「私は正しい」の社会が息苦しかった
„Frau XX! Die LinJie hat das falsch gemacht!“
「XX先生!リンジェが間違えてやりました!」
この言葉、子供の頃何回言われただろう。
ごきげんよう、元帰国子女のリンジェです。
私の子供時代は何か間違ったことをすると、あの子が間違えた!と同級生に言いつけられる。そんな幼稚園、小学校時代だった。
私が暮らしていた社会は„falsch“という言葉を他人に対して多用する。„falsch“は「間違っている」の意味。パズルも、工作も、絵の塗り方も、何もかもが「間違っている」と言われ続けた。彼らは「間違っている」ことが許せないのだ。取り返しのつくこと、正解がないことでも„falsch“であるかぎり「大丈夫」じゃない。「大丈夫」は„alles in Ordnung“。直訳すると「全てが整理されている」。一回„falsch“になると、もう„alles in Ordnung“にはならない。正しくあることが最重要な社会である。
これは一つの同調圧力の形である。「日本は同調圧力があるから。それに比べて海外は〜」なんてとんでもない。正しくない人間は糾弾され、パージされ、お上に言いつけられる、そんな社会がヨーロッパの片隅にある。
最近、そんな「正しさの押し付け」をまざまざと見せつけられた出来事があった。
結論、今やSNSで外国の声を簡単に見に行けるようになったわけだが、そういう同調圧力が国を跨いでこちらにまで来てしまうのが正直不愉快だ。
仮面ライダーガヴ28話で主人公のショウマにおんぶされながら負傷した絆斗はショウマに「お前のこと好きだ」と言うシーンがあった。
背景をものすごく簡単に説明すると、これは絆斗が敵と同じ種族であるショウマを疑ってかかったり、責め立てて傷つけてしまったことを経て、改めて「彼を信頼する」という意図を口に出したシーンである。
しかしこれがアメリカに届くと事情が変わるらしい。
「絆斗はゲイセクシャル」
「番組がWOKEでポリコレ的である」
そんなわけないだろ。番組見てないのか。
愛は多様なのだ。親愛、家族愛、友愛…フィレオ、エロス、アガペー、ストルゲー。
2人の距離感は近い。しかしそれはショウマに友達がいたことがなく、距離感がわからないからそうなっていて、絆斗はそれをわかった上でその距離感を受け入れていると言う話であって。
「距離の近い友情」をセクシャルな意味合いにしか取れないのは浅はかだと、私は思う。しかもそれをSNSで鍵もかけず発信するのも配慮がなく、視野が狭い。
彼らには女装男子のジープは「性自認が女のトランスジェンダーで、女性と結婚したから性的嗜好が女のレズビアン」とでも思っているのだろうか。本当によくわからない。ジープの性自認が何かなんて物語になんの関係もないし、そもそも「男が女の格好をする=性自認が女のトランスジェンダー」とするのが浅はかなのだ。どんな性別の人だってどんな格好をしても責められないべきだし、それを元にラベルを貼るのは「リベラル」の真逆を行っていると思う次第だ。「グラデーション」の概念を理解できないのだろうか。悲しい世の中だ。
挙げ句の果てには「ヒロインの幸果さんには変身しないでほしい。温かい日常の象徴でいてほしい」というヒロイン変身反対派に対して「ヒロインに変身しないでほしいと覆うのは女性が力を持つことを恐れたセクシスト」とレッテル張りをする始末だ。そんなこと主張してる方が彼女自身の持っている強さを見出せず、「変身」という武装でしか女性は強くなれないと思っている、女性のあるのかないのかわからない「弱さ」を盾にする臆病者ではないのか。
自分の中でそういう主張を持っていただくのは勝手なのだが、それを外に放つのは、個人的には、やはり居心地が悪いと感じる。主張は外に出した途端、相手への強要になること、それが人の自由を侵害していることに彼らは気づいていない。「私は正しい」と思うからこそ「主張」があるのであって、「私は正しい」と思うことはすなわち他人は「間違っている」、つまり„falsch“なのだ。そのひとたちを正すべく外に向かって主張するのである。
日本人が何かしらの作品を見た時のリアクションは「自分はこう思いました」という「感想」の域を出ず、周囲も「そうなんだね」と流せる人が多いと感じる。しかし主張が強い文化圏では「これは〇〇である」と発すると、それに同調するか敵対するかを迫られる。ただただ自分の感想を交換しあっていたところに、急に諸外国の意見が入ってきた途端に「正しい」「間違っている」のぶつかり合いが始まってしまう。私たちファンはただ楽しく考察したり、ネタで盛り上がったり、だらだら語りたいだけなのに。
前にも日本人が髪をブレイズにしたことでいち黒人ファンから反対意見があがり、MVが撮り直しになったことがあり、同じような話をした。
オタクの繋がりなんて趣味の繋がりなのだから楽しい方がいい。「どうして日本でオタク文化がここまでメジャーになれたか」を一考すると、日本人のマインドセットが大きな要因であるといえよう。世界は黒と白に分けるには広すぎるのだ。グレー、というよりあらゆる色彩のグラデーションを大切にする世界の方が、グラデーションの上にいる私にとっては安心だ。
私の意見は例のアメリカの黒人ファンから”xenophobic”と書かれたが、それでいいのだ。国際的に交流して人の不利益につながったり、人の自由が蔑ろにされるのなら外国の意見なんてもはや必要ない。
治安や健康だけでなく、思想も安全な世界で私は生きたい。
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