「お前の参加は認められない」
「洗 礼 出 禁 と か 俺 に 死 ね と ?」
眼鏡をクイッとした腹黒ド畜生クソ眼鏡に真っ向からキレると、彼と団長以外の6人……フヒヒ系黒妖精とか俺様系猫人やキャラ付け大変そうな四つ子さんが『マジで言ってんのかよ……このキチガイ』みたいな真顔で俺を見つめなさった。なんでや! 『洗礼』大事やろ!
「……四人だ」
如何にも厳かに……つーか、寝てる時でもイカつい顔してそうなオッタルさんが、めっちゃ重々しい口調でそう切り出した。
「何がですか?」
「貴様が【ディアンケヒト・ファミリア】送りにした人数だ」
またまた御冗談を。
と苦笑交じりに同意を求めたが、この場に味方は皆無だった。
「週一ペースで誰かしら心が壊れるとか、ちょっと異常事態なのでは?」
「フフフ……さささ、災厄の中心はお、己が罪
「誰が病院送りの原因なのに無自覚だってんですか……少なくとも周りみてますって。でねーと毎日死んでまうし」
皆さん毎日目が血走ってるし……。と愚痴ればクソ眼鏡がレンズ光らせるしフヒヒさん……じゃなかったヘグニさんも目ぇ輝かせてるし、四兄弟と猫人はまたしても『マジかよ』って顔してらっしゃる。オイそこのド畜生様新しい通訳見付けたみてーな雰囲気出してる場合じゃねーですよ。
「どれだけ否定しようと貴様の仕業だ」
えぇ……?
鋼の如き意思を込めたオッタルさんの言葉に、困惑しか浮かばない。考えてみて欲しい。美の女神たるフレイヤ様に魂の輝きを認められた『フレイヤ様しゅきしゅきらぶらぶちゅっちゅ』な連中が毎日殺し合い同然の闘争に身を置き、それが終われば食の闘争に明け暮れる【ファミリア】の一員でしょ? 個人的には、第三の闘争として美の女神の寵愛を賜りたい『性の闘争』を推して然るべきレベルのアタオカ勢揃いだ。
対して、同じ様に日々闘争に明け暮れていたとは言え、田畑を荒らす猛威(野生の獣)や、カスみたいな魔石しか宿してない劣化版モンスター相手だった俺に纏わりつかれたとして、肉体じゃなくて心が壊れたって言われてもなぁ……?
「どいつもこいつも根性足らんのでは?」
首を傾げると共に、思わず心の声が零れ落ちる。
「いやその理屈はおかしい」
「そもそもお前の戦い方と言うか『洗礼』に対する心構えがおかしい」
「と言うか、手足もげそうでも治しながら戦い続ける
「「「そ れ な」」」
【
「そんなん、ダンジョンに行けばいくらでもいるのでは?」
実際、ガキん頃に遭遇した在野のモンスター共とか、野生の獣と違って敵前逃亡何それおいしいのって感じで、どいつもこいつもヤられる前にヤれな精神だったし。なんなら頭半分欠けても殺しに来るぞアイツら。アレがデフォだと思ったからこその
それはさておき、毎日毎日新鮮な獣の肉確保ついでに魔石目当てでモンスター狩りまくってたけど、クッソ安かったのは本当にやるせなかったよなぁ。月一の頻度で行商人に売り付けてたけど、一山いくらって感じで買い叩かれたんよなぁ……。何なら野生の獣の骨とか毛皮のが高値やぞ?
『学区』の連中はもっと頑張って、どうぞ。……まぁ、俺の故郷は『朝廷』も把握してないよーな僻地だろって言われたら、ちょっと否定出来ないんだけどさ。
「手前ェはダンジョンを何だと思ってるんだ」
「里で遭遇したモンスターよりヤベーのと魔石がセットで湧き続ける地下洞窟?」
「……間違っちゃいねェが根本的に分かってねェだろ」
それはそう。
つーか一ヶ月近くも『
「そうと決まればダンジョンね」
何が『そう』なのか、そして何が決まったのかよく分からんが、フレイヤ様が入室と同時にそう言った。俺としては『洗礼』と言う実験の場……じゃなかった、実践の場が取り上げられた格好なんで、有難いっちゃ有難い。後意外に重要と言うか大切な事と言うか……「出来る事が増えた」のは確かなんだけど、本当に強くなってんの? と言うか、成長した実感? みたいなモンが足りないと感じてたりする。だからこそ、四人病院送りにしたって言われても『へぇー』ぐらいにしか思わないし、そもそも犠牲者の心当たりが初日のパイセンしか無いって言う。【ステイタス】?
