ネット通販大手アマゾンのサイトで、自社製品の偽造品が出品された状態を放置したとして、医療機器の製造・販売会社が「アマゾンジャパン」(東京)に対し、計約3億円の損害賠償を求めた訴訟の判決が25日、東京地裁で言い渡される。出品者が異なっても、同じ商品が同一のページに表示される「相乗り出品」の仕組みが悪用されており、アマゾン側の対応に不備があったかどうかが争点となっている。
中国業者が無許可出品か
訴えを起こしたのは、新型コロナウイルス禍で需要が伸びた医療機器「パルスオキシメーター」の製造会社「トライアンドイー」(神戸市)と販売会社の「エクセルプラン」(同)の2社。
訴状によると、令和3年8月ごろ、エクセル社が出品する2万5740円のパルスオキシメーターに、10分の1以下の価格で「相乗り出品」されていることが判明。医療機器の販売は医薬品医療機器法に基づき、都道府県知事などから許可を得る必要があるが、相乗り出品者は中国の業者で無許可とみられる。
相乗り出品は、同じ商品について、消費者がさまざまな業者の出品とその値段を一覧で確認できる。エクセル社は中国業者の安い出品に押されて売り上げが激減した。
さらに、口コミは相乗り商品のものも一緒に表示されるため、安価な商品への書き込みとみられる«まったくの偽物»«計測が不正確»などとする低評価も、売り上げに影響したとする。
同社が安価な商品を購入して調べると偽造品だったという。
自社の正規品が出品停止に
エクセル社はアマゾン側に出品停止などの対処を求めたが、削除されることはなく、逆にエクセル社側の正規品が「価格の誤設定の可能性が検出された」などとして出品停止措置になった。同社などはアマゾンに損害賠償を求め、4年9月に提訴した。
エクセル社側は、アマゾンには偽造品や無許可品の出品を防ぎ、適正に保つ仕組みを作る義務があると主張。通報でアマゾン側が偽造品の出品を知っていたのに、放置したとも指摘した。
一方、アマゾン側は、相乗り出品で同一商品かどうかを一つ一つ確認するのは不可能などとして「義務を負わない」と反論。契約の免責条項で、アマゾンが賠償責任を負わないことに、エクセル社側も合意しているとも主張している。
トライ社の藤井敬博社長は「アマゾンは販売業者にとって捨てがたい販売経路。『公共』といってよいほどの大手プラットフォーマーなので、偽商品や違法な商品に対してもっと配慮すべきだ」と訴えた。
ネット通販、偽物届くトラブル多発
手軽に商品の比較ができるインターネット通販は便利な半面、偽物が届くトラブルが相次いでいる。
国民生活センターに寄せられたネット通販での偽商品に関する相談は、令和6年度で4692件に上る。過去10年間では、新型コロナウイルス禍に入った2年度の4940件に続く2番目。ネット通販市場の拡大もあり、2年度以降は毎年4千件以上の相談が寄せられている。
センターによると、交流サイト(SNS)で見た広告から通販サイトに誘導され、偽商品が届くケースが目立っているといい、フリマサイトや大手通販サイトでも偽物が届く被害が報告されているという。
センターは「商品写真だけでは真贋(しんがん)を見分けるのは難しい」とした上で、「大幅に値下げされている商品には注意が必要」とする。特に健康食品や医薬品については、「偽物は安全上のリスクが高い」と注意を呼びかけた。
また、「偽物を売ると法に抵触する可能性がある」として、自身が出品する際も偽物を販売しないよう求めた。(橘川玲奈)