「ほぅ……存外、元気そうだな」
檻に入れられ、鎖に繋がれた二人を見下ろしていた。
どちらも昨日ハイドリヒが鎮圧した暴徒だった。
「……何なンだ……テメェ」
「私が何者か……か。生憎と私は其れに対する答えを持ち合わせておらん」
「何だと……」
考えていた。
しかし結論は出なかった。
何故、己の様な人ならざる存在が産まれたのか。
「私はな、それなりの地位と名誉を持っているつもりだ。だが、それを得ても私には何の達成感もない。卿は感じたことは無いかね?既知感と呼ぶ物を。」
「私には産まれ落ちてからの全てにそれが付き纏っている。神童だとか、黄金の君、だとか。そんな呼ばれ方をされても私はそれを当然とし受け止めれてしまう」
何と退屈なことか。
「つまり何が言いてェんだ……アンタは」
「私の下につけ、それ以外に卿等が生き残る道は存在しない」
上からの通達。
暴徒二人を死刑に処せ、もしくは己が部下として御せ。
恩恵を持たずしてLv.3以上の動きを見せた化物。
使えるのなら使いたい、そんな思惑があるのだろう。
「……敗者に権利はねェ…好きにしやがれ」
獣の世界のルール。
弱肉強食、弱者は強者に従うのみ。
単純故に分かりやすい。
「……卿はどうする?」
ラインハルトの視線がもう1人に注がれる。
少年の様でありながら少女にも見える歪な子供。
闇派閥の台頭によってその人生を狂わされた哀れな子供。
「…………一つ、聞いてもいいかい?」
「私に答えれるものならば答えよう」
「この世界に……神は居るの?」
神。
超越存在、それは存在する。間違いなく。
己の背に刻まれた恩恵がその証拠だ。
しかし、彼が聞きたいのはそんなことでは無いのだろう。
「卿の言う神が御伽噺に出てくるような『全てを抱きしめ愛する』そんな物を言うならば生憎と私はそんな善神を未だ見た事は無い」
「私の知る神とはな、未知を求め、人々の運命を操りそれに愉悦を覚える……その程度の存在だ」
「ハハ……ハハハハ!!!それもそうか……だって、本当に人に優しい神がいるなら僕は生まれてない……」
「……私は総てを愛している……故に総てを破壊する」
「……え?」
「最近気づいた……いや、目を背けていた事に目を向けた。私が触れた物は総て例外なく壊れてしまうのだ。しかし、私は総てを愛している、だと言うのに触れることすら出来なかった」
「それがどうしたって言うのさ」
「私の友が教えてくれた。ならば壊せばいいと。そういう風に産まれてしまったのだから仕方ないと、こんな欠陥品が生きながらえているのだ卿のような者が生まれたのにも意味はあるのだろうよ。」
「……お兄さんのところに入ればその意味も見つかるかな?」
「さてな、そんな物は自分で見つけるしか無かろうよ。」
「分かった………僕は貴方の下につく……それが僕が生まれた意味だと思いたいから……」
×××
「………」
夢を見ていた。
懐かしい夢を。
「お目覚めですかな、我が友よ」
「あぁ……随分と懐かしい夢を見ていた気がする」
爪牙が集った時の、暗黒期の夢。
自身の道が定まった時の。
「始まるか」
「えぇ、貴方が求めた英雄の光が、恐怖劇が……今宵、始まる」
怒りの日が、始まる。