アイズに黄金の獣な兄を生やしたみた。


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作:匿名希望
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暗黒期


暗黒期と呼ばれた時代。

オラリオの歴史の中で最も時代が動いた転換期。

そんな時でも人々は宴を開き、夜会を楽しんでいた。

そこに彼もまた居た。

 

「いやはや、貴方は神ロキが言う通りの御方でしたな!」

 

「全くその通りだ!!」

 

「「「我らが『黄金の君』に!!」」」

 

オラリオの中でも富裕層に位置する者達が男を囲み、杯を掲げる。

男はそんな周囲をつまらなそうに見渡していた。

 

「私はその様な者ではありませんよ…私は命じられたことをそのままやっていたにすぎません」

 

ーーーーー既知感。

 

幼少期からついて回る呪いのようなナニカ。

初めての経験のはず、初めての戦のはず、初めて出会う神のはず。

だと言うのに、自分はそれを知っている。

故に、何かを成しても、戦に勝っても、何の達成感も感情も得られない。

 

詰まらない。

既知に溢れたこの世界が。

詰まらない。

そう言いながら己で死ぬ事すら出来ぬ自分自身が何よりも。

 

「閣下!!少々お時間を……」

 

「何だ」

 

治安維持に関わる他派閥の者が駆け寄って報告を上げてくる。

 

「そうか……申し訳ない。少々用事が出来た故失礼します」

 

自分が出向く必要も無い。

 

「果たしてこの用事とやらに貴方は必要だったのか」

 

ここ数日で聞きなれた声が背後から飛んでくる。

 

「体のいい口実に過ぎんよ」

 

「でしょうな。して、貴方は何に悩んでいるのか」

 

白々しい笑みを浮かべ、男が問う。

 

「悩みの種を植えた卿がそれを聞くか」

 

「えぇ、私でなければこんなこと貴方に聞くこともできますまい」

 

当然であった。

自身の肩書き、成した偉業。それ等を加味すれば己に何かを意見してくる者などこの場にはいない。

 

「……私はな、卿が言うほど面白味のある男では無い。それは私自身がよく理解している……しかし、だ。卿の言葉からは私以上に私を理解している。不思議とそう思えた。」

 

何十年も自分の隣を歩いている様な、そんな気さえしてくる。

有り得ない。

産まれてから一度たりとも自身の隣を歩けた者など居ないと言うのに。

 

「くく……それが貴方の悩みだと?」

 

「そうだ」

 

「私に嘘は通じない……私は貴方を知っている。故に、貴方が本当は何に悩んでいるのか、それも知っている。」

 

「貴方は……」

 

言葉は続かなかった。

 

「お話中失礼いたします!」

 

燃えるような赤い髪の女が割り込んできた。

その顔に見覚えがあった。

 

「卿は確か……」

 

「はっ!ガネーシャ・ファミリア所属『エレオノーレ・フォン・ヴィッテンブルグ』であります!」

 

闇派閥が表に出始めて直ぐの頃だったか、一度だけ彼女達を指揮した事があったのを思い出す。

 

「それで、卿は私に何用か」

 

「先程のお話聞いておりました、我々も同行させて頂きたく……」

 

「構わん、好きにしろ。だが自派閥からの処罰に関しては覚悟しておくことだな」

 

「ッ!!ありがとうございます!!」

 

×××

 

「よろしかったので?」

 

「構わん、居ても居なくてもすべき事に変わりは無い。着いてくるのだな?カール・クラフト」

 

「勿論。貴方を運命に導くと約束したはず、時期に生まれる英雄の光とも言えるソレに貴方を導くのが私の役目だ」

 

「予言か?」

 

「いいや、単に知っているのですよ。私は」

 

×××

 

暴徒鎮圧。

今のオラリオでは有り触れた職務。

 

「……何モンだ……テメェ……」

 

神の恩恵の影響か、あるいは別のナニカか。

目の前の男は常人以上の力を発揮していた。

 

「見下してンじゃねぇ!!」

 

己を殺さんと突き出された一撃を受け止める。

 

「……それだけか?」

 

胸の内で何かが渦く。

 

「…ッ……ガァァ!!!」

 

蹴り、突き、あらゆる攻撃を受け止め続ける。

足りない。

 

「……もう一度問おう、それだけか?」

 

まだ、足りない。

数刻前のカール・クラフトとの問答が引っかかる。

貴方は本気を出したことがない。そう言われた。

その時に出した答えは否定だった。有り得ないと断じた。

本当にそうなのか?

己は今まで成したことに全力を投じたか?

 

それこそ、否。

 

全力を出してしまえば壊れてしまう。

私はこんなにも愛しているのに。

カールは言った、ならば愛して破壊してやればいい。

そういう存在なのだから仕方ないと。

蓋をしてきたそれを思い出してしまった。

知っていたでは無いか、自分は。

 

「私は」

 

振り抜いた拳一つで暴徒が吹き飛ぶ。

そうして胸の内から沸き立つ感情。

 

「そうだ……私は!!」

 

自身を止めんとする赤髪の女も、その部下も。

自身に向かって来る暴徒の1人も。

全てを薙ぎ払う。

 

「私は総てを愛している!!!」

 

全てを愛そう。

其れが私の愛の示し方なのだから。

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