オラリオのなんちゃって滅却師


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作:まほうのこな
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──ただ俺の──……魂にだ!!


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 アンチ・ヘイト(※念の為)とフレイヤ・ファミリア、滅却師、頭十一番隊の計4件を作品タグに追加しました。
 裏タイトル「犠牲者 一人 一柱」な第8話となります。それではどうぞ。

 



 美の女神フレイヤの神室。

 その場にいたのは部屋の主とその付き人。更には右の二の腕から先が無い琥珀の3者であった。

 

「成し遂げた『偉業』はここに刻んだ。【ランクアップ】よ、琥珀。……本当に素晴らしいわ」

「………はい、ありがとうございます」

 

 このやり取りだけを見れば厳粛な雰囲気以外存在しないのだが、その胸中はと言えばそれはもう余人にお見せ出来ない代物である。

 

(ッッッッシャオォォルアァァァァァァァァァァ! どーんなもんじゃーい!! ……おっと、興奮のあまりついつい取り乱した。さて、発展アビリティはどんなんが生えたんだろ? 酷使された回復魔法に因んで魔導? 一ヶ月袋叩きに遭った(サンドバッグにされた)事実から来る耐久系かな? それともまさかのし・ん・ぴ? いやぁ、テンション上がって来た早速『洗礼』にお邪魔しても宜しいでしょうかってそう言えば出禁だったなそれじゃダンジョンにちょっくら潜るか? 今なら『迷宮の楽園(アンダーリゾート)』単独行も夢じゃないなオザキ・琥珀十八歳! 好奇心が、マックス抑えきれません! 俄・然・盛・り・上・が・っ・て・参・り・ま・し・た・! ……いかんいかん落ち着け俺。ここはこの喜びを胸に刻むのみにしてだなって抑えられるわけあるかっつーのイヤッホオォウ!)

 

 頭戦闘民族な眷属の胸中は大体こんな感じだったが、仮に声に出していたとしても『コイツがイカれてるのは通常運転(いつものコト)だしな……』とスルーされる程度のものだった。……少なくとも、現状のままダンジョンに潜ろうとすれば『戦場の聖女(デア・セイント)』と『魔女の黄金(ヴァナ・マルデル)』が助走をつけて殴って来るレベルの暴挙&軽挙なのは間違い無しだった。

 

 次に女神フレイヤだが、彼女の品性に関わるので詳細は伏す。一ケ月前の醜態? それ以上の言及は禁忌である。さておき、比較的穏当な(ふんわりとした)表現をするのならば『心の中の『娘』が団扇を両手に狂喜乱舞している』と言う感じだ。今日も大層ご機嫌のご様子であらせられる。尚、団扇にはそれぞれ『私を射止めて』『むしろ射止めたい』などと記されている。余談だが、それらを表に出さない自分を褒める事も忘れていない。美の女神とは気高く品のある所作が肝要なのだ。内面? そっとしておこう。

 

 最後のヘルンだが、まぁヤバかった。何がヤバいって、目の前で女神に跨られている男の評価が『古今無双の不敬者』から『ちょっと気になる(おのこ)』に昇格していた。正史における世界最速兎(レコードホルダー)も驚愕の【ランクアップ】である。とある事情により主神の影響を受けやすい彼女は、狂信者と言っても差し支えない程度の乙女()である。しかしインファントドラゴンから自分を庇い、右腕を犠牲にし、左半身を灼かれても諦めず、彼女に累が及ばぬ様距離を取りながら戦い、遂には単独で撃破せしめた男。剰え、帰路において自虐する彼女に『貴女自身がどう思っていようと、御方の特別の一つだって自覚した方がいいのでは?』などと、宣う始末である。別種の戦いでも自分を死地に晒す特殊性癖の持ち主かと疑う発言であった。

 

実際の戦闘は余人から見れば文字通り化け物同士の争いだったがそこはさておき、ヘルンをチョロいと笑うべきか、紛う事無きクソ野郎に脳を灼かれた事を同情すべきかについては、有識者の見解が待たれる所である。

 

 そんな三者三様の見た目天国胸中地獄絵図な光景からそっと目を逸らすとして、オザキ・琥珀の【ランクアップ】に話を戻す。

 

 所要期間、約一ヶ月。

 事実としては『冒険者登録初日』だったりするが、単純に申告遅れと言う事で『神の恩恵(ファルナ)を刻んでからの期間』が、公式の記録として残される事となった。正史の世界最速兎より半月速いイカレ具合である。

 

 モンスター撃破記録(スコア)、三百前後。

【ギルド】の主神であるウラノスが直接問いただした結果『正確に数えたわけじゃないけど一階層あたり三十ぐらいは()った』との発言が嘘ではなかった事を確認した末に『じゃあそれでいいよもう』と【ギルド】が承認した記録となる。要は、匙を投げたとも言う。

 

 そしてLv1.の最終【ステイタス】は以下の通りである。

 

 オザキ・琥珀

 

 Lv.1

 

 力 :S999→SS1086

 耐久:S999→SSS1392

 器用:S999→SSS1256

 敏捷:S999→SS1016

 魔力:S999→SSS1467

 

