矢作 芳人 様
2025 年 4 月 5 日の DWC デイに検体所で起きた事象への貴殿の懸念を共有いただきありが
とうございます。ERA はこのようなフィードバックを真摯に受け止め、今回の件について
も監視カメラ(メイダン競馬場・検体馬房2番)の映像を詳細に調べ上げました。
フォーエバーヤング号が検体所の暗室に約 40 分入れられていたという貴殿の主張は受け入
れた上で、我々の方で調査をした結果(有給裁決委員マナヴ・ヴァヤ氏および私が実施)、
以下のようなタイムラインであったことをご報告します。
20:04:フォーエバーヤング、DRC グルームに誘導され検体所に入室。ERA 検体スタッフ
も引率。
20:05:厩務員(渋田氏)が馬をコントロールする。フォーエバーヤングは検体馬房の中を
落ち着いて歩く。
20:09、20:16、20:21:厩舎スタッフ(荒木氏)がドアを開けて厩務員(渋田氏)と話す。
20:12:厩務員(渋田氏)が明らかに苛立っている。ERA 検体スタッフは冷静な態度で状況
を緩和させようとしている。
20:26:しばらく議論が続く。厩務員(渋田氏)は馬の無口を外すと、フォーエバーヤング
は明らかにリラックスした様子。
20:30:フォーエバーヤングは厩務員の誘導によって検体所から退室。
追記しておきたいのは、検体馬房内はエアコンが付いていて、 明かりもあり、馬は全体で 26
分間滞在していました(訴えられていた 40 分ではなかったです)。フォーエバーヤングは
レースの 1 時間前には開放されていて、回復および準備をするには十分な時間があったと
思われます。
レース前尿検査は、 ERA が通常実施しているアンチドーピング対策の一環です。 2024-25 年
シーズンには、64 開催日で 429 頭からレース前の尿検体が採取されました。今年の DWC
デイは、フォーエバーヤングを含め 9 頭がレース前尿採取の対象として選ばれました。そ
のうち、7 頭からは検体は採取され、もう 1 頭は検体所に 35 分間滞在し出走したレースを
優勝しました。
我々のプロトコルでは、レース前検体が採れなかった馬は、レース後の検体採取が義務化さ
れています。ドバイワールドカップを含めた全ての重賞競走では、最低でも上位 3 着まで
の入着馬からレース後検体を採取します。 1 時間経ってもレース後の尿検体が採れない場合、
代わりに血液を採取します。フォーエバーヤングはレース後の尿は採取できたため、 我々の
要件を満たしてくれました。
貴殿が訴える「コミュニケーション」の問題は我々も認識します。不運にも、通訳をできる
スタッフが当日の現場に立ち会えていなかったことによって混乱を招いてしまったかもし
れません。これに関しては我々としても改善が必要とされる箇所であり、それを改めて指摘
いただいたことは感謝しています。
貴殿の指摘を受けて、我々自身の競馬運営について前向きに見直しています。 レース前検体
自体、引き続き我々のアンチドーピング戦略の中核であり続けることに変わりはありませ
んが、以下を含む見直しを実施しています。
・主要開催日は待機馬房への到着時間を早めるべきか
・レース前検体を採取する場合、最大待機時間を確定・明記すること
・JRA の代表者 (JAIRS も含む) や海外からの遠征関係者には事前に書面または口頭で(レ
ース前検体の)手順を説明すること
今回の検体馬房での監視カメラの映像を確認されたい場合、メールアドレスを教えていた
だければ共有いたします。
私が UAE で規制獣医師として従事してからずっと、日本の調教師および厩舎の皆様に対し
ては最大限の敬意を持っています。日本馬の競馬に向かうまでの準備、馬の取り扱い方はプ
ロ意識が高く、その姿勢には感心しています。直近で貴殿が経験してしまった事態は、我々
が目指している高い基準の手順とは相反してしまったことは大変残念であります。上記に
述べた時間軸での事象は、貴殿からいただいた内容とは少し異なる点はあったにせよ、貴殿
の所見は大変貴重なものですし、我々としましてもこれを機に、全ての遠征関係者のために
コミュニケーションの質とプロトコルを高めていくよう尽力していく次第です。
デビッド・クレイグ
馬福祉責任者
Emirates Racing Authority