「差別禁止」も「救済」もない…その人権条例案に意味はある? 「理念だけ」掲げる京都府で起きていること

2025年3月18日 06時00分 有料会員限定記事
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 京都府が今議会に提出している人権条例案に批判が高まっている。かつて朝鮮学校襲撃や在日コリアン集住地区への放火といった深刻な事件を体験しながら、「差別禁止」も「救済」も盛り込まない「理念条例」にとどまるためだ。ヘイトスピーチ解消法は地域の実情に応じた施策を講ずる努力を自治体に求める。目の前の差別と向き合わない行政の姿勢を問うた。(山田雄之、太田理英子)

◆内容への反対意見が多かったのに…

 焦点となっているのは、19日の京都府議会の本会議で採決が行われる見通しの「府人権尊重の共生社会づくり条例案」。前文や7つの条文で構成されている。
 「全ての府民が『守られている』『包み込まれている』といった社会からの温かさを感じることができるようにする」などと共生社会の理念を掲げ、府民や事業者に理解や施策への協力を求める。ただ、ヘイトスピーチなどの差別的行為の禁止規定や罰則は盛り込まれていない。いわゆる「理念条例」だ。

条例案に反対する市民たち=13日、京都府庁前で(「住民自治で差別を許さない人権条例を求める市民有志の会」フェイスブックより)

 「差別事例が頻発する社会なのに、理想の心の持ち方をうたっただけの『お花畑』のような条例案だ」。1月にできた「住民自治で差別を許さない人権条例を求める市民有志の会」の蒔田直子さんは嘆く。
 多くの府民にとって「寝耳に水」の提案だったという。府は昨年12月12日に条例の骨子案を突然公表し、1月5日までパブリックコメント(意見公募)を実施。225件の意見の多くは「なぜこんなに抽象的なのか」「罰則がなく実効性があるのか」といった反対意見だったが、ほぼ修正されないまま、条例案は府議会2月定例会に提出された。

◆「当事者の意見も聞き取らず、意図的に…」

 京都市内では2009年、在日特権を許さない市民の会(在特会)メンバーが朝鮮学校を襲う事件が発生。学校前で「たたき出せ」「スパイ」などと怒号した。2021年には在日コリアンが集住する宇治市ウトロ地区の民家に男が放火し、計7棟を全半焼させた。両事件とも在日コリアンへの差別意識が問題とされた。
 「有志の会」は今年2月、条例案の修正を求めて要望書を提出。ヘイト被害に遭った当事者の声を聞かずに作られたことや、パブコメ期間の短さを問題視し「いったんストップし、府民参加の下で条例制定を進めてほしい」と求めた。月末までに賛同署名が紙とオンラインで計3442筆集まり、蒔田さんは「誰のための条例なのかを考えてほしい」と語気を強める。
 京都弁護士会も条例案を受けて会長声明を公表。「実効性に疑問を抱かざるを得ない。『地域の実情』を踏まえて全国的に模範となるような条例の制定が求められる」と指摘。差別的行為の禁止やインターネット上の拡散防止措置、相談体制の整備など、対処方法を盛り込むよう求めた。

京都府宇治市のウトロ平和祈念館(資料写真)

 朝鮮学校の事件当時、保護者の一人でもあった「ウトロ平和祈念館」(宇治市)の金秀煥(キムスファン)副館長は「差別を象徴する事件が自分たちの町で起きたのに、罰則はおろか差別禁止すら明示されていない。当事者の意見も聞き取らず、意図的に...

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    みんなのコメント1件

  • ユーザー
    大手町の従業員 3月23日14時20分

    ドイツ、アメリカでのパレスチナ支持の運動弾圧などの海外や新宿区のヘイトスピーチに対する法律の悪用を鑑みれば、京都府の対応は妥当です。

    自治体は、集会・デモ・ネット規制を行うのではなく、朝鮮学校の補助金除外等などの自らの差別を是正すべきです。

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