《魔法》

 

【デア・ヴァナディース】

 ・広範囲回復魔法

 ・一定時間毎に精神力を消費し、継続的に高速自動再生(リジェネレイト)を付与する。

 ・短文詠唱

 ・光属性

 ・詠唱式【我が背の君に(こいねが)う、絶えざる闘争、黄金(こがね)豊穣(めぐみ)、汝の加護(あい)を与え給う】

 

【】

【】

 

 後述する事になるが、ここでは【スキル】については割愛する。

【魔法】の効果が変化しているが、これは偏に術者の使用感と言うかオサレとは程遠い戦い方がそれはもう強く影響しているだろう。

 

「それで『発展アビリティ』なのだけど……」

 

 珍しく言い淀むフレイヤに小首を傾げる琥珀。何か変なん生えたんだろうかと不安がよぎる。

 

「私も初めて目にした物だし、聞いた事すら無い。稀少なのは確かなのだけれど、不確定要素がある以上は……ね?」

「因みに何と言う名称で?」

 

 何気なく尋ねる眷属に、主神は頬に手を当てたまま沈黙している。その瞳に浮かぶのは、困惑と逡巡。

 

「その……ね? 滅却師と」

「ありがとうございます! ありがとうございます! 例え死のうが生まれ変われようが、絶対に剥がれない様にソイツを刻んで下さい! 背中と言わず魂に! ハリー! ハリー! ハリー!」

 

 喰い気味の返答と共に、喜びと感謝に満ちた魂の輝きが美の女神を襲う。

 

「嗚呼ッ!」

「フレイヤ様!?」

 

 目にしてはいけない(とても活きの良い)美の女神が下界に顕現する。実に二日ぶり、二度目の事であった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ☆

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 ──さて。

 紆余曲折あったものの、オザキ・琥珀の【ランクアップ】は無事に──大事(おおごと)ではあったが、この日オラリオに光の柱が屹立しなかったので不問と言う事にしてもろて──行われた……のだが。

 

「これは一体……」

 

 女神フレイヤ、本日二度目の困惑と驚愕である。

 琥珀の背に刻まれた【神聖文字(ヒエログリフ)】の羅列を共通語(コイネー)に書き換えながら、次第に美の女神の眉間に皺が寄せられる。その様子を横で見るヘルンの目にも困惑と焦燥に似た色が浮かんでおり、インナーに袖を通している当人だけが、不思議そうに首を傾げていた。

 

「琥珀……滅却師と言う名に、心当たりがあるかしら?」

「えぇまぁ、俺の原点ですから」

 

 如何にも誇らしげに、それでいて無邪気な子供の様に男は笑う。輝きはそのままながら、何処までも透明な魂の在り様に、美の女神はトゥンクしたりキュンキュンしたりする一方で、安堵の溜め息を漏らした。

 

「そう……それなら大丈夫ね。けど一応言っておくわ。心してこれを読みなさい」

 

でなければ私の方が保たないから。と言う懇願はあえて胸中に留め置き、フレイヤは【ステイタス】を書き写した羊皮紙を琥珀に手渡す。

 

「はぁ……分かりました」

 

 生返事もそこそこに、受け取った羊皮紙に視線を落とす男。読み進めると共に、彼の双眸が見開かれ、羊皮紙を持つ手に震えが走る。

 

 

 オザキ・琥珀

 

 Lv.2

 

 力 :I0

 耐久:I0

 器用:I0

 敏捷:I0

 魔力:I0

 

 滅却師:I

 

《魔法》

 

【デア・ヴァナディース】

 ・広範囲回復魔法

 ・一定時間毎に精神力を消費し、継続的に高速自動再生(リジェネレイト)を付与する。

 ・短文詠唱

 ・光属性

 ・詠唱式【我が背の君に(こいねが)う、絶えざる闘争、黄金(こがね)豊穣(めぐみ)、汝の加護(あい)を与え給う】

 

【】

【】 

 

《スキル》

 

星章騎士(ヴェルトリッヒ)

 ・その効果は魂が識っている。

 

聖文字(シュリフト)”F”『狂乱(ザ・フレンジー)』】

 ・その効果は魂が識っている。

 

英雄渇望(タタカイヲモトメルカタチ)

 ・その効果は魂が識っている。

 

 

「成程…………」

 

 薄く笑みを浮かべてそう独り言ちた琥珀は、真剣な表情で女神に向き直ると、深く頭を下げた。

 

「今後、尚一層の精進をお約束致します」

 

 眷属の深い感謝を浴びながら、美の女神は三度目の見せられない姿を出さぬ様必死に堪えるのだった。 

 

  




 後日主人公の考察と言う形で説明しますが、ザックリ言うとレベル1時点で生えていたスキルが統合され、発展アビリティに昇華したと思って下さい。新たなスキル群の「その効果は魂が識っている」も同様に、作中で主人公自身に語らせるので、しばらくお待ちいただければと思います。

9話の内容はどれがいいでしょうか

  • フレイヤファミリア内での絡み
  • 他ファミリアとの絡み
  • 豊穣の女主人亭関連
  • 上の全部(二話以上になる予定)
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