSmartDriveを創業し代表取締役に就任。
ナタリア・ヒザニシヴィリ Wolt Japan 代表取締役。金融業界でEコマースセクター向けのビジネスデベロップメントに約10年携わった後、2018年にジョージアのゼネラルマネージャーとしてWoltに入社。その後、カザフスタン、アゼルバイジャン、ジョージアのビジネスを統括した。2024年3月から現職。
notification icon
Push通知を許可しますか?通知の設定は端末の「通知」設定から変更できます。