【フレイヤ・ファミリア】の本拠点『戦いの野』では、2つの闘争が毎日繰り広げられている。
1つ目、Lv.1から4までの団員達が朝から夕暮れまで殺し合い同然に争う『洗礼』。
2つ目、団員同士の殺し合いから一転、本拠内の『特大広間』で行われる盛大な晩餐。彼らが貪る様に食事をする様は、食の闘争と形容される程である。
「そらまーあんだけ血肉ブシャーしてんだから補充せなならんわな……」
そんな闘争の場である『特大広間』の片隅に、フォークに刺した猪肉をナポォ……と頬張る一般通過転生者、即ち俺の姿があった。口に放り込んだ肉をモニュモグとしっかり味わっている事から分かる様に、食欲は旺盛だ。そして脳の方は絶賛フル回転中だったりする。
前世の知識と今世で掴んだ感覚、加えて当人のノリに培われた『滅却師闘殺法(本日命名)』は他ならぬ美の女神に刻まれた『神の恩恵』によって【スキル】として発現したわけだが、文字通り世界が違って見える程の効果を齎した。
今までふわっとした感覚から手探りで猿真似していた数々が、【スキル】として明文化された事で解像度が上がった、或いは背中に添付された取説のおかげで使いやすくなったと言うか。それにしても「俺の【ステイタス】はこれでーす!」って背中に貼りつけてんのって本当にえぇのか? と思わんでもない。機密情報ちゃうんかこう言うのって。それともアレかな「俺は【ファミリア】に属してます」って感じの認識票扱いかなんかか? オラリオに入る時、背中を見せろって言われたし。その辺ちゃんとしてる主神様なら錠とかの防衛手段は講じてくれてるらしいけど。別に何処ぞのロリ巨乳様を貶める意図はない、決して。
それはさておき、発現した【魔法】と【スキル】について改めて考えてみる。
まずは【デア・ヴァナディース】とかいう欲張り回復魔法。範囲回復魔法って超優秀な気がするけど、今日の様な乱戦と言うか、俺以外みんな敵なんて状況では範囲の有用性なんぞ皆無だった。俺以外みんな敵だからね仕方ないね。どっちかっていうと、オマケ要素かと思ってた自動回復の方が役立った。むしろアレは回復ってより再生じゃねーかってレベルだし。具体的に言うと、頭ブン殴られて骨がこんにちはな状況でも金色の燐光飛ばしてシュワシュワ音立てて治った。おかげで毛根もしっかりしてらっしゃる。四肢切断レべルは乱装天傀の応用で切断面くっ付けて魔法かければ多分大丈夫なはず。文字通りの欠損だったら? 流石にそこまで検証してないし、出来ればしたくねーわ。頭蓋骨がこんにちはしてもハゲてないから、ひょっとしたら、ウルキオラ並の超再生も夢じゃないかも知れんけど、そうじゃなかったら「嫌な事件だったね」ってなるじゃん。そんな冒険したくねーです。
で、魔法に直結する【スキル】の一つ【詠唱破棄】なんだけど、マジで助かった。一応短文詠唱に分類されるとはいえ、魔法名だけで回復してくれるのは本当に有難かった。袋叩きになりながら「デア・ヴァナディース! デア・ヴァナディース!」してんのはなかなかシュールだったけど、いいんだよ生きてんだから。通常の完全詠唱は未だ唱えてねーなそう言えば……まぁいずれ機会があればいいな? 無さそうだけど。
次いで滅却師の戦いの核である【精隷】に関しては、最早説明不要なレベルで大活躍してくれたので言及するまでもないかなと。敢えて言うなら【九魔姫】さんの持つ【妖精王印】の劣化版って所かな? 本家と違ってアビリティ強化や同種族の魔法効果アップとかないし。純粋に魔力回収による精神力回復がメインというか。魔力操作? そんな暇無かったよ。
【血装】と【精魔兵装】に関しては静血装が大活躍……だったけど、実感は出来なかったつーか殴られ過ぎ刺され過ぎで、それどころじゃなかったっていうか。攻撃時発動の動血装には回す余裕も無かった。そもそも飛廉脚で距離置いて弓ブッパして追っつかれて……の永久ループだったから殴る蹴るしてないんよな。精魔兵装は今世で一番慣れている弓を使ってるけど、原作通り盾に出来ない事も無い感じ。あんましたくないが。原作といえば「飛び道具ならナンデモアリだよな滅却師」って認識があるので、慣れて来たら別の飛び道具……シャズ・ドミノの苦無的なのとか、ベーでゲーでノインな人のガトリングとか……いやガトリングは兵装じゃなくて文明の利器か? あの人(?)機械人形みたいなもんだし。【精隷】と組み合わせれば疑似ファンネルみたいに武器だけ出して一人包囲網とか出来そうかなぁ? 試す機会が今んとこ無さそうなのがなぁ……。使いやすくなったのは確かだけど、じゃあ「何処まで出来るのか」に関してはまだまだ手探りなんだよなー、結局。まぁ『洗礼』初日が終わったばっかだし、焦るこたーないか?
「どうした新入り? そんなに続きがしたいならこの後付き合ってやっても」
「是非ともお願いします」
喰い気味手のひらドリルで我ながら草である。豊穣の女神の眷族だからこれくらい当たり前。そもそも先輩から差し伸べられた手を振り払う奴いる?
い ね ぇ よ な ぁ ! ?
と、いう訳で目の前にある肉やらスープやらを掻き込み、〆の蜂蜜酒を飲み干せば準備万端である。テーブルに叩きつけられた杯の奏でた音が静寂に包まれた特大広間に木霊する。
……いやなんなんこっち見んな。そんな化け物見るみたいな……。
「では早速行きましょうさぁ行きましょうはよ行きましょう試したい事あるし実験台もとい練習相手になって頂けるなんて恐悦至極の極みですよいやホントマジで一日袋叩きで正直出来ない事多過ぎてストレスあったしタイマンなら色々発散じゃなかった試せそうなんでメチャクチャ有難いです感謝感激雨あられって奴ですよ先輩はゴリゴリの前衛ですか? それとも後衛? はたまたなんでもござれの中衛でいらっしゃる? 大丈夫大丈夫ですよいずれであっても試したい事はクソ程あるので今日も明日も明後日も是非とも毎日お願いしたいぐらいですどうしたんですか? 食事の手が止まっていますし信じられないモノが目の前にいるみたいに目ェカっ開いて? 先輩自身が仰ってた新入りじゃないですか? どうしちゃったんですかいやだなぁもうちょっっっっっっっっっっっとばかし殺意という名のヤル気に満ち溢れてるだけじゃないですか何の問題もないでしょーにほらはよ食事済ませて続きと行きましょうよほらハリー! ハリー!」
言ってる間に興奮してきたのもあって身振り手振りも激しく、パイセンの熱い手ほどきを求める俺の姿は後に女神の付き人をして『完全に常軌を逸していた』と言わしめる程だったとか。完ッ全に瞳孔全開だったらしい。言われても知らんが。
結局この日は壊れた人形みたいに首を振り続けるパイセンを引きずり、そのまま夜を徹して俺のストレス解消が行われたのだった。