ウォルトが法人向けサービスに力をいれる理由
2022年に東証上場を果たしたスマートドライブ社長の北川烈が気になる企業に突撃する「北川烈のモーレツ!会社訪問記」の第3弾。今回は、フィンランド発でグローバルにフードデリバリー事業を展開するウォルトの日本法人「ウォルトジャパン」を訪れた。前編でウォルトジャパンの展望や事業展開をナタリアさんから聞いたスマートドライブ社長の北川。フードデリバリー事業に加えて同社が注力する法人向けサービス「ウォルトドライブ」について成長性を感じ、同社の安 承俊営業統括本部長からさらに詳しい話を聞くことになった。
北川 ナタリアさんからウォルトドライブの話を聞き、もう少し詳しい話を聞きたいと思いました。改めて、概要を教えてもらえますか。
安 一言で言うと「配達のラストワンマイル代行サービス」と表現しています。通常のフードデリバリー事業はユーザー(最終消費者)がウォルトのアプリから商品を注文をして配達員が届ける仕組みですが、ウォルトドライブは店舗独自のアプリや宅配サイトなどから注文を受け、ウォルトの配達員が届ける法人向けのサービスです。
北川 いわばウォルトが”黒子”として法人の配達代行サービスを行う。ということですね。
安 その通りです。例えばレストラン大手の「すかいらーく」さんに導入してもらっているので、その例で話しますと「すかいらーく」さんは、そもそも自社配達をしていたのですが、よりネットワークを広げるために、ウォルトドライブも活用してもらっています。ユーザーが「すかいらーく」の宅配サイトから注文をした場合、今まではすかいらーくの配達員だけが届けていたところを、ウォルトの配達員が届けることもあるということです。
北川 なるほど。ウォルトとしては、通常のフードデリバリー事業で①店舗、②ユーザー、③配達員と関わるけど、法人向けのウォルトドライブは①店舗と③配達員だけとなる。ということですね。そのため、プラットフォーム側(ウォルト)の苦労は少し減ると思いますが、法人向けならではの開発時の苦労や日本市場ならでは難しさも出てきそうですね。
安 仰る通りです。北川さんもBtoBビジネスをしているので実感していると思いますが、特に日本の法人顧客は、サービス品質に対する期待度が非常に高いですね。そのため、例えば海外では95%の満足度であれば成功したプロダクトと考えられますが、日本では99.9%の満足度でも残る0.1%を解消するために突き詰めます。
北川 その0.1%のために動けるのがすごいですね。グローバルチームから何か言われたりしないんでしょうか。
安 まさしく、グローバルチームからは「0.1%のためにエンジニアリソースを使う価値はあるのか?」とよく言われますが、「日本市場では、そのニーズを満たさないと顧客から信用されないし、サービスの拡大や信用を勝ち取ることができない」と丁寧に説明しています。ウォルトの良さは、そういった話にもオープンマインドで聞いてくれるので、テクノロジーを改善することに注力できています。私もグローバル企業を渡り歩いてきましたが、珍しいと思っています。北川 エンジニア組織な会社なんですね。いい会社ですね。
安 そのぶん、グローバルより厳しい配達成功率、クレーム率に対する基準を設けています。問い合わせに対する回答集もグローバルより多く準備しています。サポートチームにとっては負担ではありますが顧客満足度を高めるための投資と考えています。
北川 そもそもこのサービスはどういった経緯で開発されたのですか。
安 当初はウォルトの配達員の仕事量を最大化するために考えられたサービスでした。結果的に(前編で)ナタリアが少し紹介したモバイルオーダー対応のウェブサイトを作成できる事業者向けのサービス「ストアフロント」を組み合わせれば、事業者はウェブサイトも手軽に作れ、配達の代行もしてもらえるため、中小店舗でも導入がしやすく、好評を得ています。
北川 それは良いサービスですね。話が変わりますが、当社も車両管理システムの提供などモビリティ関連事業に身を置く立場として、ここ数年の業界のホットワードは「脱炭素化」です。当社は車両効率化による車両削減やCO2排出量の見える化をしてガソリン車から電気自動車(EV)へのシフト提案など企業の脱炭素化推進を行っています。ウォルトも「モビリティ×DX」という大きな括りでは一緒だと思いますが、脱炭素・低炭素化はどういった取り組みをしていますか。
安 我々ができることとして二つあると思っています。一つ目は、配達するモビリティの種類をEVなどの低炭素なものに変えること。二つ目はテクノロジーの力で配達効率を高めて、CO2排出量を削減することです。
北川 なるほど。
安 一つ目はどちらかというと物理的なことで、我々が注力しているのは2つ目のテクノロジーの力で配達効率を高めることです。例えば、別々の2つの注文は、通常1回ごとに別々に配達します。それをテクノロジーの力を使って配達ルートを効率化し1回で配達できるシステムなどを開発しています。結果的に1回でより多くの商品を届けることができ、低炭素化につなげることができます。
北川 当社も車の走行データから「走行ルートの最適化」なども提案していますので、親和性がありそうですね。
安 例えば、フードデリバリーではない一般の配送物を考えた時に、送り手から受け手までの距離が4キロに満たない配達も一定数あると考えられます。一方で、これは、送り手と受け手の距離が近いにもかかわらず、配達業者の集荷センターなどを経由した非効率な配達があるということです。我々はそういった所にも着目し、フードだけではなく、「薬」や「小売店の商品」など近距離の法人向け配送サービスも始めています。さらに拡大していくことで当社だけではなく業界全体の人手不足解消や脱炭素化にも繋げていくことができると思っています。
(構成:鎌田正雄)
北川烈(きたがわ・れつ)スマートドライブ 代表取締役(CEO)。慶応大学在籍時から国内ベンチャーでインターンを経験し、複数の新規事業立ち上げを経験。その後、1年間米国に留学しエンジニアリングを学んだ後、東京大学大学院に進学し移動体のデータ分析を研究。在学中にSmartDriveを創業し代表取締役に就任。
安 承俊 (あん すんじゅん) Wolt Japan営業統括本部長。商社や自動車メーカー、米国のテック企業で新規事業立ち上げ責任者を歴任。インドネシアでの起業経験を持つなど、事業開発、市場進出戦略に長く携わる。2023年にWolt Japan入社し、Wolt Drive事業本部長を経て、2024年7月から現職。