やまぬ中傷 攻撃する側の原動力は 「法の不備も被害深刻に」
困難を抱える若年女性を対象にバスカフェなどの助けを必要としている人へ支援を届けるアウトリーチ活動や食事・生活用品の提供などの支援をしてきた一般社団法人「Colabo(コラボ)」。女性たちへの性搾取を告発してきた代表の仁藤夢乃さんに対して、SNS上や支援活動の現場で暴言や妨害が繰り返されてきた。相次ぐ攻撃の背景にあるのは何なのか。仁藤さんに聞いた。
――これまでどんな攻撃があったのでしょうか。
2011年にコラボを始めましたが、多くのデマや攻撃、誹謗(ひぼう)中傷を受けてきました。
最初は14年、『女子高生の裏社会』という本を出し、「JKビジネス」と呼ばれた女子高生の人身取引を訴えた時です。16年には国連の子どもの売買、児童売春、児童ポルノに関する特別報告者が日本にJKビジネスなど、性的搾取を促進し、搾取につながる商業活動の禁止を勧告しました。この時も、性売買業者からの脅迫や殺害予告、私がウソをついているというデマが飛び交いました。
児童買春の実態を伝えるため、当事者の写真や手記などを作品にした「私たちは『買われた』展」を16年に各地で開いた時も、ネットに「買ってもらえるだけありがたいと思え」などの誹謗中傷があふれました。
――ここ数年、攻撃が過激化している印象があります。
21年11月に女性キャラクター「温泉むすめ」についてXに投稿してからです。出張先で、顔をほてらせた少女のパネルを見て、驚いて調べたところ、全国の温泉地をモチーフとした地域活性化プロジェクトのひとつでした。少女のキャラクター設定として「夜ばいを期待」「スカートめくりキャラ」などと書かれていました。
Xに「性差別的で性搾取」と投稿すると、運営会社が設定を変更するなどの反響がありました。その時から、SNSでの誹謗中傷にとどまらず、私の自宅の住所を書いた殺害予告や、高級ホテルを私の名前で予約する、生理用ナプキンなどを送りつけるなどの攻撃が始まりました。
――これまでの攻撃と何が異なったのでしょうか。
行政や警察、メディアの態度です。
18年に新宿・歌舞伎町で女性たちに無料で食事や生活用品を提供するバスカフェを始めた時は、性売買業者は私たちを恐れていました。少女たちをワンボックスカーに乗せて逃げたり、直接「うちの子には声をかけるな」と言われたりしたこともあります。
ところが、近年は、バスカフェに議員やユーチューバー、性売買業者が集団で押しかけ、少女たちを無断で撮影したり、「公金チューチュー」「シコシコ」など、ひわいな言葉をかけたりしてくるようになりました。それを見ても警察は何もしない。
23年3月に東京都が、安全のためとして私たちにバスカフェを中止するように求めてきた後は、誰もコラボを守らない、何をしてもいい存在だと認識したようです。ニヤニヤした顔で、「おつかれさまで~す」などバカにした態度をとられることが増えました。
私をモデルにしたと思われるアダルトビデオもつくられました。
――SNSでは少女たちを使って生活保護費を不正受給しているといった中傷が流され、拡散されました。
そうした投稿について、東京地裁は、真実ではなくコラボの社会的評価を低下させたとして、投稿した男性に投稿の削除と賠償を命じました。高裁も一審判決を支持しました。ただ、裁判でデマだと認められても、この間に失ったものがあまりに大きすぎて、今も被害は回復していません。
これだけ騒がれるってことは何かあるんじゃないか。そうしたまなざしにさらされ続けてきました。コラボへの寄付や取材、講演依頼は減り、バスカフェも、一部の議員やユーチューバーなどの妨害によって活動場所を変えざるをえなくなりました。虐待などから逃れ、居場所がない子たちが泊まれるようにとつくったシェルターも、場所が特定され、閉鎖に追い込まれました。
――彼らが攻撃するにいたった動機、原動力は何だと思いますか。
女性差別、女性嫌悪(ミソジニー)だと思います。SNSでコラボへの攻撃を呼びかけた男性は多額のカンパが集まったと喧伝(けんでん)しています。背景には応援した人が大勢がいる。激化するのはいつも、私が少女たちへの性搾取や性売買の実態について声をあげた時です。
近くに寄ってきて、「俺は支援しているんだ」「カネを払っているんだ」と叫ぶ人もいます。
――なぜそんなに堂々とした態度がとれるのでしょうか。
日本の売春防止法が、売る側を社会の風紀を乱す存在として位置づけ、買春者を受け身な存在としていることがあると思います。
買春者を取り締まらず、売る側の女性たちを、男性を「勧誘した」として摘発するのです。
しかし現場で実際に少女に声をかけるのは男性のほうです。日本に来れば、堂々と買春できると思われているのか、外国人観光客も翻訳アプリをつかって「あなた、いくらですか?」「買えますか?」など話しかけています。
――コラボが別の場所へ移って、歌舞伎町はどう変わりましたか。
私たちの代わりに「支援者」を名乗る性売買業者が入ってきて、被害は深刻化しています。相談相手を装って、行き場のない少女たちを風俗業に誘うのです。
中高校生向けのホストクラブのようにして営業しているメンズコンセプトカフェの従業員も目立ちます。未成年なのでお酒を飲ませられない代わりに、彼らはラインストーンを貼った水のボトルを7万円で売りつけるようなことをしています。
――どのような対策が必要だと思いますか。
JKビジネスの時も、ホスト問題でも、警察や行政は、女性側に「ハマると危険」「抜け出せない沼」のように注意を呼びかける。
しかし女性を商品化し、搾取するという構造がある以上、女性の責任に帰しても社会は変わりません。
まずは買う側に「買うな」と呼びかけ、買う側を取り締まらなければならない。
性搾取、性を買うことは暴力であり、人権侵害であるということを多くの人が認識すべきだと思います。
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- 【提案】
もうそろそろ、性搾取や性売買の構造そのものに手を付けなければいけないのではないでしょうか。家庭に問題がある家出少女や、精神疾患や障害のある女性たちが従事し、搾取され、暴力的で悲惨なことになっている事実があるわけですから。ホスト達もある種の洗脳のような形で搾取をしている。そこに警察が手を付けたことはとても評価されるべきことですが、さらに背景にある根本的な問題に社会や国が本格的に取り組むべき時期が来ていると思います。生命や健康をこんな形で損ない無駄遣いしている余裕は、我々の社会にはおそらくないでしょうから。
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