「と言うか、『ギルド』への登録とかどうなってるんですか?」
「そう言えば、してないわね。ヘルンに案内してもらいなさいな」
軽いなぁ。まぁ自由奔放つーか勝手気儘なのは本神の性質だし、所詮
「折角だから【ステイタス】の更新をしておきましょうか」
「更新ですか……
と感慨も深く答えると、何故か沈黙が舞い降りた。……なんで? 幹部連中が揃って真顔になる中、フレイヤ様はニッコニコである。今日も女神の顔がイイ、大変にビジュ良であらせられる。これで中身も伴っていれば、尚良かったんだけど長所も短所もあった方が親しみも湧こうってモンである……多分。促されるままに上着とインナーを脱ぎ、ベッドに寝そべると腰のあたりに重みと柔らかさを感じた。わざわざ寝そべったり跨られたりする必要ってあるんですかね? 気分? そうですか……。こそばゆいから撫でるの止めてもろて。つーか手付きが妙にねっとりしてない? 見えないから分からんけど女神がしちゃイケナイ顔してそーで怖い。
「……嗚呼、何て素敵な輝き…………」
あまりにも色っぽい吐息、俺じゃなけりゃバベル(婉曲的な表現)がそそり立っちゃうね。……そう言えば原作のフレイヤ様とか見るだけでもヤベー筈だったよな? 外出するにもフード目深に被っても、そこにいるだけで耳目を集めるみたいな描写されてたと思うんだけど……。とその時、俺に電流走る────!
まさか滅却師を極めんとする者に魅了など無粋……ってコト!?
やっぱ師匠は偉大だわ……きっとあの人がオラリオ転生したら、ポエム一つで
「嗚呼ッ!」
とか考えてたら、俺に跨ってたフレイヤ様が何やら感極まった声上げて、そのまま俺に覆いかぶさって来た。お、まてい。そう言うプレイは当店禁止となっております。幹部様方が俄かに騒ぎ立てる中、背中に感じていた重みが軽くなったので、身をよじって様子を見ると
俺の視線に邪な物でも感じたのか、ヘルンさんが殺気交じりに俺を睨み付ける。塗り潰した様な真っ黒い瞳が、なんだか色んなモノがグルグル渦巻いてる様に見えるんだが……目からビームでも出すつもりでいらっしゃる?
そう言えば聖文字で思い出したんだけど、
まぁ誰の『神の血』でも恩恵の効果は画一化されたモノで、成長過程や結果はあくまで刻まれた当人の素質や努力の結晶なんだけども。あくまで促進剤って事らしいけど、突出した才能や恵まれた血筋やら運命とかに愛されるタイプに取っては起爆剤ぐらい劇的な効果があるんじゃないかと。例えば、
……俺? 転生者だったり前世知識の
俺 自 身 が オ サ レ に な っ ち ゃ う な ?
何を言っているのか分からないと思うが俺にも全然わからない。雰囲気で滅却師をやっている。細けぇ事ぁいいんだよ! 人生に必要なのは
……正直に言えば、自分が生まれ変わったと認識して以降、開き直ったからってのはあるかな。
これは本当に実感してると言うか、耳かっぽじって聞けお前らと思う。確かに異世界転生って心躍るし、その世界で前世のアレコレを活用して物語の主人公になるってのは夢だ。けど、ファンタジー世界だぞ? ネットやらの情報媒体なんてありゃしないし、魔法やら何やら自分の知らない文化圏だ。〇〇について教えてくれって言っても、必要な情報が出るなんてそうそう無い限界集落の生まれだぞ?
前世の持ち越し分が利用出来るなら、全力で活用するだろ
これは、体験したからこそ理解出来た事だ。まぁ前世の常識や何もかもが
だったら願っても良いだろ。
妄想だろうと虚栄だろうと、夢見がちで不相応な望みだとしても。意図も打算とか全部かなぐり捨てて、汚れも穢れも残さず呑み込んで……産まれ堕ちたなら、死んだも同然。そんなこの身に高望みが過ぎる渇望って奴を、他の誰にでもなく、ただ自分の魂に誓って、何が悪い?
俺は……世界一
「フレイヤ様っ!?」
ヘルンさんの切羽詰まった声に脳内自分語りから現実に戻ってみれば、陸に打ち上げられたマグロの如く全身をビチビチさせてる御主神様の痴態が視界に映った。
……美の女神が駄女神に見えるんだけど気のせいかな? 現実だった。よく見なくても口から泡拭いてるわ白目剥いてるわで、言い逃れ出来ないぐらい酷い有様だった。何してんだこの
……一人と一柱を除き誰も彼もが俺を睨んでるけど、知らんがな。