「さーてこれからどーすっかねぇ」
そう言えば防具の一つも発注しとけばよかったかなぁ。団服も
原作でも、ベル君がLv.2に【ランクアップ】した直後で装備整えるエピソードだったか、話題の新人に贔屓にしてもらえれば、鍛冶師自身のステータスになるって。この場合のステータスってのは、名が売れるとかそっちの意味ね。オッタルさんが推薦するぐらいなんだから十分誇ってもいいんだけど、そこは【ヘファイストス・ファミリア】のブランド力には負けるんかねぇ。とりあえず囲うな引くわ、ってのが俺の正直な気持ちだけど。俺自身は結構どうでもいいと思ってるんだけど、俺の名前で良ければ客寄せパンダっつーか、宣伝になるぐらいはね。この先お世話になるんだし。
なんて事を考えてるうちにバベル前に到着。このまま帰ってもいいけど、聖地巡礼が全然済んでないので、少しは消化しておきたい所ではある。あるんだけど……。
「おいアイツ、例の【フレイヤ・ファミリア】の……」
「
「おい止めろ、相手はあの【フレイヤ・ファミリア】だぞ」
「どうせ大した事ねーって、ちょっと揶揄ってやるかぁ?」
全部聞こえてんだよなぁ……。そういやベル君も強火ファンに最初はケチ付けられてたんだっけな。はーやだやだ。そんなに妬ましいなら食糧庫に突っ込むなり、キラーアント無限呼びとかいくらでも手段あるだろうに。おのれ無法の街オラリオめ。やはり暴力で全てを解決するのが一番なんか? そんな暇あったら『突撃お前ら
「あの……」
何てことを考えてたら、控え目な声がかけられた。性別は女、年は……若いかな。
誰やねん、今からお取込みになるかも知れんから離れといて欲しいんだが? と視線を向けた俺は、声の主の姿を見て目を丸くした。
腰のあたりまで伸びる金の長髪に、同じ色の双眸。顔は整っているが、表情の薄さが何処となく人形めいた美貌。肩と背中が剥き出しな露出の高い服。原作開始前のせいか、おっぱい含めて若干縮んでる様なイメージこそあるが、そこにいるのは間違いなく
「げぇ! 『剣姫』ィ!?」
あっぶね。俺にちょっかい出そうと近付いていたあんちゃんが、彼女を指差して叫んでなかったら、俺がやらかすとこだった。それよかお前無駄に指差すなや。
「あの『剣姫』が世界最速に声を……?」
「一体、二人はどういう関係なんだ?」
初 対 面 で す が な に か ?
「オザキ・琥珀さん、ですよね」
「はいそうです。はじめまして」
言って会釈すると、ハッとした顔でおずおずと頭を下げる『剣姫』さん。
「……アイズ・ヴァレンシュタインです」
原作で16歳だから……いまは12か13になるのか? どうにもこう、知ってるつもりだったけど天然さんだなこの子。
「あの、どうやって……?」
コテンと首を傾げてそう問うて来た。会話で詠唱破棄するのはやめてもろて。
「うん? ……あぁ、クソ早【ランクアップ】の秘訣と言うか、経緯が知りたい感じかな?」
人形姫だの戦姫だの言われてる子だから、聞きたいのはそういう事なんだろうと答えると、目を輝かせてコクコクと頷いていらっしゃる。小動物みたいだな?
「まず
途端、シン……と周囲が静まり返る。ふむ?
「次にオラリオへ来たら、【フレイヤ・ファミリア】に加入して、一ケ月程『洗礼』への参加になります。Lv.1から4までの眷族による半ば殺し合いじみた訓練ですが、『
「「「「「「「出来るわけあるか!!」」」」」」」
おっとぉ? あぁ右腕生えてるから疑われてるのか。それともオッタルさんと握手するのが怖いのか? あれで結構気さくな人なのに。
「噓吐き」
「本当だよ? 右腕は生やせばいいし」
プクッと頬を膨らませた少女に小首を傾げて答えると、先程ちょっかいかけようとしていたあんちゃんが喚き立てる。
「だったらこの場で腕生やせるってのかお前は!? あぁ!?」
そ の 言 葉 を 待 っ て い た
チャンイチの卍解を待っていたアズギアロ・イーバーンばりの笑顔であんちゃんの方に向き直り、ズカズカ歩み寄る。彼が後退るよりも早く腰の長剣を抜くと、徐に右腋へ挟み込む。
「宜しい、ならば実践だ」
言って躊躇なく長剣をカチ上げる。痛ァい!? つーか切れ味悪いなこれだから西洋剣は……仕方ないのでカチ上げた長剣を振り下ろす。無事切れたな、ヨシ!!
