『鉄道ジャーナル』が最終号に みんなが大好きだったこの雑誌は、鉄道の意義を伝え続けた
4月21日発売のもので、鉄道雑誌『鉄道ジャーナル』が通巻704号で最終号となった。これにて休刊となる。SNSでは、最後の『鉄道ジャーナル』を購入した人の声にあふれ、「ラストラン」の雰囲気になっている。
1967年(筆者が生まれる前)に創刊されたこの雑誌は、ほかの鉄道雑誌が過去のことを扱いたがる傾向がある中、鉄道の「現在」を伝え続け、多くの人の心をとらえた。
とくに以前あった「列車追跡」シリーズは、長距離を走る列車など、特定の列車にフォーカスし、その魅力や問題点、興味深いところを発信し続けた。
筆者も同誌に2017年4月号から時折寄稿するようになり、2018年4月号からは「鉄道界の出来事」(改題して「運輸界のできごと」)を毎月担当していた。
この雑誌についてはさまざまなことが言われたものの、みんな『鉄道ジャーナル』が大好きだったことはわかる。
『鉄道ジャーナル』の存在意義とは
『鉄道ジャーナル』がほかの鉄道雑誌と大きく違うのは、鉄道の「現在」にフォーカスし、何が問題なのかを示しているところだった。その中で鉄道の社会的意義を訴え続け、公共交通としての存在感をなんとか示していた。
地方交通線の廃止や国鉄の分割民営化、高速バスの台頭、航空網の充実などがあった中、社会の中の鉄道、社会の中の公共交通ということを一貫して考え続けた。
長距離列車の現状など、ほかの雑誌ではやらないテーマをよく扱っていた。
国鉄時代からJR初期は、鉄道会社の協力も得られ、現在ではほぼ不可能な運転台添乗の取材も実施していた。
竹島紀元氏が編集長を務め、種村直樹氏がメインライターとして寄稿し続けた時期の『鉄道ジャーナル』は、非常によく読まれていた。
だが種村氏の病気や、竹島編集長の高齢による引退などがあった。竹島氏も種村氏ももう亡くなっている。
2000年代に入ると、鉄道の取材に制限がかかるようになってくる。「列車追跡」のような記者とカメラマンの組み合わせで長時間乗車し、列車内で乗務員や乗客の声を記録するような取材ができなくなった。
伝えるべき現状を、伝えられない時代になってきたのだ。
鉄道ファンの意識が都市集中に
2000年代に入ってから、鉄道はブームであり続けていた。だがそのブームは、都市部の鉄道に注目が集まることで成り立っていた。
加えて、長距離列車の減少が進んでいく。寝台特急もどんどんなくなっていき、昼行特急は途中で区間分割が進むようになる。長時間走る鉄道の魅力が、ほぼ消えた。
地方の鉄道でも利用者減が課題になり、路線網を今後どうしていくかが常に話題に上り続けている。
鉄道ファンは都市に多く住むようになり、都市の鉄道に関心を持つようになった。新自由主義的な社会の傾向もあり、地方の利用者が少ない鉄道はなくなってもいいという声が、鉄道ファンの間でも多くなっていく。
そうなると『鉄道ジャーナル』では、暗い話が多くなってくる。とくにJR北海道の話題になると、厳しさだけが伝わるようになる。
いっぽう、都市鉄道というテーマはほかの鉄道雑誌でも多く扱われるテーマであり、ネットメディアでも都市鉄道の話はよく取り上げられる。
問うべきことが、問えない状況になっていく。
しかも取材の制約が、きつくなる。それゆえにカメラマンと記者が一緒の列車に乗らず、外観はカメラマンが撮影、記者はカメラマンとやりとりなしで乗車して記録するという体制になる。私が『鉄道ジャーナル』に寄稿するようになったときには、すでにそうなっていた。
出版業界の厳しさと、鉄道業界の厳しさ
2000年代に入ってから、インターネットの普及にともない、雑誌は部数を落としていく。この間、さまざまな雑誌が消えていった。有名な雑誌では『論座』『諸君!』『週刊朝日』などが消えた。多くの雑誌では、部数減を理由としていた。
鉄道雑誌でも『Rail Magazine』は不定期刊で、年1回程度になっている。
紙代や印刷代の上昇で多くの雑誌は値上げを繰り返しているものの、それがさらに雑誌の首を絞めることになっている。
『鉄道ジャーナル』も、ページ数減少や値上げを実施した。どの鉄道雑誌も、何かあると「特別定価」の分厚い雑誌を作っていたものの、そういったことをする鉄道雑誌は『鉄道ピクトリアル』しかなくなった。なお『鉄道ファン』などは、付録をつけることもある。
また、多くの雑誌で編集者や執筆者の高齢化が進んでいる。『鉄道ジャーナル』では、46歳の筆者はまだ若い方である。
雑誌をめぐる状況が悪化し、『鉄道ジャーナル』もその流れには逆らえなかった。『鉄道ジャーナル』は休刊になるとはいってもそれなりの部数は出ていたから、もうこうなると紙の雑誌というのは難しいと考えるほかない。
鉄道業界も、人手不足や設備・車両の老朽化、経営状況の悪化という話ばかりが出てくる。華やかなのは都市鉄道ばかりで、その都市鉄道でもワンマン運転や本数減少などの縮小策が近年の話題の中心になっている。
現在の鉄道への関心の集まりは、日常生活のツールとしてということで集まっているという側面が多分にあり、それがネットの鉄道記事が読まれる理由になっていると考えられる。ネット記事の読者は都市部の人が多い。
地方のクルマ社会と、都市部の鉄道社会が分断されており、鉄道は都市圏でしか成り立たないものになった。あとは新幹線や特急である。そうなると都市部の人しか鉄道に関心を持たなくなる。
そんな中で『鉄道ジャーナル』は、鉄道の意義を、公共交通体系の意義を伝え続けた。その功績は大きく、筆者がその中に参加できたことはありがたいと感じる。
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