1981年、J-POPの風景に“深くて静かな名曲”が生まれた
「44年前の冬、どんなバラードが心に沁みたか覚えてる?」
1981年といえば、音楽では寺尾聰の『ルビーの指環』がロングヒットを記録し、松田聖子や近藤真彦らアイドルが黄金時代を築きつつあった年。そんな華やかな音楽シーンの中に、ひときわ静かで切ない“うた”が生まれた。
それが――浜田省吾『悲しみは雪のように』。
1981年11月21日にリリースされたこの楽曲は、時を超えて多くの人の心に深く染みわたり、1992年にはドラマ主題歌として再注目を浴びる。まさに“時代を越えて育った名曲”として、今も語り継がれている。
愛と痛みをまっすぐに歌う、浜田省吾の真骨頂
『悲しみは雪のように』の歌詞には、派手な言葉や技巧はない。それでも心に刺さるのは、浜田省吾が“誰かを守りたい”という感情を、飾らずに歌っているからだ。
この歌の歌詞に込められた思いは、恋人だけでなく、家族や友人、誰か大切な存在すべてに当てはまる。静かに寄り添いながらも、自分の無力さを痛いほど受け止めている。そのリアルな感情が、聴く者の胸を締めつける。
また、アレンジも抑制が効いており、ピアノとストリングスを中心としたサウンドが、まるで本当に雪が舞い落ちてくるような“音の情景”を描き出している。
ドラマ主題歌として再ブレイク、時代を越えたヒット曲へ
この曲が再び注目されたのは、1992年。フジテレビ系ドラマ『愛という名のもとに』の主題歌として採用され、オンエアのたびにその歌声が心に残ると話題に。結果、再リリース盤がミリオンセラーとなり、浜田省吾最大のヒット曲となった。
10年以上前の楽曲が、まったく新しい世代に再評価されていく現象は珍しくないが、この曲の場合、聴いた人の“人生の時間”に寄り添うように、じっくりと浸透していったのが印象的だった。
なぜ『悲しみは雪のように』は今も色あせないのか?
それは、この楽曲が“感情を抱きしめる歌”だからだ。
悲しみから逃げず、打ち勝とうともせず、ただ静かに降り積もらせる。そんな姿勢は、現代のように「ポジティブでいよう」と励まされ続ける社会において、逆に“悲しんでいいんだ”と教えてくれる、貴重な存在なのかもしれない。
浜田省吾の歌は、誰かの背中を強く押すわけではない。けれど、確かにそっと寄り添い、支えてくれる。それが、時代が変わっても多くの人に愛され続けている理由だろう。
『悲しみは雪のように』――それは、44年前に生まれた“静かな祈りのバラード”。今も変わらず、人生のそばにいてくれる一曲である。
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