バベルの真ん前で突如右腕を切り落としたトンチキ世界最速な俺に、あちこちで悲鳴が上がるが知ったこっちゃねぇ。右腕を墓地に送って巨剣刃を出現させてやる。因みに右腕は蒸発する感じで消失した。これが爆発四散だったら阿鼻叫喚の地獄絵図だったな。何にしてもお説教かな? フレイヤ様にちゃんとごめんなさいしよう。
「体表を覆う鱗は堅牢ですが、肚ン中は柔らかいものです。喰われた右腕を触媒に攻撃すれば、簡単に捌けます。但しリスクは高いので、用法・用量を守って正しく使用して下さい」
腰を抜かしてガクブル状態のあんちゃんだが、しきりに首を横に振っていらっしゃる。ここからが俺の真骨頂なんだが? 世界よ、これが俺の回復魔法だ!!
「【我が背の君に
グロとかゴア風に……と思ってたら、ギュゴォ……ドン! って感じで、右腕が生えて来やがった。ウルキオラ戦後のチャンイチが、超速再生で胸の孔を塞いだ時の右腕バージョンって言えば伝わるだろうか? 金色の燐光が渦巻いて右肩に集まったと思ったら、即座に生えたわ。蒸気だか煙を上げてる右腕でグーパー繰り返し、肩も回して動作確認。今回は水気をそこら中にブチ撒けず、環境に優しいエコな再生だったな……。右腕切り飛ばしたのは絵面最悪だが。
「……と言う訳で、右腕の再生も無事終わりました。これで御理解頂けましたか? 先輩」
笑顔でそう問えば、あんちゃんは泡吹いて地に伏した。なんだ根性ねぇなもう。
「大丈夫?」
「おん? あぁへーきへーき、二度目だしちゃんと動かせるし」
心配そうなヴァレン何某さんに手をひらひらさせると、何が興味を惹いたのか生えた右腕をツンツンしてきた。
「すごい、ね」
「すごかろう?」
おっかなびっくりで腕をつつくヴァレン……いやもうアイズちゃんでいいか。そんな彼女の反応に、俺もご満悦である。
「街中で魔法を使ったのは何処の誰!? そんな不届き者は私が見逃さないわ!!」
「俺ですけど使ったのは回復魔法です……よ?」
複数の足音が近付いてきたと思ったら、そんな大声が聞こえたので振り向けば……そこには【アストレア・ファミリア】の御三方が。そう言えば全滅免れたんだっけか。一度見かけたアーディさんまで一緒とは。
「これはこれは
「右腕生やせるわけねーだろって煽られたんで、再現しただけですよ。若気の至りって事で、ここは一つ穏便に」
極東の装束を身に纏う黒髪美人が、俺の言葉を聞いて袖で口元を隠して目を細めた。おー怖……と言いたい所だが、生憎ヘルンさんでその手の視線には慣れてるんよ。
「それなら、輝夜の腕もいけちゃったりするのかしら?」
「他人の再生は試した事ないので、分かりません」
「ならアタシの目で試してみてくれよ」
桃色髪の小人族が、自分の眼帯を指差しながらそう言うので、腰を曲げて目線を合わせ「失礼しますね」と眼帯をめくって軽く触ってみる。……こうして他人の魔力を見るのって何気に初めてだけど、成程こんな感じなんだな……。ふむりふむり。
「この場で治します? それとも場所変えた方がいいですかね」
「いけちゃうの!?」
「目玉ならインファントドラゴンと戦ってる最中に再生出来たんで」
「マジかよ……」
「この場でと言うのは流石に……ホームまでご同行願おうか」
輝夜さん素になっとるがな。動揺しすぎちゃうのん? ……いや逆算すると二年ぐらい隻腕だったり隻眼だったのが治る、もしくは治るかもってなればそうもなるか。つーか、署までご同行願うおまわりさんみてーだな? 実質おまわりさんみたいなもんか。
「はいな。そんじゃまたね? ヴァレンシュタインさん」
「アイズで、いいよ?」
「そう? なら今度からそう呼ぶよ」
やたらテンションたけーアリーゼさんに手を引かれながら、そう言ってバイバイする。
「待って」
「うん?」
急に足を止めたせいで手を引いてたアリーゼさんがつんのめったが、あえてスルー。
「どうして、強くなりたいの?」
「どうしてってそりゃ目標があるから」
目標、と小さく呟くアイズちゃんに一つ頷いて言葉を続ける。
「そ。下界最強……それが目標」
世界一
「なんで?」
「死にたくないから、かな。続きはまた今度ね」
何故かライラさんまで俺の手を引っ張り出したので、今度こそ俺はその場を立ち去るのだった。